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第135話 激戦! ミラブール攻防戦

 キングタウルスがいたと思われる洞窟を見つけてから3日経った。


 その間、日中は森の探索をし、夜は警戒を続けていたのだが、特に何も起こることはなく、完全に森は正常化されたと判断され帰還することとなった。



「ヴァルハーレン大公様、今回は我がカラーヤ侯爵領のために駆けつけていただいて本当に助かりました」


「スタンピードを未然に防げて本当に良かったですね。父アルバンも戦友ベルベルト殿の無事を喜ぶでしょう」


「儂もいずれルイドに侯爵の座を譲るつもりなので、その時は酒でも酌み交わそうとお伝え願えますかな?」


「分かりました。それでは、我々は出発しますので、次は会議の時に」


 父様が馬車に乗り込むと、アーダム隊長が号令をかける。


「出発!」

『ハッ!』


 馬車が動き始め、サルトゥスの町を後にした。カラーヤ侯爵たちは、あと2日ほど滞在した後、ヒューレーに帰還する予定とのことだった。


「サルトゥスの町に結構長く滞在したね」


「私は早くローダウェイクに帰りたいです」


 アスィミはホームシックと言うよりは、お風呂シックだ。結局、隙を見つけてはミラブールで洗わされたのだが、もうそれだけでは満足できないらしい。


「アスィミ、まだローダウェイクには帰らないわよ」


「えっ! どうしてですか?」


「元々行くときに寄る予定だったアルジャン子爵領とジェンカー伯爵領を帰りに寄るように変更したのを忘れたのか?」


「そうでした! すっかり綺麗さっぱり忘れてました」


 アスィミはガックリ肩を落とす。


「お風呂好きのエドワード様は早くローダウェイクに帰ってお風呂に入りたくないんですか?」


「ほぼ毎日、ミラブールで洗ってるから大丈夫だよ」


 精神的には自分とヴァイスだけを洗う方が気楽だ。


「え! いつの間に! 私なんて隙を見つけてようやく洗ってもらえるのに!」


 アスィミが言うと、メグ姉とジョセフィーナは『へー、そうなんだー』って顔をしている。


「マルグリットさんやジョセフィーナさんもそうじゃないんですか!?」


 メグ姉とジョセフィーナは顔を逸らす。


 そう、メグ姉とジョセフィーナ、言い換えればアスィミ以外の女性陣は上手く時間を見つけて、ほぼ毎日洗ってもらいに来るのだ。母様などは母親特権を使うので時間など自由自在なんだけどね。

 それにしても、アスィミは黙っていれば、澄んだ青玉の瞳が綺麗な銀髪美女なのに実に残念だ。第一印象はシベリアンハスキーみたいなクールな印象だったのに、今では狼というより猫じゃねえのとまで言いたくなるぐらい残念なのだ。


「ガーン! もしかして私だけ数日に1回なんですか!? エドワード様、酷いです!」


「酷いと言われても、アスィミに頼まれた時はしっかりミラブールで洗ってあげてると思うんだけど?」


「そうなんですけど、そうじゃないんです! 見てください、私の尻尾を!」


 アスィミの尻尾は髪の毛の色と同じ白銀の色で、キラキラフワフワしている。一度触ったことがあるのだが、変な声を出したのでそれ以来触っていない。


「いつも通りだと思うんだけど?」


 僕の感想に、メグ姉とジョセフィーナも頷く。


「どこがですか! 少しベタついているでしょう? エドワード様に洗ってもらった後はもっとフワフワしているのです!?」


「そこまで真剣にアスィミの尻尾を見たことないから、違いがわからないや」


「それもそうですね、私の立ち位置もエドワード様の後ろですし、そんなに見せる機会がありませんね」


 よく分からないが、納得したようだ。


「分かったアスィミ。尻尾を見せて!」


「えっ?」


 座席で後ろ向きにアスィミを座らせて、尻尾を掴む。


「アンッ!」


 また変な声を出す。


「ミラブール」


 尻尾だけをミラブールで包み込み洗い、終わると外に出して蒸発させる。

 

「ドライヤー」


 今回の旅の最中、素早く乾かすために作った新魔法、その名も『ドライヤー』。なんのひねりもないネーミングだが、ヴァイスの毛をツヤツヤに乾かすため作ったこの魔法は、無駄に高性能に作られている。


 まず、毛がドライヤーで熱くならないよう、常に60度をキープする自動温度調整機能付きだ。更にマイナスイオン、つまり水分子をまとう微粒子イオンを放出することにより、毛が潤う機能もつけた。


 この魔法のおかげで、ヴァイスの毛はスーパーモフモフ具合をキープしている。ちなみにこの魔法の存在を知らないのはアスィミとメリッサさんだけだ。他の女性陣はヴァイスの毛並みの変化に鋭かった……僕にはイオンの有り無しは分からなかったが、女性陣は気が付いたのだ! まあ、このことからイオン機能が正常に動いていることが分かったからいいのだが。


 アスィミの尻尾を乾かすと、今度はいつもヴァイスをブラッシングしているブラシを取り出す。尻尾をブラッシングしてあげると、更に変な声をあげるが気にしない。ブラッシングすることにより、アスィミの尻尾は最高級の毛並みとなる。


 初めてブラッシングしたせいか、ブラシにアスィミの尻尾の毛が絡まっているので、取り除くと。


『特殊素材を確認。登録しますか?』


【特殊素材】アスィミの毛

 登録しますか? ・はい ・いいえ


 何! アスィミの毛が特殊素材だと! どうしようか……ヴァイスの毛の場合、登録名は『フェンリルの毛』だ。何に使えるのかは分からないが、ステータス画面に表示されているだけでプレミアム感満載だ。


 そのステータス画面に『アスィミの毛』と表示されたのを想像してみる。プレミアム感というよりは背徳感満載になってしまうな。せめて『狼人族の毛』とかアスィミは狼人族でも銀狼種と言う希少種らしいのだから『銀狼の毛』とかだったら登録したのだけど、さすがに『アスィミの毛』は無いな。ただの変態にしか見えない。


 必要になったら改めてもらえばいいので、<いいえ>と念じておく。


「はい、アスィミ。綺麗になったよ!」


「えっ? ありがとうございます。今まで見たことないくらい尻尾がツヤツヤです! ありがとうございます」


「どういたしまして」

「って、ちがーう!!」


 何か違ったらしい。しっかり右手の入った良いツッコミだった。


「尻尾を見てとは言いましたが、尻尾だけを洗ってどうするのですか!?」


 アスィミはおもしろいな。ちなみに初代ツッコミ担当のヴァイスは温かスライムの上で寝ている。


「全て洗ってください! 全てです! こうなったら馬車の中で洗ってもらいますから!」


 服を脱ぎ出そうとするアスィミ。随分強硬手段に出たな。


「こらっ! アスィミこんな所で脱ぐな! それ以上脱いだら、奥方様に報告してエドワード様の担当を外してもらうわよ!」


 あっ、ジョセフィーナの説得(脅し)で止まった。

 

「私の綺麗好きを知っていて、自分だけちゃっかり洗ってもらうなんて、ジョセフィーナさん意地悪ですっ!」


「そう言われても、アスィミが風呂好きだと知ったのはつい最近のことだからな。ローダウェイクで風呂の中まで護衛するように言った時の嫌そうな顔の方が印象的よ?」


「ああ言えばこう言う。いつからジョセフィーナさんは口ばっかり達者になったのですか?」


「どこが口ばっかりなのよ!?」


「ちょっと想像してみてください。エドワード様のお傍に控えるメイドが汚れているのですよ!」


「むっ! それはあってはならない事だわ……」


「デスヨネー! だったら、今ここにいるエドワード様専属メイドは非常に汚れています! どう思いますか?」


 口ばっかりが達者なのはアスィミの方だな。


「それはまずい。エドワード様! ヒューレーに到着しましたら。汚いアスィミの洗浄をお願い致します!」


「そうです! 汚い私をミラブールで洗ってください!」


「分かったよ……」


 アスィミよ、なりふり構わないのはいいが『汚いアスィミ』と言われてるのはいいのか? と言うか自分で言ってるし!


 どうやら、ミラブールではアスィミの心までは洗浄できないようだ。

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