第1話 プロローグ
朝日を感じて目を覚ました。起き上がると、そこは知らないところだった。
「ここはどこだ……」
辺りを見回してみるとベッドが複数並んでいる。どうやら医務室のようなところに寝かされているようだ。
「なんでこんな所で寝ていたんだ……」
なぜ医務室で寝かされていたのか思い出せない。怪我でもしたのかと体を見てみる、怪我もなければ痛みもないが体が縮んだ!? まるで子供の手脚だ。そもそも俺って何歳だっけ?
何があったのかを思い出そうと考え込んでいると、部屋の外から話し声が聞こえてくる。その話声はだんだん近づいてきて、3人の少年と1人の少女が入ってきた。その中の青髪の少女が話しかけてきた。
「エディ! 気が付いたのね心配したのよ、どこか痛むところはない?」
この部屋には俺しかいない。つまり俺に話しかけているようなので取りあえず返事を返す。
「大丈夫みたい……」
「よかった! 祝福の儀で突然頭を押さえて倒れるから、みんなびっくりしたんだよ」
俺の名前ってエディだっけ? それにこの少女は誰だ、全然名前を思い出せない。それに凄い青色の髪だけど、なんかのコスプレか?
今度は茶髪の目つきの悪い少年が話しかけてくる。
「気が付いたならよかった。エディ、お前が倒れている間に勝手に決めてしまって悪いんだが、結論から言うとお前とはパーティーを組めなくなった。お前の代わりに町長のところのユルゲンとパーティーを組むことにしたんだ。ユルゲンは、祝福の儀で火の魔術の才能を授かったんだぜ凄いだろ。彼と組めばパーティーとしてのバランスがお前よりいいからな」
茶髪の少年は俺にそう告げる。
パーティーって何のパーティーだ? それに今、魔術って言ったか? そういえばさっき祝福の儀とかも言っていたな……。
情報を整理していると、今度は大きな盾を持った茶髪の少年が話し出す。
「この盾、かっこいいでしょ! パーティー結成のお祝いに、ユルゲンのお父さんが僕の盾術の能力にあった装備をプレゼントしてくれたんだ。剣術を授かったアレンには剣を、水の魔術を授かったメアリーには、なんとヒールの魔術書まで買ってもらったんだぜ!」
「この剣もなかなかだろ。他の孤児院組では絶対に揃えられない装備だ。これもユルゲンのおかげだな」
「そうよね、水の魔術の能力を授かっても魔術書がないと魔術が使えないから、最初から魔術を覚えられるのは助かるわ」
なんだ、この興奮したやつら? よく見れば全員、日本人じゃないな。まだ喋らずに後ろでニヤニヤした赤みがかった茶色頭の少年がユルゲン、剣の少年がアレン、青髪の少女がメアリーということが分かったけど。盾の少年だけ、名前が出てこないので分からないし、思い出せない。
盾の少年について考えていると、メアリーが話しかけてきた。
「エディは生産職だから、冒険者は危険だし絶対無理だってアレンやユルゲンが言うのよ。だからエディは、危険なことはしないで能力のお裁縫を頑張ってね!」
今なんて言った? 俺の授かった能力ってお裁縫なのか!?
後ろでニヤニヤしていたユルゲンが口を開く。
「結果お前を追い出す形になってしまって申し訳ないが、生産職が冒険者になったところで足を引っ張ったり死ぬのが落ちだから、お互いの為にもなるだろう?」
4人は交代で言いたいことを言うと去って行ったが、俺は自分の能力がお裁縫ということにショックを受けて、途中から彼らとの会話は一切頭に入ってこなかった。
1つだけハッキリしたことは、どうやら俺はパーティーを組む前に追放されたらしいということ。
「まるでラノベの追放ものだな……」
呟くと違和感に気が付く。
ラノベって何のことだ?
考えると明らかに自分のものではない、不思議な記憶があることに気がつく。その瞬間に自分の記憶とその記憶が混ざり合った。
そうだ! 祝福の儀で能力を授かった後、激痛に襲われたところまでは覚えている……そのあと倒れたのか?
「……僕って転生者だったのか――!」