リリスのほほえみ
ジュリアンが目を覚ますとそこは客室の寝台の上だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
間抜けな声が出た。状況が理解できない。今の時間は?なぜ客間に?
答えがでない疑問だけが頭の中をぐるぐると回る。とにかく起き上がらなければと横に伸ばした手が何かに触れた。
そこにいたのは下着姿のリリスだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
さらに間抜けな声が出た。
「・・・・ん・・・あら、陛下。おはようございす」
リリスが見計らったかのように起きる。
「陛下、あの・・・・わたくし・・・嬉しかったです。その・・・陛下、ジュリアン様に抱いていただけるなど思いもしませんでしたわ。」
「抱い・・・・・・・え・・・・?」
「でもミリア様に悪いわ。もしミリア様より先に懐妊なんてしてしまったら・・・」
「懐・・・・?」
「昨日わたくしを側室にと言ってくださったのに嘘はございませんよね?わたくし今から家に戻って早速父と今後の打ち合わせを」
「側室・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
「え、嘘だったとでもおっしゃるのですか!?打ち合わせの際、誰もいないからと父のいる所でおっしゃったではありませんか!」
「そんなバカな・・・」
「酷いっ酷いわジュリアン様!」
「いや、ちょっ、待ってくれ」
「側室の事は父も聞いておりますのよ!?今更なかった事になんてできませんわ。わたくしだって陛下と一晩を共にしましたもの。妊娠の可能性だって否定できません。ジュリアン様には責任をとっていただきます。こちらの部屋にジュリアン様がいらっしゃる事だって城の皆が知っておりますわ」
「城の・・・・・・・・・・・皆が・・・・・・・・」
ジュリアンの顔から血の気が引いた。リリスが途中からジュリアンの許可なく名前で呼んでいたこともどうでもよかった。
城の皆が知っているという事はミリアにもその話が伝わっている事だ。急に浮上した側室の話。リリスが妊娠するかもしれない可能性。自分の立場。
わけのわからない恐怖が襲う。
「生誕祭でわたくしが側妃となった事はお話しくださいませ、ね」
こんなにも思い通りになる国王などいるのだろうか。よくも今まで無事でいられたものだ。頬をバラ色に染めながらリリスは高揚する気持ちを抑えられなかった。
ご覧いただき、本当にありがとうございます。