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第106話 パスタ

 モイライ商会で販売するための商品を作っていると、ドワーフの姉妹、リュングとロヴンがやって来た。


 ちなみに現在、モイライ商会ではタオルとバスタオルが飛ぶように売れている。パーティーに来た貴族たちの宿泊先に置いておいたところ、それを使用した貴族たちが気に入ったようで、パーティー後から飛ぶように売れているとのことだ。


「「エドワード様! 例の物が完成しました!」」

「本当に! 見に行くよ、2人の工房の方かな?」

「「すでに厨房に運んであります!」」


 用意がいいというか、料理用って言ってないと思うんだけどね。2人を連れて厨房に行くと、ロブジョンさんたち料理人はリュングとロヴン、2人の作った器具を見ていた。


「おぉ凄い! イメージ通りの形に仕上がっているね!」


「もちろんです! エドワード様の設計図を基に試行錯誤して作りましたから、完璧ですよ」


「エドワード様が出した金属の棒があったから作れた。さすがにあれがないと無理だった」


「お姉ちゃん、バラさないでよ!」



 相変わらず双子の姉妹は仲が良いな。


 2人に今回作ってもらったのはパスタマシーンだ。薄く伸ばすローラーと麺をカットするローラーがついていて、手回しでパスタを作るタイプのものと、円筒に生地を入れて押し出すタイプの2種類だ。


「エドワード様、これは何を作る器具でしょうか?」


 興味津々のロブジョンさんが質問してくる。


「これは麺を作る器具です」

「麺ですか?」

「実験もかねて、早速作ってみましょう」


 材料は強力粉と呼ばれる小麦粉なんだが、普通の小麦との違いはグルテンの含有量だ。


 パスタの本場イタリアではデュラムセモリナと言う小麦を使ってパスタを作ったりするのだが、イタリア語でデュラムは小麦の種類、セモリナとは粗挽き粉のことを指す。


 つまり、デュラムセモリナとはデュラム小麦を粗挽きにしたものと言うことになる。パスタが黄色いのは、このデュラム小麦が黄色いためだったりするそうだ。



 ボウルの中に強力粉、水、オリーブオイル、塩を入れてかき混ぜて、まとまるまで捏ねる。


 ある程度まとまったら、作業台で滑らかになるまで力を入れて捏ね、生地が滑らかになったら丸くまとめボウルの中へ戻し、乾燥しないように寝かす。


 ここであることを思い出す。そう言えば、新しいものを作ったら父様に知らせるように言われているんだった。


「ジョセフィーナ。今捏ねたやつを少し寝かせなければならないから、その間に父様たちへ知らせてもらえるかな?」

「畏まりました」


 ジョセフィーナが父様へ知らせに行く。

 

「父様たちが来るまでの間に器具の使い方の説明をするね」

「畏まりました」

「リュングとロヴンの2人に作ってもらった器具は2種類あって、1つ目はこれね」


 直径6センチ、長さ12センチぐらいのステンレスで出来た円筒の横に持ちてがついていて、円筒の片側にはネジのついたハンドル、反対側には1.5ミリの丸い穴がたくさん空いている。


 構造を見ただけでロブジョンさんは分かったようだ。

 


「なるほど、先ほど捏ねた小麦をその円筒に入れて、ネジを回すとプレスされて反対側の小さな穴から出てくる仕組みですな」


「さすがロブジョン、飲み込みが早いね。小さな穴は、1.5ミリとしてありますが、サイズや形を変えることで、色々な形状のものを作ることが出来ます」


「味付けによって太さや形状を変えるだけでも、感じ方が変わってくるということですな。奥が深そうですね」


 もう1つの器具は、ローラーと溝を切った棒がついた一般的なパスタマシン。


「もう1つはまず捏ねた生地をこのローラーにいれて均一の厚さに伸ばします。ローラーの距離を徐々に変えることにより、圧縮して薄く伸ばすことが可能です。伸ばした後はこの溝のついたカッターに入れることにより、細くカットすることが出来ます」


「ローラーで挟むことにより、弾力のあるものが作れるのですな?」


「その通りです。カッターの幅は2ミリと4ミリの2種類ありますが、薄く伸ばしたものを包丁でカットしたりすることにより、色々な形を作ることも出来ます」


「なるほど、均一の生地をどうするかは料理人の腕次第ということですな。こちらも奥が深いですな」



 ロブジョンさんたちと、器具についてやパスタの味付けについて話をしていると、父様たちがやってきた。



「エドワード、また変わった物を作ったんだって?」


「この間のクロウェイク(ハンバーグ)も良かったが、また新しいものを作ったのかい?」


 父様とおばあ様が聞いてくる。おばあ様が言ったクロウェイク(ハンバーグ)だが。僕がロブジョンさんに名付けを振った結果、ハンバーグを気に入ったおばあ様の名前の『クロエ』と、この城であり町の名前の『ローダウェイク』を混ぜて『クロウェイク』という名前で決定した。最初僕の名前を使った『エドウェイク』になりかけたので、それを阻止できただけでも良かったと思う。



「パンや、麦に代わる主食となりそうなものですね」


「それはおもしろいね。主食になりそうだと言うことは保存も聞くのかい?」


「はい、作ったものを乾燥させれば保存する事ができて、お湯で戻すことが可能です」


「なるほど、それは楽しみだね。作ってもらえるのかな?」


「ええ、本当は生地をもっと寝かせた方がいいのですが、今回はこのくらいでやってみましょう」



「それではこっちのローラーの方はロブジョンに手伝ってもらって、円筒の方は他の料理人でやってもらえるかな?」


「畏まりました。ピエール、頼んだぞ」

「お任せ下さい」



 彼はロブジョンさんの1番弟子で、パーティーの時のプリンアラモードなどいくつかは彼がメインで作ったとのことだ。


 生地をローラーで伸ばし、それを畳んでまた伸ばすのを繰り返し、その後薄く伸ばしてから、溝の入ったカッターでカットする。


 ピエールの方は生地を投入してネジを回して圧縮して行くだけなので簡単だ。どちらも生地を圧縮するのでそれなりに力が必要だ。


「なるほど、2つとも方法は違うが細長くするのは同じなんだね」


「細長いとフォークで巻き取ると食べやすい上に、様々な味と絡みやすいんです」


 ピエールの作った細麺のパスタはペペロンチーノにしていく。パスタを茹でている間、フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて弱火で火を入れてから、トウガラシを入れる。


 固めに茹でたパスタをフライパンに入れ、パスタのゆで汁を少し入れる。なじんだら塩コショウで味を調えて完成である。


 ロブジョンさんと作ったパスタは長方形の断面なので、カルボナーラがいいかな。


 まず、ベーコンを切り、パスタを茹でフライパンにバターを入れてベーコンを焼く。


 そこに茹でたパスタ、少量のゆで汁、コンソメ、チーズを加えてよく混ぜ合わせ、馴染んだら火から下ろして卵黄を加えてまた混ぜる。


 最後に、お皿に盛り付けて黒コショウを振りかければ完成だ。


 僕の手順通りに料理人たちも作り、みんなで試食してもらうことにした。2種類のパスタを少しずつ食べ比べてもらって、どちらが好みか楽しめるだろう。


「では完成したので食べて見てください」

『エディ! これは美味い! このモチモチした食感がたまらんぞ!』


 そう言えばヴァイスは好き嫌いないな。何を食べても美味いと言っているような気がする。


「これは美味しいね、どちらも美味しいけど、僕は丸い断面の方が好きだね」

「私は卵を絡めたやつの方が好きかしら」


 父様はペペロンチーノの方が好きみたいで、母様はカルボナーラがお気に召したようだ。


「これは十分主食としていけますな。何にでも合いそうです」


「エドワード様、これは乾燥させれば保存できると仰ってましたよね?」


「そうだね、具体的にどのくらいかは分からないけど大丈夫だよ」


 ロブジョンさんが答えて、エミリアさんが質問する……エミリアさんまでいたのか!


「これをモイライ商会で販売すれば大ヒット間違いなしですが……ハリー様、この食べ物はどういう扱いになりますか?」


「小麦はローダウェイクの主産業の1つだ。小麦を使ったこれはローダウェイクの名物にしたいところだね」


「ということは、売るだけではなく食べ方も広めなければなりませんね。レストランでも開きますか?」


「それは良い案だね。エドワードの作ったものを誰でも食べられるようにするのは良い案だよ」


「エドワード様、ハリー様の許可もいただいたので、レストラン開業の準備に取り掛かってもよろしいでしょうか?」


「大丈夫だけど、エミリアさんオーバーワークになってない?」


「商人ギルドで働いていた時と比べれば全然楽なもんです。全く問題ありません」


「ならいいのだけど」



 パスタが食べたかっただけなのだが、話が大きくなってしまった。


「それではハリー様、レストランの場所などの件の打ち合わせを致しましょう!」


「そうだね、レストランの料理人をどうするかも考えないといけないから、ロブジョンも来てもらえるかな?」


「畏まりました」


 そう言って3人は去って行った。


「エドワード様、この器具増やす必要がありそうですね」


 ロヴンが聞いてくる。


「本当だね、使い方は分かったと思うんだけど、どうだった?」

「まだまだ、改良の余地はある」


 リュングが答える。


「まだ改良できるの? 2人に任せるからお願いしてもいい?」

「勝手に改良してもいいんですか?」

「いいよ、2人に任せた方が良いものを作ってくれそうだし」

「こんな美味しいものが食べられるならもっと頑張るね! お姉ちゃん、行こう!」

「ん」


 2人も走って出て行った。


『エディよ(われ)はこれだけじゃ足りないのだ、もっと食べたいぞ』

「そう? じゃあ追加で作るね」


 この後、ヴァイスと、おばあ様が何回もお代わりしたのだ。


 余談だが、パスタを能力に登録できないか試したところ、断面の丸いパスタは登録できて長方形の断面は登録できなかった。


【能力】糸(Lv6)

【登録】麻、綿、毛、絹、パス(New)

【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、ピアノ線、マグネシウム、チタン、タングステン、炭化タングステン、銅、銀、金、白金、ミスリル

【特殊】元素、スライム▼、スパイダー▼、蔓、グラウプニル(使用不可)

【付与】毒▼、魔法▼

【素材】毛皮▼、ホーンラビットの角(47)、ダウン(32)、フェンリルの毛(36)

【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼

【登録製品】カタログ

【作成可能色】CMYK

【解析中】無


 円筒形に押し出せば、他の麵類も行けそうだ。

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