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第117話 オークキング

 元々のカラーヤ侯爵領へ向かうルートに比べれば、かなり先行していることから、オークキングを捜索することになった。しかし、取りあえずは崩落して塞がれている道を何とかしなければならない。


「という事で、エドワード頼んだよ」


 崩落した岩をどかす仕事を父様に頼まれた。


「分かりました」


 大量の蔓を出して岩をどかすと、蔓を見たことのない兵士たちから拍手が湧き起こる。


「完了しました。この崩落もオークの仕業でしょうか?」

「多分そうだろうね。オークジェネラルは他のオークを率いることは出来ても、このような策略を仕掛けることは出来ないから、間違いなくオークキングの仕業だと思うよ」

「ハリー様、この先に少しだけ開けた所がございますので、そこを野営ポイントといたしましょう」

「分かったよ。それじゃあ、エドワードも馬車に乗って、取りあえずそこまで移動しようか」

「分かりました」


 馬車に戻り、野営ポイントまで移動する。


「ここじゃあ、襲ってくださいと言っているような場所ね」


 確かに、メグ姉の言う通りだ。多少開けているとはいえ、岩でも落とされたら一溜まりもないだろう。


「そんなに長く居座るつもりはないから、さっさと片付けてしまおうか、崩落や奇襲は上からだから、上に集落があるのかもしれないね。エドワード、オークジェネラルはどっちに潜んでいたかな?」

「向こう側ですね」

「それじゃあ、そっち側から探索することにしよう。エドワード、蔓で上に登れる階段みたいのを作ることは出来るかい?」


 蔓で階段を作るのか、数人ずつ持ち上げるより効率的だな。


「やってみます!」


 蔓は魔力消費もないから使い放題だ。蔓を出すと、螺旋階段に形成したものを3カ所作る。我ながらいい出来だ。


「出来ました!」

『……』

 

 あれっ? みんな無言なんですけど!


「エドワード、やり過ぎだ。まさかこんな立派な階段を作るとは思わなかったよ。何はともあれ、アーダム頼んだよ」

「畏まりました。隊を半分に割る! 第1部隊はエドワード様が作られた階段を使い探索を、極力交戦は控えるように。第2部隊はこの場にて待機、大公様の護衛を継続せよ。直ちに行動開始!」


『はっ!』


 第1部隊の人たちが螺旋階段を駆け上がる。手摺も付けてあるので上がりやすそうだ。


「エドワード、オークを倒し終わったら階段は撤去するんだよ」

「えっ! どうして? デザインが気に入らなかったですか?」

「いや、デザインじゃなくて、こんな所に階段があったら盗賊に悪用されるかもしれないでしょ?」

「確かにそうですね。簡単に上に行けるのはまずいですね」

「しかしこれだけ立派な階段を作ることができるのなら、簡易的な砦なんかも作れそうだね」

「砦ですか? 木で出来てるから燃えちゃいますよ?」

「それでも矢の発射台的な使い方をするとか、時間があれば上からセメントを塗るって方法もあるからね」


 ふむ、単騎で突っ込むと噂の父様も色々考えているみたいだ。


「何か良からぬことを考えてそうな目をしているね」

「イエソンナコトハアリマセン」


 上手くごまかせただろうか。


「それにしても、父様、上にオークの集落があるとして、襲撃したオークたちはどこから上に戻るんですかね?」

『――!』

「アーダム! 今すぐ崖を調べるんだ」

「畏まりました」


 アーダム隊長は部下を連れて崖を調べ始める。


「父様?」

「エドワードは良い所に気がついたね。オークの巨体がこの崖を簡単に登れるはずないからね、何処かに登り口があるはずだよ」

「オークがそんなものを作ったということですか?」

「それについては分からないけど、例えば元々盗賊が用意していたとかは考えられないかい?」

「盗賊の集落も上にあってそれをオークキングが奪ったんですかね?」

「その可能性も考えられるね」


 しばらくすると、アーダム隊長が帰ってくる。


「ハリー様、見つかりました! 先ほどの崩落ポイントです。崩落した岩で分かりにくくしてありました。中にはしっかり階段が掘ってありますので、盗賊の仕業かと」

「エドワード、穴と階段を塞げるかい?」

「やってみます」


 アーダム隊長たちと崩落ポイントまで行くと、場所を教えてもらう。


「なるほど、上手く崩落した岩で分かりにくくしているんだね、さっきどかした岩で塞いでしまおう」


 大きな岩をずらして入り口の穴を塞ぐ。


「それじゃあ、上に登って階段を塞ぐね」


 そう言って、糸を使い上に登り、辺りを探すと、階段の降り口も岩でカモフラージュしてあるのが確認できた。

 崖の上から蔓を使い、岩を拾い上げ階段の中を岩で塞いでいき、最後に大きな岩を置いて穴を塞ぐ。


「こんなもんかな」

「うん、完璧だね」

「と、父様! びっくりするじゃないですか! いつの間に崖の上に?」

「階段を塞いでる姿が無防備だったから警戒してたんだよ」

「無防備でした?」

「僕に気がつかなかったんだから無防備だったんじゃないかな」

「すみません」

「いや、そういう年相応の姿を見ると逆に安心するよ」

「普段の僕ってそんなに心配ですかね?」

「そうだね、ちょっと特殊な育ち方をしてしまったせいか、なんでも1人で片付けてしまおうって傾向が強いように感じるかな? 今のエドワードの周りには味方しかいないんだから、もう少し頼ることを覚えてくれると少しは安心できるかな?」

「心配かけて申し訳ありません」

「ああ、心配かけるのが悪いってことじゃないんだ。7年間何もしてやれなかったことを思えば、今こうして親として心配できるのはとても嬉しいんだ。エドワードがもう十分強いのは理解してるんだけど、7年前の事を考えると特に安全面だけは神経質になっちゃうんだよね」


 そうか、前から少し過保護すぎるような気はしてたけど、父様や母様はまだ7年前のような事件が起きるのを恐れているんだな。


「ハリー様! オークの集落が見つかりました」


 探索部隊が帰ってきたみたいだ。


「そうか、一旦降りようか」


 崖の上から降りて詳しい報告を聞く。


「人の……おそらくは盗賊の集落を奪って住み着いていると思われます。オークの数は50頭ほどで外からではオークキングなど上位種の存在はわかりませんでしたが、大きめの建物がありましたのでその中にいる可能性が高いです」


「なるほど、およそ50頭のオークに最低でもオークキングと言ったところか」

「人がいないようならオークキングのいる屋敷の外から攻撃できますけど?」

「要塞を破壊した時みたいにかい?」


「そうですね、具体的にいうと建物の上空200メートルから炭化タングステンの糸を20センチ間隔で上空から降らせます。前にオークキングを倒したときはこれで大丈夫だったのですが、過剰攻撃でしたので間隔は50センチぐらいでも大丈夫なのかなと思います」

「そうだね、あまり時間もかけたくないしエドワードの案で行きたいと思うけど、生存者の状況はどうだったかな?」

「生存者の確認は出来ませんでしたが、木に縛り付けてある人の死体を確認いたしました。すでに白骨化していたことから、かなりの時間が経過しているものと推測されます」

「僕たちが襲われた場所では他に襲われた形跡が一切無かったことから、最近襲われた人はいないと推測できる。アーダム、兵士100名を引き連れてエドワードと共に殲滅してくるんだ」

「畏まりました」

「私はエドワード様の護衛としてお供いたしますので」

 

 ジョセフィーナはついてくるようだ……あとメグ姉とアスィミも。

 準備が出来たのでアーダム隊長を先頭に螺旋階段を登る。


「それではエドワード様、我々が先導いたします」


 アーダム隊長を先頭に兵士たちが先行するので、後をついて行くがヴァイスが感じ取れないだけあって結構離れた場所にあるようだ。


『オークの臭いがしてきたぞ』

「そうなの?」

『上位種はキングだけのようだな』

「それならオークキングさえ倒せば楽勝そうだね」

「エドワード様、オークとはいえ戦いで気を抜いてはダメです!」

「そうだったね。気を付けるよ」


 珍しくアスィミに怒られてしまったが集落に到着する。


「それではエドワード様がオークキングを攻撃したのを合図に、我々も殲滅にかかりますので、よろしくお願いいたします」

「分かったよ。それじゃあ始めるね」

『ヴァイス、オークキングはあの建物で間違いないかな?』

『うむ、間違いないぞ』


 準備を始める、前は鋼鉄の糸だったけど、今回は炭化タングステンの糸を使うので直径は2センチでいいだろう。長さは前と一緒の3メートル、間隔は50センチ。建物の上空200メートルに設置すると同時に発射させた。


 炭化タングステンの糸は高速で落ちていき、轟音と共に屋敷に着弾し爆発する。


 爆発の衝撃で地面は揺れ、建物は崩れ去り瓦礫と化した。

 

 アーダム隊長を含めた兵士たちは既にオークの殲滅作業に動いているのだが、炭化タングステンの爆発や衝撃は気にならないのだろうか。

 

「よし、オークキングが生きていると困るから確認しに行こう」

「「畏まりました」」

「分かったわ」


 建物だった瓦礫の傍に行く。途中でオークに襲われたがメグ姉やジョセフィーナたちが処理していた。


「エディ凄いわね、ビックリするぐらい破壊されているわ」

「さすがエドワード様です」

「あんなに離れた所から、これだけの威力を出せるなんて理不尽すぎます」


 取りあえず、蔓を使って瓦礫を表面から3回どけると、オークキングが出てくる。炭化タングステンの糸は貫通したのか、穴だらけになっている。


「貫通しているな、もう少し攻撃を弱くした方が良さそうだ」


 そう言いながら、首を落として血抜きをしているとアーダム隊長がやってくる。


「オークキングをいとも簡単に倒せるとは、エドワード様の能力は素晴らしいですな」

「アーダム隊長、オークの方はどうですか?」

「ほぼ殲滅が完了しております。現在建物の中や周囲の探索を行っておりますので、まもなく完了すると思います」

「倒したオークはどうします?」

「通常であれば、魔石だけを抜いて死体は焼却しておりますな」

「そうなんだ、そんなにオークの肉ばっかりあっても仕方ないか。そうだ! ちなみにこの後の予定ってどうなっているのかな?」

「1時間ぐらい移動した所に休憩ポイントがございますので、そこで昼食を取ります。その後カラーヤ侯爵領へ入る前に、王領であるスヴェートの町で休息をとる予定となっております」

「そうか、1時間ぐらい移動した先で休憩か……魔石と一緒にオーク肉を解体してくれるなら、お昼に焼こうと思うけどどうかな? もちろん全部解体するのは大変だから、美味しい部位だけでいいけど……」


 そう言った瞬間に。


「お前たち! 魔石の回収だけでなく、オーク肉も解体するとエドワード様が昼に焼いてくださるそうだ!」

『うぉ――!』


 なんだこの歓声は……。


「解体班と警戒班に分かれて解体を始めろ!」

『はっ!』


 見事な連携で瞬く間にオークの肉、53頭分が解体される。


 積みあがっていくお肉を見て、みんなの分確保出来たからもういいよって止めたんだけど、結局最後まで止まることはなかった。

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