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第129話 防衛の準備

 作戦会議が終わり、現在は手分けして襲撃に備えた準備をしている。僕が任されたのは防衛しやすい環境作りだ。


 具体的に言うと、サルトゥスの町もヒューレー同様、周囲が堅い木で囲まれ開発が進まない土地なので、木が邪魔で剣を振るうスペースすらない。


 まず、兵士たちが十分な広さで戦える場所の確保と、防衛しやすいようヒューレーに設置したように伐採した堅い木を重ねた防壁作りを任された。


 アーススライムの柵は僕がいないと維持が難しいため、今回は使用しない。


 ミスリルの糸を使い木を伐採して空間収納庫に収納していく。伐採エリアや防壁の設置エリアは僕では分からないため、次期当主であるルイドさんが指示をしてくれている。


「エドワード様、このエリアは、あとそこの3本で十分だろう」

「了解です」


 堅い木を3本伐採して格納する。



「それにしても、マルシュから聞いていたとはいえ、この堅い木を草でも刈るように切ることが出来るとは、桁違いの能力だな」


「切るのは得意なんですよ」


「次は向こうの方へ移動しよう。ジョセフィーナがちょっと見ない間に、大きくなっていたこと以上に衝撃の光景だよ」


「結婚式には出席できず、申し訳ありませんでした」


「エドワード様を探す旅をしていたのだからしょうがない。無事で帰って来られたのがなによりだよ」



 ジョセフィーナは僕を探す旅を優先したために、お姉さんの結婚式には出席しなかったようなのだ。



「それじゃあエドワード様、次はこの辺りの木をお願いできますか?」

「了解しました。少し離れていて下さい」


 みんなが少し離れたのを確認して、伐採を開始する。


「これだけ伐採してもらえると魔の森の脅威が去れば町の開発も進められそうだ」

「そうですね、それを見越しての位置で木の防壁も配置した方がいいと思いますよ」

「よし、あとはこの辺りに木を配置してもらえれば大丈夫かな」


 指示された所に木を重ね防壁を設置する。ちなみに防壁は簡単には崩れないように蔓で固定してある。


「了解です。これで大丈夫かな?」


「うん、完璧だね。これでもしスタンピードが起きても、ある程度魔物の進行をコントロールできるはずだ」


「なるべく町の西側に魔物を集めるんですね?」


「そうだね、西側の方が守りやすいから、そっちに流れやすいように防壁を配置してもらったんだ」


「それではエドワード様、夜襲に備えて休憩してください」


「えっ! 急にどうしたのジョセフィーナ。休憩するにはまだ早くないかな?」


「早いことは全然ありません。これだけのエリアを伐採して下地を整えたのです。少しでも体調を万全にするため休憩するべきです」


「エドワード様、ジョセフィーナの言う通り、夜は長いから休憩は取れるうちにとっておいた方がいいよ。僕らも夜に向けて交代で睡眠を取るようにしているんだよ」


「分かりました、戻ったら休憩をとりますね」


 ◆


 町に戻るとマルシュ君が走って来た。


「エドワード様! サルトゥスの町のためにありがとうございます!」

「ほら、マルシュ君。無理して走っちゃダメだよ。僕の母様に言われてたでしょ?」


「エドワード様が町のために動かれているのに、俺だけ何もしないわけにはまいりません!」


 マルシュ君はカラーヤ侯爵の下で厳しくも愛情持って育てられたのか、凄く真面目だ。


「マルシュ、エドワード様もこれから休憩されるから、お前も大人しくしてるんだ。まだふらついているぞ」


「兄上、このくらい何ともありません大丈夫です」

「マルシュ君、防衛戦は長期戦になるかもしれないから、早く回復しようね」

「畏まりました。ご心配おかけして申し訳ございません」

「気にしなくていいよ。お互い頑張ろうね」

「――! ありがとうございます!」


 マルシュ君たちと別れて、大公家に割り当てられた僕の部屋へ行くと、母様がいた。


「あら、エドワード、防衛戦の準備は終わったのですか?」


「はい、ひとまず完了しました。休憩を取るように言われたので戻ってきたのですが、母様は僕の部屋でどうしましたか?」


「エドワードを待っていたのです」

「僕をですか?」

「さあ来なさい!」


 母様はベッドの上にペタリと座ると膝をポンポンと叩く。


「母様?」

「おかしいわね、マルグリットからエドワードは膝枕をすると、すぐ眠ると聞いていたのですが?」


 なんの話だ? メグ姉に膝枕してもらった記憶なんて……結構あるな。


「でも、それは小さい時の話では?」

「エドワード。母はまだエドワードに膝枕をしたことはないのです」

「そうなりますね」


 母様から一瞬凄いプレッシャーが放たれたかと思うと。微笑みまた膝をポンポンと叩く。これは膝枕しないと終わらない流れだな。

 母様がそれで納得するならいいかと思い、膝枕してもらう。


「これでいいでしょうか?」

「これはっ! とても良いわね……しばらくこのままでね」

「分かりました……」


 母様が僕の髪を撫でる。とても心地よく感じる……。



 ◆


 ――Sideソフィア・ヴァルハーレン――


「本当に眠ってしまいましたわ」


 とても眠りそうな雰囲気ではなかったのに、マルグリットの言う通りに膝枕すると、エドワードはすぐに眠ってしまいました。


「私の言った通りでしょ?」

「ええ、でもどうしてなのかしら?」


「口では大丈夫って言っても体は疲れているのじゃないかしら。エディを寝かしつける方法がいくつかあるのだけど、その中でも2番目に有効的な方法よ」


「これで2番目なのね……それじゃあ1番目は?」

「その方法は私やソフィアでじゃ無理。カティじゃないと無理な方法よ」


 マルグリットさんにその方法を教えてもらうが。


「確かに私では無理ね……カトリーヌが羨ましいわ。でも小さい頃はともかく、未だにその方法で眠るのかしら?」


「膝枕も最近はしてなかったけど効果はあったでしょ? 小さな頃からの習慣だから抵抗できないんじゃない?」


「そうなってくると、カトリーヌはどれだけエディを寝かしつけたのかしら? 羨ましいわ」


「カティはお乳を飲ませていたから、その流れで寝かしつけてたのよね」


「マルグリットとカトリーヌのおかげで元気に育っているのだから感謝してるのよ?」


「まあ、これからも私たち周りが注意してあげて、頑張り過ぎるようなら強制的に休ませればいいんじゃないかしら?」


「そうね、自分の限界を把握してないのは危なっかしいけど、注意してあげるしかないわね」


「おそらく年齢に対してのレベルやステータスのアンバランスさが影響しているのじゃないかしら?」


「それは確かにありえそうな話ね」


 それにしても、しょうがないこととはいえ、母親としてまだまだマルグリットに敵わないのは悔しいわ。

 

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