君を見つけ出してみせる
ルーミ伯爵家の嫡男であるフェリクスは少し変わった青年だと言われている。輝く金髪に碧眼。世に言う美男子だが昔から誰かを探しているという。物心つく頃には使用人たちに「彼女がいない。僕は覚えているのに」とよくわからない事を言い困らせていた。
なんの為に自分が今こうして生きているのかはわからないが、フェリクスには前世の記憶があり前世の妻である「ミリア」を探していた。
いや、正しくはミリアの生まれ変わりを探していた。自分がこうして前世の記憶を持って生まれているのにはきっと意味がある。そして自分が生まれ変わったんだからきっとミリアも生まれ変わっているはず、とその強い気持ちだけでフェリクスは生きているのだった。
前世から自分の妻はミリアだけだった。側妃としてリリスを娶ってしまったが、あの時ほど自分に絶望した事はない。
フェリクスは何年たっても、死ぬ寸前でもミリアの生まれ変わりを諦めたくなかった。どうして彼女があんな死に方をしなければならなかったのか。もっとどうにかして彼女との時間を作ってもっと彼女をいたわって・・・
勉強の時間でも、食事の時間でも、今世の家族との時間ですらもフェリクスはミリアの事を考えない時はなかった。もちろん他の女性へ気持ちを向ける事などない。
さすがに20代も半ばになると父伯爵からこのままでは廃嫡し、傍系から跡継ぎを決めると伝えられたがフェリクスは変わらずミリアの生まれ変わりを探し続けた。それこそ、死ぬ間際まで。
「あらぁ~人間というものはいつも儚いねぇ~・・・ん?」
葬式に通りかかった魔女はつぶやいた。ふらりと外に出てみたがたまたま通ったら葬式とはついていない。だが魔女にはきになる事があった。弱いが魔術の痕跡が葬式の場所からしていた。
「入って確かめてみるか」
魔術の痕跡だけでは何の魔術なのか確認できない為、それとなく入り込んでみた。
「おや、あれは・・・」
献花するそぶりを見せて棺に近づくと、棺の中で指を組んで横たわるフェリクスの指にはまっている指輪を見て魔女は目をすがめた。間違いない。約束の指輪だ。でも見る限り対になっている指輪の気配がない。という事は対になっている指輪をつけたものが死んでいないか、死ぬ時に指輪をしていなかったかのどちらかだ。そう考えながら前者はありえないという事に魔女は気づく。なぜならその持ち主は200年ほど前に死んでいた事を思い出したからだ。
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