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脚本 Lily  作者: 日尾昌之
7/13

夢は天国へ

執筆の意図


低予算の自主映画でミュージカルを!


現在、演劇の世界では、小さな劇団が小劇場で上演している演目にはミュージカル仕立ての作品があり、歌、ダンスが有能な役者が数多くいるのにも関わらず、低予算の自主映画において、ミュージカル映画は、余り聞いたことがありません。なので、一度、挑戦しょううと思い執筆しました。




脚本について


この脚本は、数年前、余命宣告を受けていた、とある少女が、病床でブログに書いていた小説に私がインスピレーションを受けて書いたものです。

これを書くにあたって彼女に使用の許可をお願いした時は、大変喜んでくれて完成を楽しみしてくれていましたが、完成を待たずに彼女は亡くなってしまいました。お父様は、お通夜でこの脚本を彼女に読んで聞かせて頂いたとのことでした。この脚本は彼女には妹さんがおられるとの事でしたので、主人公を妹として、それを天国から見守る姉と言った構成にして「天国へ行っても心は永遠に家族や恋人と一緒だよ」と言うことをテーマにしました。

ここでの登場人物


平尾心音 (ここね 愛称ココ 20)

     歌手を夢見ている和菓子屋の

     事務員 


川島智弘(25)元ミュージシャン


平尾早百合(さゆり 17)

      心音の姉  

      ピアニストを夢見ている女子高生


由美子 (50~60代)心音の叔母


リカコ (16) 心音の親友


医師  (50代)


先生  (30~40代) 

     心音の高校の担任教師


沙也加 (20代)智弘の恋人

         祇園のホステス




59 心音の家(団地又はアパート)の洗面所 

   二年前 朝

   鏡に 早百合 心音 並んで歯を磨いて姿が

   映っている

  心音 「(早百合を見て)お姉ちゃん 口から

      血が出てる!」

  早百合「えっ!?」

   早百合 手で口を拭くと手に血が付いている

  心音 「強よ 磨き過ぎなんとちゃう?」

  早百合「う うん・・・」

  心音 「それに 顔色も悪いし」

   鏡に映った早百合の青白い顔

   早百合 口をゆすいで吐き出す

   排水口に血が流れる


60 心音の家(団地又はアパート)の駐輪場

    心音(制服) 走って来て

   心音 「遅刻! 遅刻!(後ろから

       来ている早百合に)お姉ちゃん

       早よ! 早よ!」

    心音(制服)自転車に乗ろうとする

    後ろにいた早百合(制服) 突然 倒れ

    て 並んでいる自転車が将棋倒しになる

   心音 「(驚いて)お お姉ちゃん!」

    救急車のサイレンの音


61 木屋町通り 現代 夜

    心音 智弘 賑やかなネオン街を歩いて

       いる 

   心音 「急性リンパ性白血病でした」

    智弘 驚いて心音を見る

   心音 「もう その時は ステージ3で 

      直ぐに 入院 それから 辛い抗

      がん剤治療が始まりました」

   智弘 「・・・」


62 病室 二年前

    鏡に早百合が髪の毛をとく姿が映っている

    ブラシに大量の髪の毛が付く

  

63 病院のトイレ

    早百合 激しく嘔吐している


64 ベットの上の早百合の苦しそうな顔 


65 病院の診察室 

   心音(声)「それから三ヶ月が経った

        頃・・・」

    心音 由美子 医師から話を聞いている

   医師 「早百合さんなんですが・・・若いので

       非常に病気が早く進行しています 

       これ以上 辛い抗がん剤治療しても 

       ご本人がお苦しみなるだけかと・・・」

   由美子「もし 治療を止めてしもたら どうなる

       んですか?」

   医師 「長くて余命は 後 半年かと ホスピ

      スを ご検討されたら いかがでしょう

      か」

   心音 「何で・・・ 何で・・・ そんなん

      嘘です! 嘘 ゆわんといて下さい! 

      嘘や! 嘘や! 嘘! 嘘!」

   由美子「ココちゃん!」

   心音 「(泣きながら)嘘や! そんなん嘘や・・

       おばちゃん・・・おばちゃーん!

      (と泣いて由美子に抱きつく)」

    由美子 心音を抱き締める


66 病室 

   心音(声)「そして あくる年の祇園祭の宵山」

    早百合 ベッドに寝ている(頭にニット帽を

        被っている)」

    心音 横に座っている

    ベットの横の机の上には 花瓶に差した一本

    の白いユリの花

    心音 スマホを見て

   心音 「ヤッバ! もうこんな時間! そやっ

       たら バイトあるし帰るわぁー 

       今日 宵山やし 早よ 出勤せんと

       あかんねん!(と 立つ)」

   早百合「(か弱い声で)宵山か・・・」

   心音 「元気になったら また 行こ?」

    早百合 微笑む

   心音 「明日 家から何か持って来るもん

       ある?」

   早百合「(か弱い声で)楽譜 持って来て

       ほしい・・・」

   心音 「楽譜? あー あの曲の!」

   早百合「(か弱い声で)う うん・・・」

   心音 「それ どこにあるん?」

  早 百合「(か弱い声で)私の机の上から

       2番目の引き出しの中 茶色の

       封筒に入ってるし」

  心音 「わかった!(と 出て行こうと

      する)」

  早百合「(か弱い声で)私って・・・」

   心音 振り返る

  早百合「(か弱い声で)私って・・・ 

      名前に早いって付くし 早よ

      死んでしもうのかな?」

  心音 「アホ! 変な事言わんといて

     えな! お姉ちゃん 絶対 死な

     へんし!」

   早百合 微笑む 

  心音 「ほな また明日!(と 慌てて

      出て行く)」

   早百合 か弱い声で主題曲Lilyをハミング

       しながら目を閉じる


67 鴨川の土手 二年前 朝 

    人々が行き交っている

    遠くで祇園ばやしが鳴っている

   智弘 ギターを抱えて座り込んで

      弾いていて ふと振り返る

   誰もいない


68 高校の教室 二年前 昼休み

   心音(声)「でも 突然 その日は やって

         来ました」

    心音 リカコ(制服) 楽しそうに

    お弁当を食べている

    先生 ドアから顔を出して

   先生 「平尾? ちょっと・・・」

   心音 「(振り返って)はい・・・

     (と リカコの顔を見て 首を

      傾げる)」

   リカコも首を傾げる

   心音 先生の傍に行って 先生 心音に

   何かを話している


69 高校の階段 

    心音 慌てて駆け下りる


70 高校の校門 

    心音 慌ててタクシーに乗る


71 タクシーの車内

    心音 後部座席の窓から鴨川の

       土手を眺めている


72 回想 病院の玄関 

   タクシー 玄関に滑り込んで心音飛び

        出てる


73 病院の長い廊下 

    心音 走る(手に茶封筒を持ってる)


74 鴨川の土手 

    智弘のギター 突然 弦が切れる


75 病室 

    心音 勢いよく入って来る(手に茶色の

       封筒を持っている)

    由美子ベットの横に立って泣いている

    心音 ゆっくりとベットに近づいて行く

   心音 「(ベットに寝ている早百合を見て)

       お お姉ちゃん? お姉ちゃん? 

       お姉ちゃんって! 何でまだ寝て

       んの!? 起きや! 朝やで!

       (早百合の身体を揺さぶって)

       お姉ちゃんって! 早よ学校行くで! 

       また遅刻やで! もう起きや! 

       もう起きや!(と 何度も早百合の

       身体を揺さぶる)」

    早百合 動かない

   心音 「お姉ちゃんって! お姉ちゃんって! 

       朝やで・・・ 学校行くで・・

       早よ・・・ 起きや・・・ 楽譜 

       持って来たげたで! 早よ 起き

       や・・・わぁーーーー(と 泣き

       崩れる)」

    机の上に置かれた花瓶にさされた一本の白い

    ユリの花


76 木屋町通りの高瀬川に架かる橋の上 現代 夜     

    心音 智弘 水面を見つめている

   智弘 「(目に涙を溜めて)そう だったん

       だ・・・」

    心音 目に涙を溜めて うなずく

   智弘 「お名前 早百合さんって言ったんで

       すね」

   心音 「知らなかったんですか?」

   智弘 「はい・・・」

   心音 「早いユリって 書いて早百合 両親が

       好きやった 花の名前・・」

   智弘 「・・・」

   心音 「余命半年・・・ でも 姉は それ

      から 八か月生きてました きっと 

      また 智弘さんに 会う事と 私に

      あの曲を歌わせる為に 必死に 生き

      ようとしてたんやと思います・・・」

    智弘 頬から涙が落ちる

    心音 目に涙を溜めている


77 祇園の路地 二年前 夕方 

    智弘 沙也加 立っていて沙也加が智弘の

    頬を平手打ちして泣きながら走って行く

   智弘 「彼女がいなくなってから 暫く立って 

      付き合っいた彼女から 愛想をつかさ

      れて」


78 祇園 繩手 末吉町 夕方

   智弘(声)「気がついたら また 酒浸りの

        生活に戻っていました」

    智弘 歓楽街を 酒に酔って ふらふらと

       歩いている

   智弘(声)「そんな ある日」

    ホステス 白いユリの花束を持って歩いて

         来て 智弘とすれ違って 智弘 

         振り返る

  智弘(声)「そのユリの花を見た時 不思議なん

       ですが もう一度 音楽をやりたくな

       ったんです それには まず だらし

       ない生活を止めなくていけないと思っ

       て 何とか あの居酒屋に雇ってもら

       ったんです そして あの雨の日・・」

   主題曲Lilyインストルメンタルが流れる

 

79 雨の横断歩道 一年前

   音楽 被って

   心音 傘をささずに 茶封筒を抱えて立って

      いる


80 雨の歩道

    音楽 被って

    智弘 ビルの陰に隠れている

    ヤクザ風の男(A・B)走って行く

    智弘 ほっとして ふと 茶封の裏を見る

    茶封筒の裏にLilyと書いてある


81 木屋町通りの高瀬川に架かる橋の上 

    現代 夜  

    心音 智弘 水面を見つめている

   智弘 「まるで 奇跡が起こったようでした」


82 智弘の安アパート

    音楽 被って

    智弘 窓際で ギターを抱えて 楽譜を見ながら 

       弦を弾く

  智弘(声)「彼女と交わしたあの約束・・・」


83 祇園の仏像ギャラリーの二階 二年前

    音楽 被って

    ピアノの鍵盤の上に智弘と早百合の手が

    重ね合っている

    智弘 ふと早百合の横顔を見る

  智弘(声)「それを 果たせた時 また 人生を

        取り戻せる様な気がしたんです」


84 智弘の安アパート 一年前

   音楽 被って

   机の上の花瓶に差した一本の白いユリの花


85 白い紙

   音楽 被って

   智弘が持った鉛筆が Liliyの歌詞を書いて

   行く


86 木屋町通りの高瀬川に架かる橋の上 現代 夜     

    心音 智弘 水面を見つめている  

   心音 「もしかして Lilyって そこから?」

   智弘 「(うなずいて)でも 作ったのはいいけ

       ど これを どうやって 彼女に 

       届けたらいいのか・・・ それで

       思いついたのが 動画の投稿 あの曲

       が噂になれば きっと 君か早百合

       さんが 何か言って来ると・・・

       ずっと それを 信じて待ってたん

       です で この京都でのライブが最後

       の賭けだったんです きっと 来てく

       れると信じていました」

   心音 「それで アホな私は まんまと その

      作戦に引っかかったと言う事ですね

      (と 微笑む)」

    智弘 微笑んで うなずく

    心音 遠くを見つめる


    つづく 





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