不思議なことが起こる街
執筆の意図
低予算の自主映画でミュージカルを!
現在、演劇の世界では、小さな劇団が小劇場で上演している演目にはミュージカル仕立ての作品があり、歌、ダンスが有能な役者が数多くいるのにも関わらず、低予算の自主映画において、ミュージカル映画は、余り聞いたことがありません。なので、一度、挑戦しょううと思い執筆しました。
脚本について
この脚本は、数年前、余命宣告を受けていた、とある少女が、病床でブログに書いていた小説に私がインスピレーションを受けて書いたものです。
これを書くにあたって彼女に使用の許可をお願いした時は、大変喜んでくれて完成を楽しみしてくれていましたが、完成を待たずに彼女は亡くなってしまいました。お父様は、お通夜でこの脚本を彼女に読んで聞かせて頂いたとのことでした。この脚本は彼女には妹さんがおられるとの事でしたので、主人公を妹として、それを天国から見守る姉と言った構成にして「天国へ行っても心は永遠に家族や恋人と一緒だよ」と言うことをテーマにしました。
ここでの登場人物
平尾心音 (ここね 愛称ココ 20)
歌手を夢見ている和菓子屋の
事務員
川島智弘(25)元ミュージシャン
平尾早百合(さゆり 17)
心音の姉
ピアニストを夢見ている女子高生
87 先斗町通り 夜
心音 智弘 歩いている
心音 「私の顔 知ったはったんですか?」
88 鴨川の土手 二年前 朝
智弘 早百合 並んで座っている
早百合 智弘にスマホを見せて
早百合「これが 私の妹です」
智弘 「(スマホを見て)へー なかなか
可愛いね」
早百合「妹はお父さん似で 私はお母さん
似なんです それに 性格も真逆
なんですよ」
智弘 「真逆って?」
早百合「それは 妹とおおたら分かります」
智弘 「そうなんだ 会うの楽しみだな」
早百合 微笑む
89 三条大橋の上 夜
心音 智弘 欄干から鴨川を眺めている
智弘 「君に会って 彼女が 言った意味
が わかりました」
心音 「それ どうゆう意味ですか!?
(ふくれる)」
智弘 微笑んで 暫く沈黙
智弘 「彼女から ご両親 亡くなったって
聞いてたけど・・・」
心音 「(うなずいて)私らが小学生の時
結婚記念日にうちらおばちゃんの
家に預けてドライブに そこで
飲酒運転してたトラックと正面衝
突・・・」
智弘 「そ そうだったの・・・」
心音 「それから 私達 そのおばちゃんに
引き取られて・・・」
90 回想 心音の団地の階段
心音 早百合 ランドセルを背負って階段を
勢いよく降りて来て手をつないで歩いて行く
91 三条大橋の上 夜
心音 智弘 欄干から鴨川を眺めている
智弘 「封筒の中に お品書き 入っていて
たでしょ?」
心音 「その お陰で あの時 応募してた
映画の主題曲 おじゃんになりまし
たし! まあ それの方が良かった
かもしれませんけど」
智弘 「えっ?」
心音 「その居酒屋 調べて 直ぐ 行ったん
ですよ! でも もう辞めてしもて
いやらへんかったし! 電話かけても
出てくれませんでしたよね! それに
アパートにまで行ったんですよ!」
智弘 「あの電話 君だったの・・・ 実は
あの日 君が コンビニから出て行っ
た後 昔 東京で揉めていたヤクザと
出くわしちゃって・・・」
心音 「・・・」
智弘 「京都に来る前 付き合っていた女が
実は ヤクザの女で その慰謝料の
ことで・・ 勿論 あの時の僕には
払うお金もないし また 身を隠す
はめになったんです・・・ごめんな
さい・・・」
心音 「身から出た錆・・・(と 微笑む)」
智弘 微笑んで 二人 街を眺める
心音 「で そのお金は 今は どないなって
るんですか?」
智弘 「あの曲を聴いた大阪の音楽事務所の
社長さんが 僕に声を掛けて来て
肩代わりしてくれたんです その代
わり 今 僕は ただ働きなんで
す」
心音 「智弘さん 誰かに 守られてま
すね」
智弘 「誰かって?」
92 鴨川の土手 夜
カップルが等間隔で座っている
心音 智弘 歩いる
智弘 「で いろいろと考えたんだけ
ど・・・」
心音 「札束?」
智弘 「えっ?」
心音 「い いや こっちの話・・・」
暫く沈黙
智弘 「もし よかったら あの曲
僕と・・・ 僕と 一緒に
歌って頂けませんか?」
心音 「(驚いて)えっ!?」
智弘 「このことが世間にばれたら大変な
ことになります・・・」
心音 「・・・」
智弘 「僕はどうなってもいいけど 社長
やお世話になった人達に迷惑を
かけてしまいます」
心音 「・・・」
智弘 「お願いです これで・・・これで
早百合さんの夢を叶えたいです」
智弘 歌い出す 夢の始まりをイメージ
した曲
心音 歌い出す
座っていたカップル達 踊り出す
音楽 終わって
心音 「わかりました 私 歌いま
す!」
智弘 「えっ!?」
心音 「一緒に歌いましょ! あの曲
もっと もっと 日本中 う
ううん世界中の人に届けましょ!」
智弘 「あ ありがとう・・・」
心音 笑顔で うななずく
93 回想 駅のホーム(叡電又は嵐電)
心音の卒業式の帰り
心音 幽霊の早百合(制服)ベンチに
座って電車を待っている
早百合「なぁ ココちゃん あんた
ほんまに歌手になりたいの?」
心音 「う うん!」
早百合「でも 歌手って 大変やでぇー
頑張れるかぁー?」
心音 「頑張れるって! 私から歌とった
ら 私 生きてる意味ないもん!」
早百合 微笑む
桜の花びらがひらひらと2人に落ちる
94 四条大橋の上 夜
心音 智弘 キラキラと輝く京都の街を
眺めている
心音 「この街って・・・ 時々 不思議
なことが 起こるんですよ」
つづく