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第123話 スライム(上)

 リヒト男爵夫人やエリー嬢、ノワール嬢と夕食を一緒にするなどのイベントはあったものの、2日間で兵士たちの休息は十分に取れたため出発することになる。リッコも追加で購入することができたので大満足である。

 

「それでは出発しようか」


 父様の合図で馬車が動き出し、それに合わせて兵士たちも動き始める。


「ねえ、ジョセフィーナ、ここから目的地まではどのくらいかかるのかな?」

「そうですね、おそらく4日程でカラーヤ侯爵領の主都ヒューレーに到着するのではないでしょうか? そして、目的地のサルトゥスの町はヒューレーから更に3日程ですね」

「まだかなり時間がかかるんだね」

「ここからは更に険しい山道になりますので、速度が落ちるかと思います」

「そうなんだね」


 うーん、暇だ。外に出るわけにも行かないし、魔力を使いきるわけにもいかない。取りあえずステータスでも見てみるかな。


【能力】糸(Lv6)

【登録】麻、綿▼、毛、絹、パスタ

【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、ピアノ線、ナトリウム、マグネシウム、チタン、タングステン、炭化タングステン、銅、銀、金、白金、ミスリル

【特殊】元素、スライム▼、スパイダー▼、蔓、グラウプニル(使用不可)

【付与】毒▼、魔法▼

【素材】毛皮▼、ホーンラビットの角(47)、ダウン(32)、フェンリルの毛(43)

【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼

【登録製品】カタログ

【作成可能色】CMYK

【解析中】無


 合成は魔力の消費が半端ないから4日もかかるのなら使えないし、何か検証するのを忘れてたような……。

 そうだ! スライムだスライムの糸に関しては謎が多すぎるんだった。


【スライム】スライム、サンダースライム、アイススライム、ウォータースライム、アーススライム、マグマスライム、ホーリースライム、ポイズンスライム


 現在使えるスライムの糸は8種類、アイススライムについては冷蔵庫の時に色々試したので、かなり使いこなせるようになっていると言えるだろう。

 アイススライムは出すときに温度をイメージすることで冷たさを変更できることから、他のスライムも同じことができると考えられる。


 取りあえず、あったら便利そうなのはマグマスライムを活用した道具だな。

 使い捨てカイロって温度どのくらいなんだろうか? 分からないからお風呂の温度くらいで試してみるか。


 マグマスライムの糸を直径10センチ、長さ5ミリ、温度40度をイメージして出してみる。


 上手く出たようなので触ってみると温かいが、もう少し温度が高くてもいいのかもしれない。


「エディ、それは何?」

「マグマスライムの糸だよ。温度をお風呂ぐらいの温度にして出してみたんだ」


 そう言ってメグ姉に渡す。


「へぇー、温かいのね。寒い日に使えて便利じゃない?」

「そう思ってこの移動の時間に色々検証してみようと思って」

「おもしろそうね。手伝うわ」

(ワレ)も手伝うぞ』

「これがあれば寒さを凌げそうですね」

「私は寒さに強いので必要ないです」


 みんな興味津々のようだが、アスィミだけは寒さに強いらしい。おそらく狼人族は寒さに耐性を持っているのだろう……あれっ? ヴァイスも持っているんじゃないのか?


(ワレ)が座れる大きさで作ってくれ』

「わかったよ」


 直径70センチ、長さ3センチ、温度40度のマグマスライムの糸を出す。


「はいどうぞ」


 ヴァイスはマグマスライムの上に座ると。

 

『これは気持ちいいぞ! まるでお風呂に浸かっているかのような気持ちよさだ!』

「暑い所ではアイススライム、寒い所ではマグマスライムを売ったら売れそうだね」

「これって永久に使えるのかしら?」

「その辺りが分からないから、冷蔵庫も販売できないんだよね」


「このマグマスライムはどうやって温度を決めてるの? 本当のマグマスライムは鍛冶に使えるくらいなんだから熱いんでしょう?」


「このくらいの温度ってイメージして出しているかな」


「どのくらいの時間を継続させるとかイメージしたら調整出来ないのかしら? 精霊魔法で風を吹かせたりするとき、小鳥が5回さえずるくらい吹かせるとか指定できるわよ」


 小鳥が5回さえずるというのは、この世界ではだいたい5分ぐらいのことだ。


「そんなこと出来るんだ! 早速試してみるよ」

 

 マグマスライムの糸を直径10センチ、長さ5ミリ、温度40度、継続時間3分をイメージして出してみる。


「3回分ぐらいをイメージに付け加えてみたよ」


 3分経つとマグマスライムから温かさが無くなり、色も赤みがかった透明から完全な透明になったようだ。


「メグ姉の言う通り時間を指定できたよ!」

「凄いわ! さすがエディね」


「マルグリット殿、時間指定する必要はあるのでしょうか? ずっと使えればいいのでは?」


「時間によって値段を変えることが出来るじゃない? どれだけ使えるか分からない物は販売できないけど、使える時間が決まっているのなら販売できるでしょ?」


「なるほど、確かに永久に使える証明をするのは難しいですね」


「残りの問題はこの温かく無くなったマグマスライムが、もう一度使えるようになるかだけど。メグ姉、このマグマスライムに魔力を流してもらえるかな?」

「私が? いいわよ」


 メグ姉が魔力を流してみるが、変化はないようだ。


「次は僕が流してみるね」


 魔力を流してみると、マグマスライムに赤みが戻り、温かさも戻る。


「エディの魔力で作ったからエディの魔力で元に戻るのね。とてもおもしろいわ」

「問題は時間指定がある場合、僕がいないと販売できないってことだね」

「そうね、作った段階で時間が進んじゃうから、売る時に魔力を補充出来ないと販売は無理ね」

「そうなんだよね。魔力を充電……いや補充できるといいんだけど」


 サンダースライムで充電できないだろうか? 試してみよう。

 サンダースライムの糸を直径10センチ、長さ5ミリ、電圧は3千ボルトで出す。静電気が3千から4千ボルトぐらいと聞いたことがあるので、取りあえず3千ボルトに設定してみた。

 触ってみるとパチッとくる、確かに静電気だな。肩こりとかに使えるのだろうか? 低周波治療器って何ボルトぐらいなのか知らないな。

 そういえば、父様やおじい様が使えるプラズマボールみたいなのはどのくらいなんだろうか? 雷は1億ボルトぐらいあるらしいから、それに近いのかもしれない。


「エディ、それは何?」

「サンダースライムの糸だよ。触るとパチッっとくるから気を付けてね」

「その糸で何をするの?」

「これで魔力を補充できないかと思って」


 サンダースライムの糸の上に魔力が無くなったマグマスライムを重ねてみる。


 パチッっと音がした後、マグマスライムはドロドロに溶けてしまい、しばらくすると消えて無くなってしまった。


「マグマスライムが溶けて無くなった!」

「攻撃を受けたってことになるのかしら?」

「スライムって溶けるの?」

「核を破壊したら溶けて無くなるでしょ?」

「えっ!? そうなの?」


 前に倒したスライムを収納リングから出す。


「これはスライムみたいだけど……核が無いわね。どうしてかしら?」

「僕が前に倒したスライムなんだけど……」

「そのまま残ってるなんておかしいわね。どうしたらこうなったの?」

「糸を突き刺して核だけ引き抜いたらこうなったよ」

「不思議なこともあるのね……生きているまま核だけ引き抜くとこうなるのかしら? 試してみるにしてもエディ以外には出来そうもないわね」

「てっきりこれが普通だと思ってたよ」

「あのぅ、これって凄い大発見なんではないでしょうか?」


 アスィミよ、余計なことに気がついてしまったな。


「まあ、大発見かもしれないけれど、所詮はスライムのことだから大したことじゃないでしょ?」

「言われてみればそうですね」

「今大切なのはどうやったらスライムの魔力を補充できるかだよ」

「無理なんじゃないですか?」


 アスィミよ、諦めるの早くないか?

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