第131話 Sideエリー嬢(下)※
エドワード様が夕食を作るので、みんなで見学します。
「フォーントゥナーの時もそうでしたが、本当にエドワード様が料理されるんですね」
ノワールの言う通りです。エリーと2歳しか変わらないのに、うちの料理人よりも上手でした。
エドワード様が料理を開始します。ジャガイモや玉ねぎなどを切ったり潰したりしています。
潰すのはエリーでも出来そうですが、耳の長いお姉さんに取られてしまいました。
長耳のお姉さんとエドワード様の色が繋がっている所があります! アレは何でしょうか? あんな光景は初めて見ますね。
繋がっている色を見ている間にエドワード様はお肉を出してフォークで刺したり、何かをすり込んでいきました。
「エディ、潰したわよ」
「ありがとう」
耳の長いお姉さんはエドワード様の事をエディと呼んでいるみたいですね。仲が良さそうで羨ましいです。
どうせノワール以外には分からないのですから、エリーもエディ様と呼んでもいいのでしょうか? ノワールにバレたら恥ずかしいので止めておきましょう。ノワールはすぐ母様に言っちゃうので危険ですからね。
そして、エドワード様は鍋に色々いれて煮込んでいきます。
「メグ姉、これをかき混ぜながら煮込むのお願いしてもいい?」
「いいわよ。任せてね」
なるほど、長耳のお姉さんは料理が出来るのですね……つまりお料理が出来ると、エドワード様のお手伝いが出来るということです!
エリーは凄い事を発見してしまったのかもしれません!
そして、エドワード様は何か細長い物を茹で始めました。何でしょうかアレは初めて見る食べ物ですね。
次にエドワード様はエリーの大嫌いなリッコを取り出しました。アレはダメなやつです、酸っぱくて不味いのです。
長いのにリッコで作ったソースをかけました。サイアクです!
エリーがショックを受けているうちにスープが完成してお肉を焼き始めました。何のお肉何でしょうか? 匂いで唾液が口の中に溢れてきました。
テーブルに並べられた料理はどれも美味しそうな匂いがします。問題はリッコのソースがかかった長いやつです。
リッコをどうするか考えていると、ヴァルハーレン領にオープンするレストランでだす試作品も兼ねているとかでメイドさんも一緒に食べてもいいかと、お母様に許可を取っていました。
なるほど、エドワード様の所のメイドさんは新作を食べられるのですね。可愛いメイド服も着られる上にエドワード様の新作を食べられるなんて、凄く羨ましいです!
「それじゃあ、エドワード料理の説明をお願いね」
「分かりました、スープはジャガイモから作ったポタージュスープ。お肉料理は2種類用意して、1つはオーク肉の味の違いが分かるよう味付けはシンプルな塩コショウにしてあり、もう1つはタレをつけてあります。どちらも左からオーク、オークジェネラル、オークキングとなっていますので味の違いを楽しんでください。もう1つはヴァルハーレン領でこれから売り出していくパスタという料理になります。今回はお肉に合うようにリッコを使ったあっさりとしたソースにしてあります」
「エドワード、ありがとう。それではみんな暖かいうちに食べてください」
エドワード様のお父様の合図でみんな食べ始めます。
「――!」
スープが凄く美味しいです! ジャガイモを潰すと美味しくなるのでしょうか? 潰したジャガイモは口の中に残るので、あまり好きじゃないのですが、これは好きです。
「ジャガイモのスープがどうしてこんなにも美味しいのでしょうか? 作る所を見ていましたが特別な食材を入れているようには見えませんでしたのに」
ノワールも私と同じ意見ですね。次はオークのステーキです。
「これは驚いた。食べ比べるとこんなにも味が違うんだね! オークキングが圧倒的に美味しいのは間違いないが、オークジェネラルとオークにもそれぞれの良さがはっきり分かって食べ比べるのはとてもおもしろいね」
「ええ、私はオークキングを食べるのは初めてだけどこんなにも美味しかったのですね」
「奥様、以前にエドワード様が作られたベーコンを食べたじゃないですか」
「そうだったわね。あれも美味しかったけど柔らかいステーキはまた格別よ」
「美味しすぎます」
エドワード様のお母様と侍女の人たちが会話しています。
この唾液が止まらないお肉はオークキングと言うのですねバッチリ覚えました。今度料理長にお願いしてみましょう。
それにしても、あのバクバク食べているメイドさんは何なんでしょうか? エリーより頭が悪そうですね……。
「私もオークキング、オークジェネラル共に食べるのは初めてなんですが、こんなにも美味しいのですね」
お母様もオークキングのお肉は好きみたい。みんなから幸せの色が溢れていて、この部屋全体がとても幸せです。
しかし、その幸せは脆く崩れ去ろうとしてました。ついに、リッコソースのパスタと言う料理の登場。
「そうだわ、ラシュル。このパスタと言う料理はこのようにフォークで巻いて食べるのよ」
「そうなんですね。初めて食べるので食べ方が分からなかったわ。あなたたちも分かったかしら?」
エドワード様のお母様がパスタの食べ方を教えてくださいます。もう覚悟を決めるしかありません。
私も覚悟を決め、お母様やノワールの真似をしてパスタをフォークに絡め口へ運ぶと。
「――!」
美味しい! リッコのソースがこんなに美味しいなんて! もしかして、エドワード様が調理するとピーマンでも美味しくなるのでしょうか?
「リッコがこんなにも美味しいなんて……」
頭の悪そうなメイドさんもリッコが嫌いなようですね……エリーと一緒というのは何だかモヤっとします。
モフモフの狼さんが、スペアリブとか言うお肉を美味しそうに食べています。そう言えば今日はクマさんがいませんね。
「エドワード様! このお肉のソースが凄く美味しいです!」
「気に入ってもらえたなら良かったです」
ノワールが興奮するのは珍しいですね。確かに……アムアム、このソースは……モグモグ、美味しすぎます。
エドワード様が私を見て目をそらしました! ショックです! そう思っていたらお母様が口の周りを拭いてくれました……エドワード様に見られてしまいましたね……。
「それにしても、どの料理もビックリするぐらい美味しいですわ、パーティーの料理も素晴らしかったですけど、今日の料理も負けていないですね。ソフィア様はいつもこのような美味しい料理を召し上がっていますの?」
「そうね、エドワードがレシピを考えるようになってからは、食事が凄く楽しみになりましたね」
お母様がエドワード様のお母様に質問している。大公様の所ではエドワード様がレシピを考えているのですね。大公家が羨ましいです。
みんな楽しくお食事していると、ノワールがエドワード様に質問しました。
「エドワード様はずっと気になっていたのですが私の容姿でご不快な気分になられたりしないでしょうか?」
ノワールにしては随分と直接的に聞きましたね。心を読めば一発なのに、それをしない所がノワールの良いところです。
でもエドワード様、困ってますね。
「不快な気分ですか? 特にそういう事はありませんがどうしてですか?」
「私のような真っ黒な髪はこの国にはいないので、よく不気味だとか不吉だとか言われることが多いのです……」
「そんな事で言われるのですか? とてもノワール嬢に似合って綺麗な髪だと思いますよ。それに僕の家臣にアシハラ国出身の黒髪の親子もいますので見慣れてるんですよね」
「綺麗な髪ですか! 良かったです……」
ノワールの顔が真っ赤です! これは貴重です! 直ぐに絵師を呼ばなくては! あっ! 私、呼ぶことができないのでした。
ノワールからピンク色が出ています。初めて見る色です! 色はまだまだ研究中なので、どんな感情なのか後から聞かなくてはダメですね。
それにしても、エドワード様の作られた料理はどれも美味しいです。プリンアラモードが無いのは残念ですが、仕方がありません。
エリーがそう思った瞬間。
エドワード様のお母様が一瞬だけ強く輝きを放ちます! 今のはなんでしょう!?
「ねぇエドワード、今日は新しいデザートを作ったりはしないのかしら?」
エドワード様のお母様の口からは新しいデザートという言葉が。エリーは新しくなくても、プリンアラモードで十分なのですが。
エドワード様は少しだけ考えると喋り出します。
「皆さん今からデザートを作ろうと思いますがまだ食べられますか?」
『――!』
何でしょうか! 今一瞬お部屋が真っ黒になりました! ビックリです。お母様も含めた女性から黒い色が出て部屋を埋め尽くしたのです。怖かったです。黒が出てないノワールの側にいたおかげで色々大丈夫でした。
ノワールに聞いてみると、エドワード様は女性には言ってはならない言葉を言ってしまったらしいです。そのうちエリーからも出るのでしょうか? ちょっと怖いです。
エドワード様が調理場に行かれて、しばらくしてから何かを持って戻って来ます。甘い香りがしてきました。
「デザートのスフレパンケーキです」
「凄く美味しそうないい匂いね」
今回のデザートはスフレパンケーキと言うらしいです! 絶対美味しいやつです! だってスフレパンケーキが光ってますもん!
みんなが食べ始めると。
『――!』
「エドワード! 大変よ! プリンが陥落したわ!」
エドワード様のお母様は、プリンの敗北宣言をしました!
「エドワード様! ふわしゅわです! 幸せの甘さです!」
大変です! ノワールが壊れました!
アムアム……大人しく食べられる……モグモグ……エリーだけが大人の女です。エドワード様がエリーを見てビックリしていますね……どうしたのでしょうか?
幸せな時間というのは、あっという間に過ぎてしまいます。
夕食が終わり私たちは帰りますが、その日はノワールとエドワード様の作った料理の話を眠るまでしていました。
◆
「エリー、そんなに禍々しい色が見えるの?」
『いえ、エドワード様の事を思い出していました』
「エドワード様の事?」
『エドワード様の料理を食べている時、みんなから幸せな色が凄く出ていて、その空間にいるだけでエリーは幸せでした』
「凄く美味しかったですわね」
『耳長のお姉さんがエドワード様の料理のお手伝いをしている時に、エリーもお手伝いをしたいと思ったのです』
「エリーが料理を?」
『エリーは真っ黒なやつが大嫌いなのですが、美味しそうに料理を食べてる人からは幸せの色しかでないのです』
「なるほどね。確かに美味しい料理を食べているときは幸せね」
『ノワールは反対しないのですか?』
「誰か反対したのかしら?」
『お母様には危ないからダメって言われました』
「ナイフを使うからね。じゃあナイフを使わないヤツからでも始めればいいんじゃないの?」
『――! さすがノワールです! ナイスアイディアです!』
「私も一緒に頼んであげるわよ」
『ノワール、大好きです!』
「じゃあ、後で行きましょうね」
『そう言えば、ノワールに1つ聞きたかったことがありました』
「私に聞きたかったこと?」
『うん、ノワールがエドワード様に髪を褒められていた時、ノワールからピンク色が溢れていました。あの時はどんな気持ちだったのでしょうか? ノワールから出る色で初めて見ました! 凄く気になるのです』
「――! 本当に私からそんな色が出てたの!?」
エリーが頷くとノワールはエリーの耳元で教えてくれます。
ちなみに今も出ているのですが、そのことはエリーだけのヒミツにしておきました。
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ノワール嬢のイメージ画像です。




