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第15話 商人ギルド(上)

 カトリーヌさんのお店を後にした僕は、メグ姉と一緒に商人ギルドへ向かっている。最初、商人ギルドには1人で向かおうとしたら、メグ姉に『冒険者ギルドのときと同じことになるかもしれないでしょ』と言われてニコニコついて来られると、何も言えなかった。


 しばらくすると、2階建ての建物が見えてくる。


 木造の冒険者ギルドとは違って、しっかりとした石造りの建物だった。


 扉を開けて中に入ると、カウンターが5つ並んでいて、奥で仕事をしている人たちが見える。日本の銀行のようなイメージだ。


 僕がカウンターの1つに座ると、話しかけられる。

 


「商人ギルドのビアンカがご用件を承ります。可愛いお客様」


 ビアンカと名乗る女性は、年齢は20歳ぐらいで髪の色はブロンド。片側だけ耳にかけたワンサイドショートボブが特徴的で。お胸様のサイズは控えめで、仕事ができそうな美人さんだった。


 ビアンカさんは僕の対応を丁寧にしながらも、僕の後ろに視線を移動させた瞬間。


「ひょっ、氷華⁉︎」



 そう呟いて一瞬ビックリした顔をする。


 何か僕の後ろにいるのだろうかと思って振り返ってみたが、そこにはニコニコとしたメグ姉しかいなかった。


 首をかしげながら、ビアンカさんの方に顔を戻し、話しかける。

 

「僕の名前はエディと言います。商人ギルドに登録したいと思っているので、手続きをお願いします」


「えっと、エディ君が登録するのかな?」


 僕が商人ギルドに登録するのが予想外だったのか、ビアンカさんがポカンとした顔をしている。意外と可愛いな。



「はい、そうです」


 僕が答えると、ビアンカさんの表情は真面目なものになり。


「登録料として金貨1枚、それに筆記試験があるのだけど大丈夫かしら?」


「はい、大丈夫です」


「それじゃあ、別室に行きましょうか。う、後ろの方は……」


「シスターのマルグリットよ、冒険者ギルドでは不正が横行してるみたいだから、商人ギルドももしかしたらってね、つまりあなたの監視よ」


「メ、メグ姉!」


「エディは黙ってなさい。これは必要なことだから」



 いつの間にかメグ姉のニコニコモードが解けている! 鬼神モードではないのだが、ピリピリした雰囲気を纏っている。


「そうですか、冒険者ギルドで不正が……分かりました、シスター・マルグリットも一緒にどうぞこちらへ」


 そう言うと、ビアンカさんが歩き出す。僕たちも後に続く。


 たくさんの扉が並んだ廊下まで来ると、その中の1つの部屋に入る。そこは小さめの部屋で、テーブルと椅子が向かい合わせに2つずつ並んでいる。商談スペースなんだろと思う。

 

「エディ君はそっちに座って、私とシスター・マルグリットはこっちね」



 僕たちが黙って座ると、ビアンカさんが説明を開始する。


 

「それでは試験の説明を始めるわね。試験時間は1時間、始めると途中退席は認められないから注意してね。終わった時点で私が答え合わせをします。1時間しっかり考えて回答しても良いし、早く終わるなら早く出してもいいわ。80点以上で合格よ。不合格の場合、半年は再テストできないからね。説明は以上だけど、何か質問はあるかしら?」


「丁寧にありがとうございます。それでは1つ、試験の合格率ってどのくらいなのか聞いても大丈夫ですか?」


「問題ないわ、そうね大体50パーセントぐらいかしらね。でも真面目に商人を目指している人は通常、どこかの商会に弟子入りして、商売の勉強もしながら長年にわたり勉強しているので大抵の人は合格しているわ。この試験の主な役割は犯罪目的の登録を減らすためよ。全く勉強していないチンピラ共が解けないように、難しく作ってあるんだけど、多分エディ君ぐらいの年齢でも少し難しいと思うわ」


 意外と難しいようだ。


「ありがとうございます。分かりました。あとは特にありません」


「そう? 問題用紙を表にしたら、時間を測り出すから、いつでもいいわよ」


 僕はドキドキしながら深呼吸をすると、問題用紙を表にして問題を見る。それと同時に、ビアンカさんが砂時計を裏返し、時間を計り始める。


「……」

 

 問題用紙を見た僕は驚いた。なんだこの簡単な問題は! 異世界転生あるあるだな。そもそも一般人の識字率が低いからこんなもんなんだろうけど、簡単な四則演算に文章問題、どれも小学生レベルだから全部暗算でいけるな。


 問題の簡単さに驚いているとビアンカさんと、メグ姉が何やらボソボソと呟いているが、気にしないでおこう。


ふふ(ボソッ)っ、あまりにもの難しさに固まってるわね。勉強していなければ普通の大人だって解けないんですから、1時間でいくつ解けるのか楽しみだわ」


考え(ボソッ)るエディも可愛いわ、銅像にしたいぐらいね、『考えるエディ』ってタイトルにして飾ったらエディに怒られるかしら? 隣の女を監視しないといけないのに、どうしてもエディちゃんに目が行ってしまう。これがお姉ちゃんの性なのね」


 あまりにもの簡単さにビックリしたが、いつまでも固まっているわけにはいかないので問題を解き始める。


なに(ボソッ)この子いきなり答えを書いてる! 難しくて諦めたのかしら? 指ぐらい使ってもお姉さん怒らないわよ?」


問題(ボソッ)をスラスラ解くエディもいいわね。かっこよくてステキよ」


 向けられる視線に多少の違和感を感じながらも、問題を解き進め10分ぐらいで回答を全て埋める。もう一度間違えがないか確認して15分経った。


 どうしよう、終わってしまった。見直しもしたし、もうすることがない。チラッと見たらビアンカさんは血走った目をしてるしメグ姉は……見なかったことにしよう。もうこの視線に耐えられない。早く終わりたいからもう出しちゃえ。


 決心した僕はペンを置く。

 

「終わりました」

「はぁ?」


 ビアンカさんは、コイツ何言ってるんだって顔で僕を見ている。受付してた時の営業スマイルはどこいったの⁉


「いや、だから回答が全て終わったので、答え合わせお願いします!」


「何言ってるの? こんなに早く終わるわけないじゃない! 投げやりになって適当に埋めたのかしら?」


「いえ、しっかり見直しもしたので大丈夫だと思いますよ」


「全く最近の子は、まぁいいわ。答え合わせするから渡しなさい」


 僕は解答用紙を渡す。ビアンカさんはブツブツ呟きながら、答え合わせを始める。


受け(ブツブツ)答えがしっかりしてたから期待したのに残念ね……あれっ、正解してるわね、これもこれも、何で⁉︎」



 答え合わせをしてたビアンカさんの目が点になって固まっている。体もプルプルと小刻みに震えているし、どうしたのだろうか。


 動かないビアンカさんに痺れを切らしたメグ姉がわざとらしく咳き込むと。


「ご、ごめんなさい。ちょっとビックリして。エディ君満点よ! 時間も最速じゃないかしら!」


 ビアンカさんが、興奮気味で言い、メグ姉が満足気に頷く。


「商人ギルドに入れるってことで良いのでしょうか?」


「モチロンよ! 歓迎するわ」

「ありがとうございます」


「それじゃあ、まず登録手続きだけど、屋号はもう決まってるかしら?」


「屋号ですか?」


「そうよ、つまり商会名のことね。自分の名前にする人もいるし、違う名前にする人もいます。ギルド証に記載するので、既に決まっているのだったら、ギルド証の発行手続きを先にしておけばスムーズに進むのよ。どうかしら?」


 商会名か……全然考えてなかったな。エディ商会はなんか嫌だな、うーんどうしようかな。糸は英語でリードかありきたりだな。何かないかな……そうだ!


「モイライ商会でお願いします」


「モイライ商会? 変わった名前だけど分かったわ。先に手続きをしてくるから少し待っていてね」

 

 そう言ってビアンカさんは部屋を出ていった。


「エディ、まずはおめでとう。でも商会名は大丈夫なの?」


「ありがとう。メグ姉が調べて分からなかった名前だから、大丈夫なんじゃないかな? 逆に知ってる人が出てきたら教えて欲しいぐらいだし。加護だから悪い意味じゃないと思うんだよね」


「確かにそうね。エディの能力かステータスに関係してるのだったら、良い加護に決まってるわね」

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