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第108話 王都へ向けて出発

 王都へ向けて出発した。今のところとても順調である。


 今回のメンバーは、父様に母様、メグ姉、ヴァイス、ジョセフィーナ、アスィミ、ウルス(空間収納庫)だ。


 もちろん、母様の侍女2人や護衛の兵士たちもいて、護衛の隊長は母様が僕を探しに来ていた時にいた、アーダム隊長である。


 1台目の馬車に父様、母様、母様の侍女。2台目の馬車に僕、メグ姉、ヴァイス、ジョセフィーナ、アスィミが乗っていて、ウルスは空間収納庫の中だ。


「メグ姉と旅に出られるのは良かったんだけど、メイド服を着なくても良かったんじゃない?」


 今回一緒に来るにあたって、護衛の1人としてメイド服を着ているのだ。


 ちなみに、専属メイドや僕や父様、母様などが着ている服は、全てワンダリングデススパイダーの糸を使って作ってある。

 

「あら、メイド服を着ていれば、傍にいても不思議じゃないから、いいんじゃない?」


「そうなんだけど、まだ慣れていないんだよね」


「すぐに慣れるわよ」


「ところで、メグ姉は王都に行ったことはあるの?」


「エディの元へ行くために、ジョセフィーナたちと馬車で通り抜けただけね」


「そうなんだ、コウサキ親子と出会ったりしたけど、買い物してる間もガラの悪い人に狙われたりしてたから、良いイメージが全然ないんだよね」


「エドワード様を狙うとは、どこの不届き者ですか!?」


「ブラウ伯爵傘下の、ウェチゴーヤ商会の下っ端みたいらしいよ」


「ウェチゴーヤ商会は、そんなことまでやっているのですか!」


「多分、中級商店街とか下級商店街でカモを探してるんじゃないかな? あの時はウェチゴーヤ商会傘下とか知らないで、調味料とかを爆買いしてたから、目をつけられたんだと思うよ」


 メグ姉は少し言いにくそうにジョセフィーナに話しかける。



「ジョセフィーナに聞きたいんだけど、今のエディにちょっかいかけようとしたら、どういった罪になるのかしら?」


「危害を加えようとするなら死罪ですね。まさかマルグリット殿はエドワード様を囮にしようとしているのではないでしょうね?」


「この間エディと狩に行って判ったわ。エディは旅をして十分な強さを得たのよ。チンピラごときに負けるわけないわ」


「だからと言ってエドワード様を囮にしていい理由にはならないわ!」


「ジョセフィーナも熱くならないで。メグ姉が僕を大切にしてくれていることは知ってるでしょ? 何か理由があるんだよね?」


「カティがね、飲むとたまに泣くのよ……カティの目の届く位置にブラウの影すら見せたくないのよ」


「カトリーヌ殿が……」


「メグ姉の案おもしろいと思うんだけど、父様たちの計画の邪魔になると不味いから、一度確認してからってことでいいかな?」


「エディはいいの?」


「もちろんだよ。実は以前王都に来た時、囮作戦やってるんだよね」


「そのような危険なことを!」


「でも今回は、ジョセフィーナもいざという時近くにいるから、大丈夫だと思うんだけどどうかな?」


「――! お任せください、命に代えましてもお守りいたします!」


 そこまで気合入れられても困るんだけど。


「エディ……今、お姉ちゃんちょっとだけエディの将来が心配になったわ」


「何で!?」


 ◆


 頼りになる騎士がたくさんいるので、何かに襲撃されることもなく、野営ポイントに到着した。


 野営ポイントで父様にさっきの話を相談してみる。


「なるほど、貴族はほとんど中級エリアや下級エリアに立ち寄ることが無いし、立ち寄ったとしても馬車で移動するから、貴族には手出ししてないわけだ。相手を選んで陥れているということだね」


「僕は1人で歩いていたから、貴族ではないと判断して襲ってきたんですね?」


「王都でどのくらい時間がかかるか分からないけど、時間があるようならやってみるのもおもしろいかな」


「いいんですか?」


「エドワードなら、チンピラぐらい大丈夫だろうけど、やるなら徹底的にやらないとダメだよ?」


「徹底的にですか?」


「前にエドワードがやったというチンピラ2、3人をやっつけた所で痛くも痒くもないだろうから、アジトに連れ去られるぐらいじゃないとダメだよ」


「一網打尽にしないとダメだってことですね?」


「そうだね。もしウェチゴーヤ商会に繋がる所へ連れて行かれるなら、アーダム隊長や騎士も連れて乗り込むといいよ。上手くいけばウェチゴーヤ商会に大打撃を与えられそうだ」


「分かりました、アーダム隊長、お願いね」


「畏まりました。ジョセフィーナと上手く連携を取ることにいたします」


 あとは王都に行ってみてからだな。



「アーダム隊長、野営の準備はできましたか?」


「間もなく準備が完了いたします」


「ロブジョンに温かい料理を作ってもらって来てるから、みんなで分けて食べるように指示お願いね」


「本当ですか! ありがたき幸せ。兵士たちも喜びます!」


 温かいスープなどの料理が入った寸胴と食器を置いて、食べるように指示をだすと。


「聞けっ! エドワード様から温かい食事の差し入れをいただいた! 有難く食べるように!」


『ありがとうございます!』


 作ったのは、ロブジョンさんたち料理人なんだけどな。


「父様、僕たちも食べましょう。ジョセフィーナ、準備を手伝って」


「畏まりました」


 ドワーフ姉妹の姉のリュングに作ってもらった、キャンプ用品で定番の折り畳み式テーブルや椅子を出していくと父様が質問してきた。


「エドワード、この変わったテーブルや椅子はどうしたんだい?」


「リュングに作ってもらいましたよ」


「リュングが考えたのかい?」


「いえ、僕が設計図を渡しましたけど、駄目でした?」


「駄目じゃないけど、新作は報告するように言ってあったよね?」


「言われたのは料理だけだったと思うのですが……次回から報告します」


「うん、そうしてもらえると助かるかな。エドワードの考える物は素晴らしいものばかりだからね。物によっては商人ギルドに登録しないとダメなものもあって、書類を山のように書かなければならないから頼んだよ」


「そういうのがあるんですね? 今度から注意します」


 この世界には特許までとはいかないが、登録したものにお金を払うと作り方を聞けるシステムがあるそうだ。


 見た目を真似したり、買ったものを分解して真似したものを取り締まることはできないが、使用料を払えば簡単に作り方を聞けるので、結構利用している人は多いのだとか。


 父様は、僕の作った物が真似されても大丈夫なように、登録する作業でかなり忙しいらしい。


「不思議な椅子だね。座面は布だけなのに、凄く座り心地がいいんだね。ビックリしたよ」


「そうね、こんなに座り心地がいいのに、折り畳んでも嵩張らないなんて凄いわ」


 父様だけじゃなく、母様にも好評なようだ。


 ジョセフィーナに取り分けてもらい、夕食にする。


「うん、美味しいな」


『エディよ! このスープ凄く美味しいのだ! コンソメスープというやつなのに具材が入っているぞ!』


「そうだよ、コンソメスープに野菜やベーコンを入れてあるんだよ」


「へーそうなんだね? エドワード、これは新作の料理じゃないのかな?」


「えっ!? 新作ではないですよね?」


 周りを見ると、みんな顔を背けた!


「ちゃんとコンソメスープを作った時に言いましたよ。具材を入れても美味しいと」


「そう言えば、そんなことも言っていたね。それがこれなんだね?」


「父様、さすがに思いつきで作ったりするものまでの報告は難しいのですが?」


「確かにそうだね。僕が悪かったよ。エドワードの作った珍しいものの報告は、ジョセフィーナとアスィミお願いできるかな?」


「「畏まりました」」


「エドワードはその場の思いつきで作っているのか、珍しいと思ってないみたいだからね。2人に任せておいた方が良さそうだ」


「そうしてもらえると助かります」


「ハリーもそのくらいにして、食べましょう。体が温まってとても美味しいわ」


「本当だね。兵士たちも喜んでいるようだし、エドワードの空間収納庫は便利だね」


「ええ、コウサキ親子には感謝しています」


「母様から、アキラが凄く強かったと報告を受けているんだけど本当かい?」


「はい、3メートルぐらいあるストームディアーを、ストームディアーが放った暴風も含めて切り裂いていました」


「やっぱりそうなんだね。エドワード。もし今後、叙爵するようなことがあれば、断ってはダメだからね?」


「どうしてですか?」


「エドワードが将来、大公になることは決定しているわけだけど。その間に褒美として受け取る機会が訪れるはずだ。その時にもらっておけば、例えば将来アキラが家を興す時など、褒美として授けることができるからね」


「1人が持てる爵位は1つじゃないんですね?」


「そうだよ。例えばジョセフィーナの実家の伯爵の位は、父様が渡したんだよ」


「そうだったんですね。でも、どうして今そんなことを?」


「うーん、何となくだけど、エドワードなら断りそうな感じがしたからかな」


 さすが父様、面倒くさそうなんで、断っていたと思います!


「それに、次の会議ぐらいで、もらえそうっていうのもあるかな?」


「えっ! 何でそんな話が出てくるんですか?」


「だってエドワード。イグルス帝国の将軍2人を討ち取っているから」


 そう言えば、そんなこともあったような……いや、あったな! すっかり忘れてたよ。

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