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第160話 会議(上)

 僕が座ったのを確認して、宰相様が話し始める。


「それでは、陛下お願いします」

「うむ、皆の者よく集まった。これより会議を始める!」


『ハッ!』


 一同が返事をして会議が始まる、進行は宰相様がするようだ。


「始めるには1人足りないな、連れてこい!」


「ハッ!」


 衛兵が後ろ手に縛られたブラウを連れて来て、入り口から入ってすぐの場所に跪かせる。完全に罪人扱いだな。


 伯爵が罪人扱いなので、会場がざわついている。


「ブラウ伯爵ではないか、何故そのような扱いに? 事と次第によっては黙っていないぞ?」


 バーンシュタイン公爵が周囲を威圧する。


「その男は昨日、上級商店街にて喚き散らしたあげく、下半身丸出しで少年に襲い掛かっていたところを、駆けつけた衛兵に取り押さえられた者なんだが、バーンシュタイン公爵の派閥の者だったのか?」


「……ふむ、我が派閥にそのような下品な者はいない、どうやら人違いらしいな」


 バーンシュタイン公爵の言葉に、口を塞がれているブラウは必至で何かを叫んでいる。


「ならば問題あるまい、会議に戻る。最初はイグルス帝国のことだ! 既に知っている者もいるとは思うが、イグルス帝国からの進軍が確認され開戦に至った。帝国軍は将軍5人、兵士2万5千を進軍させており、7年ぶりの大規模な戦いになった」


 戦争の事を知らない貴族もいたようで、会場が騒つく。公爵クラスでも、2万人以上の進軍だったとは知らなかったみたいで、驚いている人もいる。


「騒ぐな! イグルス帝国の侵攻については、既にヴァルハーレン大公家の活躍により勝利しておる。よって、まず論功行賞から始める」


 いきなり論功行賞から始まったので、みんな驚きを隠せないようだ。


「今回のイグルス帝国の侵攻だが、ブラウ伯爵領によって違法に建てられた要塞に、2将軍と5千の兵士が確認されている。つまり、トゥールスへの侵攻は2方向からの攻撃だったということを頭に入れておいて欲しい。まずはエドワード・ヴァルハーレン!」


「ハッ!」


 返事をして立ち上がると、他の貴族からの視線が痛い。功績は陛下が読み上げるようだ。


「エドワード・ヴァルハーレンの功績はブラウ伯爵領要塞にいた、ドミニク・キンディノス、ベニート・ストラーナ両将軍の討伐。並びに兵士5千人の殲滅。要塞を破壊による無力化した功績があげられる。よって伯爵に叙する!」


「ありがたき幸せ!」


 一気にざわつきが大きくなる中、宰相様が続ける。


「論功行賞中である、一々騒ぐな! 続いてハリー・ヴァルハーレン大公」


「ハッ!」


「ハリー・ヴァルハーレン大公の功績はイグルス帝国進軍の総大将エヴァルド・ブルローネの討伐並びに、ボニート・レマルゴス、ガヴィーノ・コーレインの合計3将軍の討伐。兵士2万人の殲滅、シュトライト城の破壊による無力化があげられる。今回の功績は嫡男のエドワードに付ける事で了解を得ている。エドワード伯爵への叙爵は、その功績も加わっているものと考えよ。また、2人にはそれぞれ金貨3千枚を褒賞金として与える」


 陛下がそう言った瞬間、会場のざわめきが大きくなり。一人の貴族が手を挙げた。

 

「シュタイン伯爵、どうした?」


「陛下、確かにたくさんの功績はありますが、いきなり伯爵はどうかと。子爵ぐらいが妥当ではないのでしょうか?」


「なるほど、シュタイン伯爵は、いきなり自分と同じ爵位に叙爵されることが不服であるか?」


「いえ、そういう訳ではございませんが、皆様の疑問を代弁しただけです」


「ほう! 皆もそう思っているのか? そう思っている者は挙手せよ。次のイグルス帝国との戦いで先陣を任せようではないか! 5将軍の討伐、兵士2万5千人の殲滅ならびに敵、城や要塞の無力化以上の事ができるのであろう?」


 さっきまでのざわめきはどこかにいって、静寂が会場を包み込む。


「どうした? 皆、シュタイン伯爵と同じで不服があるのではなかったのか? シュタイン伯爵よ、話が違うようだぞ。では、シュタイン伯爵がイグルス帝国戦の先陣を切ると言うことでよいな? その際に今挙げた功績を上回ることができれば、エドワードの叙爵は子爵で止めておくとしよう」


「申し訳ございません!」

「何が申し訳ないのだ?」


 宰相様が追撃する。


「わ、私の軍単独では先程の功績を上回ることは難しいかと……」


「これは異な事を、エドワードよりも功績を挙げられるから異を唱えたのではないのか? そのような者がエドワードと同じ伯爵であることが疑問となってくるが、シュタイン伯爵はどう考える?」


「そっ、それはっ……」


 シュタイン伯爵は黙ってしまう。



「宰相様も人が悪い、あまりシュタイン伯爵を虐めてくれないでもらえるかな?」


「確かシュタイン伯爵は、バーンシュタイン公爵の推薦で伯爵になったのであったな?」


「いかにも、後で儂が言い聞かせておくから、ここは儂の顔を立ててくれんかの?」


「まあ、良いでしょう。以後、シュタイン伯爵は陛下の采配に口を出さないように」


「も、申し訳ございません……」


 今回の会議で、シュタイン伯爵が口を出すことは一切ないだろうな。


「それでは邪魔が入りましたが、イグルス帝国戦の続きをします。残念な事に処罰を必要とする者が出てしまいましたので」


 処罰の言葉に、また静寂が会場を会場を包む。


「皆も気づいているように今回、イグルス帝国は2将軍と5千の兵をブラウ伯爵領に建てられた要塞から出撃している。しかも、トゥールスの町までの道を整備するため、予め森を切り開いている用意の良さだ」


 宰相様の言葉に、みんながブラウの方を見た。


「これだけで、今回のイグルス帝国侵攻で誰が手引きしたのかは一目瞭然だと思うが、この期に及んで言い逃れしようとしているようだ、まずは確定している罪を上げることにしよう」


 ・無断で要塞を作った罪

 ・イグルス帝国に侵攻されているにも拘わらず、報告をしなかった罪

 ・要塞をイグルス帝国に乗っ取られた罪

 ・乗っ取られたにも拘わらず、報告をしなかった罪

 

「まず要塞絡みだけでも4つの罪状が出てきます」


 ここまで言うと、ブラウはモゴモゴと何かを叫んでいるが、口を塞がれているので分からない。


「それともう1つ、今回ブラウ伯爵領の要塞にいた者たちは、ヴァルハーレン領内で罪のない一般人を攫い、人質として使うといった行為を実行している。それを踏まえることになるが、ヴァルハーレン領近くの王領内にて盗賊の砦が発見されている」


 盗賊の砦と言う言葉でブラウが固まった。


「ほう、ブラウ伯爵は何か知っているようだな。盗賊の首領はヴォルガーという人物で、ヴォルガーは事もあろうにブラウ伯爵との繋がりを白状したのだ、証拠を求めたところ出て来たのがこの書状で、書状にはヴァルハーレン領で人を攫うようにヴォルガーに指示を出している。伯爵印付きでな」


 なるほど、父様はこの時のために、盗賊の砦で見つけた書状を宰相様に渡していたのか。


「さてブラウ伯爵、なにか言い訳はあるかな?」


 ブラウの口を塞いでた布が外される。


「そんな書状ぐらい、いくらでも偽装できるではないか!」


「本当にそう思っているのか?」

「当たり前だ!」


 ここで陛下が話始めた。


「ブラウ伯爵よ、バレなければ何をしてもよいと思う、お前の考え方は貴族としては美しくないな。ブラウ伯爵のように、何も考えず悪行にポンポン印を押している馬鹿どもにいい機会だから教えてやろう。この情報は本来国王だけが知りえる情報だ。お前たちに渡している階級印だが、あれは魔道具になっていてな、押した印が本物か分かる仕組みになっているのだ」


 会場がざわめく。


「口で言うより見せた方が早いと思って用意させたぞ。持ってこい!」


「ハッ!」


 陛下の近衛兵らしき人が印を運んできた。


「これはかつていた、トゥールス子爵の印だが、まずこれで押印して、この儂のもっている魔道具で照らすと」


『――!』


 押印したものを魔道具で照らすと青色に光った……ブラックライトみたいだな。


 このことは父様だけでなく、宰相様も知らなかったみたいで、みんな一様に驚いていたのだった。

 

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