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第128話 サルトゥスの町

 到着したサルトゥスの町は森の中にたたずむ小さな町といった感じだ。ぐるりと囲む防壁は高さ3メートルぐらいあるのだが、いたるところが壊れていて魔物による激しい襲撃があったと思われる。


 町で一番大きな建物にカラーヤ侯爵がいるとの事で、そこへ向かうとカラーヤ侯爵ことベルベルト・カラーヤ侯爵本人が出迎えてくれた。



「ヴァルハーレン大公様、此度は我が領までお越しいただき御礼申し上げます。約束よりかなり早いお越しですがどうされました?」


「出迎えご苦労様、あまり人に聞かれたくない話もあるので、別の場所はあるかな?」


「それでしたら、中に会議室があるのでそこで」

「アーダム、野営出来る場所を聞いて野営のテントを設置してくれ」

「畏まりました」


 アーダム隊長は数名の護衛を残すと、兵士たちを引き連れて野営地の設営に向かうので、僕もついて行こうとするが。


「エドワードはこっちだよ」


 そう言われ、父様たちと一緒に会議室へ向かうのでした。


 会議室にはカラーヤ侯爵嫡男のルイド・カラーヤ(24歳)と怪我をして痛々しい姿の次男のマルシュ・カラーヤ(12歳)もいて、どうやら作戦会議をしている最中のようだ。


「ハリー! いやヴァルハーレン大公様、ご無沙汰しております」

「ルイドも久しぶりだね。公式の場じゃないから、いつも通りハリーで構わないよ」

「ヴァルハーレン大公様、我が領のためにありがとうございます」


「マルシュ君はパーティーぶりだけど、ちょっと傷が深いようだね。フィアお願いできるかな?」

「分かりました。マルシュ君こちらへ」


 母様がマルシュ君に回復魔術を使うと傷が塞がっていく。


「傷が塞がった……ソフィア様ありがとうございます!」

「失った血は魔術では回復しないから、しばらくは無理しちゃだめよ」

「そんなっ!」


 直ぐに戦えると思ったのか、マルシュ君は肩を落とす。


「これ、マルシュ無理を言うでない。王国一の回復魔術の使い手である、ソフィア様に治していただけるだけでも有難いことなんだぞ」


「それでは、早速話に入ろうか?」



 父様が促すとみんな席に座る。



「今回、早く訪れることになったのは、カラーヤ侯爵のサルトゥス入りが早まったのにも関係しているかな」


「我々のサルトゥス入りにもですか?」



「サルトゥスに向かう準備をしている時に王都から呼び出しがあってね。サルトゥスへ来る前に寄って来たわけなんだけど。スタンピードによりモトリーク辺境伯領のコラビの町が落ちたと言う話だったよ」


『――!』


「それでコラビの町はどのように?」


「詳しくは分からないけど、モトリーク辺境伯がコラビの住人を、主都のヴィンスに避難させてたようで、町自体はダメだけど住人たちは無事らしい」



「そうですか、不幸中の幸いですが。モトリーク辺境伯らしからぬ失態ですな」


「そうだね、何か事情があるのかもしれないが、モトリーク辺境伯領にはハットフィールド公爵が救援に向かうみたいだから大丈夫だろう。今回は魔の森全域で魔物が大量発生しているようなんだ。我がヴァルハーレン領でもワンダリングデススパイダーやストームディアーなど普段見ない魔物が確認されている」


「そこまで強い個体も現れているとは、いつもの大量発生とは違うと改めて認識いたしました」


「そうだね、王都からスヴェートの町までの間にもオークの集落を見つけたんだけど、オークキングとオークジェネラルがいたことから、魔の森から追い出された可能性も考えられるね」


「オークキング以上の個体ですか……普段なら考えたくないところですが、今は大公様に泣きついた自分を褒めたいところですな」



「いつもと違う様子を感じ取ったベルベルト殿ならではの勘ではないかな?」


「そう言ってもらえるのは嬉しいが、自領の者だけで解決できないのはやはり儂の能力不足だ」


「それで、今はまだ日中ですが狩を行っていないようですね。何か理由でも?」

 


「それなんだが、日中はそこまで魔物が多くないのだ。探すのに時間がかかるほどでな、その代わり夜になると町へ大量の魔物が押し寄せてくるのだ。それで日中は冒険者たちに任せて、我々は夜の襲撃に備えている状況なのだ」



「夜に大量の魔物が押し寄せてくるなんて、ヒューレーの町を出て最初の野営ポイントで起きた現象と同じだね」


「野営ポイントまで大量の魔物が? それはまずいな」

「あれでは一般人が街道を使う事は難しいだろうね」

「早急に対策せねばならんな……」


「そういえばかなり防壁が傷んでいましたね?」

「うむ、昨日の防衛でかなりやられてしまってな」


「申し訳ございません。僕が抜かれてしまったばかりに……」


「何度も言うがマルシュのせいではない、あの状況では仕方がない。生きていただけでもよくやったと言いたいところなんだ」



 なるほどマルシュ君が魔物にやられて防衛に穴が空いてしまったのか。酷い怪我だったとはいえ、本当に生きていて良かった。



「後方に配置していただろうマルシュ君が怪我をしたと考えると、魔物の来る方向が前日とは違ったと言うことかな?」


「ハリーの言う通りで、ずっと襲撃は町の西側から来ていたのだ。それが昨日に限っては北側からも同時に襲撃してきてね。襲撃にいち早く気がついたマルシュが応戦したのだが、ギアラタウルスが現れて一撃で吹き飛ばされてしまったらしい」


 ルイドさんが悔しそうに言う。


 ギアラタウルスと言うのは体長3メートルぐらい、二足歩行で歩く、頭に水牛のような角の生えた牛の魔物らしい。


 つまり外見はミノタウロスということなんだが、ギアラって確か牛の第四胃の呼び方だったような……ミノタウロスのミノは第一胃のことじゃなくてミーノース王の牛を意味する呼び方なんだが……。


「なるほど、ギアラタウルスはかなりのパワー型。まだマルシュ君には荷が重いね」


「まぁ、遠くに吹き飛ばされたおかげで、怪我はしたものの他の魔物に踏まれることなく助かったのだが」


「そうなると、今夜も何か仕掛けてきそうだね。ギアラタウルスのような魔の森の奥深くにしかいない魔物が出てくるんだから、もっと凄い魔物が出てきそうだね」



 父様たちの話を聞いていて1つの疑問が湧いた。



「父様、1つお聞きしたいことがあるのですが?」

「何かな?」


「先ほどから話を伺っていると、魔物の襲撃から策略めいたものを感じるのですが、魔物が策略を使う事はよくある事なのでしょうか?」


「よくはないけど、その種の上位種になると知恵を使うものがたまに出てくるね。エドワードが知るところだとオークキングがいい例だ」


「なるほど……」



 そう言えば僕ってオークキングが動いているところ見たことないな……2回とも、建物の外から串刺しにしたせいだな。



「兄上、それではギアラタウルスの上位種がいる可能性もあるとすると、上位種はどんな魔物なんでしょうか?」


 マルシュ君ナイス質問だ。名前が凄く気になる! ハラミタウルスとかイチボタウルスだったらどうしよう。タンタウルスの可能性も! タンタウルスって聞いたことあるな……いや、タンタロスか。


「ギアラタウルスの最上位種ならキングタウルスだろうな」

 

 ちょっとだけ安心したというか、順当なネーミングだった。


「キングタウルスが本当にいるとすれば、我々では太刀打ち出来んが、大公様がいるので何とかなりそうだ」


 父様、凄く期待されてますよ! そう言えばまだ父様が戦っているところを見たことないな。おじい様とおばあ様の子と考えれば……うん、どっちに似ても大丈夫そうだ! 聞いた話ではおじい様と同じようなプラズマ系だとか。


「それでは、今晩の襲撃に備えて打ち合わせをしようか?」


 みんなで意見を出し合い、今晩の襲撃を乗り越えるべく意見を出し合うのだった。

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