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第124話 スライム(下)

 諦めの早いアスィミのことは気にしないで、魔力を補充できる別の方法を考えることにする。


【スライム】スライム、サンダースライム、アイススライム、ウォータースライム、アーススライム、マグマスライム、ホーリースライム、ポイズンスライム


 使えるスライムの種類は8種類。サンダースライムがダメとなるとイメージ的に出来そうなのは、アーススライムかホーリースライムになる。

 大地のパワーや回復の力で魔力を補充できる可能性も浮かんだが、普通のスライムに目が行く。


 普通のスライムの糸には属性魔力を付与することができる。という事は純粋な魔力も込められるのかもしれない。


 最初に作ったマグマスライムの糸は溶けてしまったので、代わりのマグマスライムの糸をもう一度出した後、スライムの糸を直径10センチ、長さ5ミリ、魔力を貯めるイメージで出してみる。


「今度は何のスライムを出したの?」

「普通のスライムに魔力を込めてみたよ」

「魔力の補充が出来るといいわね」


 手に持った魔力を込めたスライムの上に、3分経って温かさの無くなったマグマスライムを乗せてしばらく待つ。しばらく待つとマグマスライムの赤みが回復したので触ってみると温かさも回復していることを確認できた。


「成功だ!」

「エディ、良かったわね」

「これなら商品として売り出せそうだ」

『もっと簡単な方法があったのに、凄く面倒なことしてるね』

『簡単な方法?』

『カイロを真似したのだったら、使い方も真似すればよかったんじゃない?』


『カイロの真似ってカイロは空気に反応して……そうか! 開始の合図を設定すればいいのか』

『イグザクトリー!』


 開始の合図か……擦ったりするのは、どこかに擦れて誤動作しそうだし。そうだ!

 考えた開始の合図のイメージも盛り込み、もう一度マグマスライムを作成する。


「メグ姉、ちょっと試してもらえる?」

「いいけど、このスライムは温かくないのね?」

「マグマスライムが温かくないのなら成功したかも。そのスライムを一度真ん中で折り曲げてから開いてもらえるかな?」

「折り曲げてから開けばいいのね?」


 メグ姉がマグマスライムを折り曲げてから開くと。


「温かくなったわ! 開始の合図をイメージしたのかしら? おもしろい考えね」

「ウルスがアドバイスくれたんだよ」

「ぬいぐるみが? たまには役に立つのね」

「今回は役に立つって言ってたから頑張っているのかな?」

「いつも頑張れないのかしら?」


 メグ姉の一言にウルスが怯えてる……ような気もする。


「そういえば気がついたんだけど、さっき普通のスライムを手に持っていたんだけど、その上にマグマスライムを乗せても温かさが伝わらなかったんだ」

「温度がそこまで高くないからじゃないの?」

「その可能性もあるね。試しにもう少し温度を上げてみるね」


 試しに温度を60度にまで上げたマグマスライムをスライムの上に乗せてみる。


「うん、やっぱり熱さが伝わってこない」


 メグ姉がスライムとマグマスライムを交互に触っている。


「確かに熱さが分からないわね」


「スライムの上ならどんなに熱いマグマスライムを置いても熱さを感じないのかもしれないな。高温のマグマスライムの上に鉄板を置けば料理にも利用できるかも」


「それが出来たらどこでもスフレパンケーキが作れるんじゃない?」

「メグ姉はスフレパンケーキ気に入ったみたいだね」

「今まで生きて来たなかで一番美味しかったわ」

「本当に? メグ姉が喜んでくれたなら作った甲斐があったよ」


「エドワード様、今晩の野営ポイントに到着したようです」


 今日の野営ポイントでは調理スペースもないので、僕が料理をするということもなく、通常の保存食で簡単に済ませることとなった。

 

 ちょうど野外にいるのでスライムの検証の続きをすることにしたのだが、父様と母様がやってきて。


「またエドワードはおもしろそうなこと始めてるね」


 父様にさっきの検証の結果を伝えると。


「それは大発見だね。冷蔵庫と冷凍庫は出来れば広めたかったから、凄くいい検証だよ」

「広めたかったのですか?」

「食糧の保存ができることは素晴らしいよ。今直ぐには無理でも最終的に村に1つ冷凍庫を置くだけでも、かなり食糧事情が改善されるはずだからね」


 なるほど冷蔵庫や冷凍庫はそういう事にも役に立つのか。


「それで今は熱さが伝わるか検証しているんだね」

「その通りです。検証を始める前に母様の分の温かいスライムです。クッションにするか膝にかけて使ってみてください」

「これは温かいわね。冷たくなった体が暖まるわ。エドワードありがとう」

「喜んでもらえて嬉しいです」


 その後、スライムを重ねる検証を色々ためした結果。

 

 ・スライム自体は熱や電気を通さない。

 ・スライムの上に乗せたマグマスライムやアイススライムの方が厚いと熱を通し、厚さによって伝わり方が違う。


 2つの特性が検証により判明した。


 次は溶ける方も検証しないと持ち歩けないな。


 まず、マグマスライムの糸をナイフで切ってみると、普通に切ることができ、切っても問題ないことが分かる。

 どうやら切っただけじゃ攻撃したことにはならないみたいだ。

 しかし、どうして静電気程度の電圧で溶けてしまったんだろうか? 単に雷に弱いだけなのか?

 

 雷の魔法を直接当てるとやはり溶けてしまう。


「物理的攻撃は大丈夫だけど魔術的攻撃はダメなのかな?」

「なるほど、父様の言う通りかもしれません。雷だけじゃなく、魔術や魔法全体がダメかもしれないって事なんですね!」


 相変わらず、父様は要点を掴むのが上手い。

 マグマスライムに火の魔法を当ててみると同じように溶けてしまった。やはり父様の言う通り魔術や魔法を当てると溶けてしまうのだろう。

 試しに回復魔法をかけたところ、同じように溶けてしまったことから、おそらく純粋な魔力以外は攻撃判定になると思われる。


 次にポイズンスライムを使って麻痺毒をかけてみると、これも溶けてしまった。物理的な力以外には弱いのかもしれない。


「おもしろい結果だね。例えば冷蔵庫を販売する時、分解すると弱い毒が漏れてスライムを溶かしてしまうみたいなことも出来そうだね」


「分解すると毒が漏れるんですか?」

「きっと販売を始めると分解して真似しようと考える人も出てくると思うんだ」

「分解してもアイススライムを作ることは出来ないから、大丈夫じゃないですか?」


「それでもいいんだけど、冷凍庫に使ってるアイススライムって直接触ると危ないよね? 秘密保持の面もあるけど安全面も考慮してかな」


「ついでにアイススライムを悪用されることも防げますね。その辺りはリュングとロヴンに相談してみます」


「それがいいね。その他のスライムについては何か分かったのかい?」

「アーススライムの糸なんですが、おもしろい活用方法を発見しました」


 アーススライムの糸でアーチ状の橋を作り、硬化させる。


「乗っても大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ」


 父様はアーススライムで出来た橋の上に乗って、ジャンプしたり叩いたりしてみる。


「これは凄いね! 川や崖に橋をかける事ができると言う事でいいのかな?」

「はい、他のスライム同様、魔術を当てると溶けて無くなってしまうと思われますが、人や馬車ぐらいで壊れることはないと思います」

「渡った後に無くすことができるのは、どちらかと言うとメリットなんじゃないかな? 魔術を使う魔物や盗賊は少ないから、野営で簡易的な柵としても利用できそうだね」


「そう考えると色々な活用法が、まだまだ出て来そうです」

「そうだね、だけど熱中しすぎて魔力の使い過ぎには注意するんだよ。そうだ、色々と検証できるように消費魔力を少なくするのはどうかな? スライムの核を手に入れることができれば、消費魔力が少なくなるよね? 帰ったら捕獲依頼を出さないとね」


 スライムの捕獲依頼なんて考えもしなかったよ。ローダウェイクへ帰ったら、真剣に魔力の消費量を減らすための依頼を出すことにしよう。


 この日の野営は、アーススライムの糸で作った柵を設置してから眠る事になった。


 ◆


 翌朝、朝食を取った後に打ち合わせをすると、アーススライムの糸で作った柵がかなり役に立ったと報告される。ボア系の魔物などはそのまま突進して柵に激突して気絶したそうだ。今後は兵士たちの意見を取り入れつつ、護衛しやすい形状を探して行くことになるだろう。


 準備ができたので出発する。移動の途中でショートカット出来そうなところを探し、アーススライムの橋を実際に使ってみて安全なことを確認してみようと言う話になった。最初は短い距離に橋を架け、徐々に長さを伸ばしていくと、目視できる範囲内なら自由に橋を架けられることが判明した。


 最初はアーススライムの橋を渡るのを怖がっていた兵士たちも、最終的には効率的にショートカットできる場所を率先して探すようになり、ショートカットを重ねた結果、カラーヤ侯爵領の主都ヒューレーに通常ならどんなに早くても4日はかかるところ、3日で到着できたのだ。


 父様の話では、今回は色々試しながら移動していたので、次回同じ道を通るなら2日で行けるだろうとの話だった。


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