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第134話 早朝訓練

 昨日はあれだけ防衛戦前に寝たのに、まだ寝ることができた自分にビックリだ。母様の言う通り、体の疲れが自分で分かってないのかもしれない。


 顔を洗い、屋敷の外に出てみると、父様とマルシュ君が木剣で打ち合いしていた。


 マルシュ君は少し離れためを作ると、一気に加速して上段から振り下ろす。


「ハッ!」


 父様はその攻撃を躱すことなく木剣で受け止めると、マルシュ君は自らの攻撃の反動で弾き飛ばされ、転がってしまう。


「そこまで!」


 ルイドさんによって試合の終了が告げられる。


「最後の一撃はフォーントゥナーの時に見せた攻撃だね。威力はあるけど、今のように弾き飛ばされるとそのまま反動が自分に返ってくる。さっきは狙わなかったけど、ためが大きいのも弱点だね。相手が人間で攻撃を待ってくれる時や、誰か時間稼ぎしてくれる人がいるなら良いけど、1人で魔物と戦う時は使っちゃダメだよ」


「ご指導ありがとうございます」


 マルシュ君は全く歯が立たなかったのか、悔しそうだ。


「マルシュ君は人と、それも1対1での訓練が多いのかな? 魔物はためを作る隙を見逃さないから注意してね。あと、渾身の一撃を弾き飛ばされたあと続かないのも良くないな」


「ギアラタウルスにも同じように弾き飛ばされました。兄上、不甲斐なくて申し訳ございません」


「謝る必要はないよ。次に活かせるチャンスがあることを喜ぶんだ。マルシュは運が良いのだから」


「僕がですか?」


「気づいてないのかい? まず本来ならギアラタウルスに殺されるか、飛ばされた先で他の魔物に殺されるか潰されていたはずだ。助かっただけでなく、その次の日にはソフィア様に怪我を治していただけたのだ。更に言えば大公殿が予定より早く到着してくれたおかげでサルトゥスの町は持ち堪えられた。どれひとつ抜けててもマルシュは死んでいた可能性が高い」


「――!」


「気がついたようだね。きっとマルシュは将来、俺なんかより大きなことを成し遂げると思うんだ。今回反省すべき点は明らかなんだ。次に向けて精進せよ」


「分かりました! 大公様、兄上、訓練にお付き合いいただき、ありがとうございます!」


付け(ボソッ)加えると、エドワード殿のパーティーに参加してからのマルシュの成長スピードと運の良さには目を見張るものがある。まるで見えない何かに……」



「エドワード。起きたんだね、おはよう」

「父様おはようございます。皆さんもおはようございます」

「エドワード様、おはよう」


「エドワード様、おはようございます! みっともない姿をお見せして申し訳ございません」


「全然みっともなくなかったよ。父様相手に退かず最後まで攻め抜いたのは良かったと思うよ」


「ありがとうございます!」


「エドワードも朝の運動にどうだい?」



 父様と手合わせか……最近していないな、昨日ヴァイスに指摘されたせいじゃないけど、僕ももっと成長しないといけないな。



「それではお願いします。連接剣を使ってもいいでしょうか?」


「もちろんそのつもりだよ。僕は刃を潰した剣でやらせてもらうね。それじゃあ、皆さんはもう少し離れてもらった方が安全かな?」


 父様に言われてみんなが離れるのを確認して、連接剣を出して構える。父様は剣を右手でダラリと下向きに持っている。


「では、この中では見慣れている私が審判をしましょう」


 アーダム隊長が審判をしてくれるようだ。


「では、始めっ!」


 開始と同時に、父様の左側へ回り込むように走り。連接剣の根本40センチは剣のままにして先を5つ飛ばし、背中を狙う。


 父様は背中を狙った剣先を剣で弾くので、その瞬間を根本の剣で狙う。


 父様は弾いた剣を返し、そのまま僕の剣を受けるので、今度は根本をバラバラにして、父様の剣を絡めようとする。


 しかし父様は連接剣で絡めとられる前に剣を引いて、素早くバックステップで躱す。


「ふぅ、危ない。今のはなかなか良かったよ」

「やはり簡単には当たりませんね」


 次は連接剣を50個分伸ばし、父様の足元から渦を描くように登り、逃げ道を塞ぎ背中を狙うと同時に渦を締め上げる。

 

 今度こそと思ったが、父様は剣先を避けるように助走なしで前方転回して、渦からも逃れた。体操選手もビックリだな。


「今のは行けたと思ったんですが、さすが父様です」

「今のはちょっとドキッとしたよ」


 ちょっとだけなのか? 背中を狙ったのが失敗だったな。頭上から下に向けて狙い、逃げ道を塞がないと。

 

「ストーップ! ハリー、エドワード2人ともやり過ぎ。みんなドン引きよ!」


 母様に止められてしまった。


「エドワード、最後のは凄く良かったよ」


「それでも躱されてしまいました。次は背中ではなく上から狙います」


「それをされるとさすがに魔力で弾き飛ばさないとダメかな」


「2人とも、そこまでよ。朝食の準備ができたみたいだから行くわよ」



 母様に促されて、朝食へ向かうことにする。



「……アーダム殿、ハリー様とエドワード様はいつもあのような激しい試合を?」


「そうですね、いつもはもう少しエドワード様に遠慮のようなものが感じられましたが、今日の試合に遠慮は一切感じられませんでしたな。エドワード様も成長されました」


「成長という言葉で片付けてよいのか分からぬが、俺にはアレを躱すことはできんな」


「わっはっは、最後アレは確かにハリー様かアルバン様でないと無理ですな! いやクロエ様も大丈夫か」


「兄上、これからはもっと厳しく稽古をつけていただけますか?」


「そうだな、マルシュにはまだ魔物狩りは早いと言っていた俺が間違っていた。これからは稽古だけでなく魔物狩りも積極的にさせよう。もっと早くさせていればマルシュが怪我をすることはなかったかもしれない。すまなかった」


「いえ、兄上が俺のことを大切に思っていてくれることは分かっておりましたので謝らないでください」


 カラーヤ侯爵家は魔物の脅威さえ去れば安泰そうだ。朝食を食べた後、森に脅威がないか探索することになる。


 僕は昨晩ヴァイスがキングタウルスを倒した付近を捜索することを任せられた。メンバーはメグ姉、ジョセフィーナ、アスィミだ。キングタウルスを倒したヴァイスとウルスもいるので少ないメンバーでの行動が許された。


「キングタウルスがいたのはどの辺り?」

『まだ先だな』


 町の北側の森を探索するが、今のところ魔物は出ていない。


「全然魔物が出てこないんだね」


「元々いた魔物はキングタウルスに追い出されたのじゃないかしら?」


「マルグリット殿の言う通りかもしれないですね」


『エディ、この辺りだ』


「この辺なの? 確かに血の跡があるね」

「特に変わった所はありませんね」

「日中はどこかに隠れてたりしてたのかな?」


『ふむ、エディよ。向こうから昨日の魔物の臭いがするな』


「よし、行ってみよう」



 ヴァイスが指示した方向へ向かうと、洞窟を見つける。



「うーん、どうしようか? ヴァイス、魔物の臭いとかするかな?」


『色々な臭いが混ざっていて、よくわからんな』

「取りあえず中に入ってみようか?」


 中に入ろうとするが、あまりの臭いに耐え切れず出てくる。


「これは死臭ですね。この臭いだとかなりの数の死体があるのでは?」


「冒険者ギルドで聞いたのだけど、かなりの行方不明者が出てるみたいよ」


「そうなんだ、中に入って確認した方がいいのかな?」


「そうですね……洞窟の位置を侯爵殿に伝えて、侯爵の兵で調べてもらうのはいかがでしょうか? 冒険者の死体があるのであれば、侯爵の手柄になりますので、我々ばかりが活躍するよりはちょうど良いと思われます」


「よし、ジョセフィーナの言う通りにしよう!」


 この後、父様を通じて侯爵軍を派遣してもらい、洞窟を調べたところ、餌にされた冒険者たちの死体がたくさん見つかったそうだ。


 経験のためにと同行していたマルシュ君は盛大に朝食をキラキラさせていたとか……マルシュ君、ごめんね。

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