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脚本 Lily  作者: 日尾昌之
6/13

最初で最後の失恋

執筆の意図

低予算の自主映画でミュージカルを!

現在、演劇の世界では、小さな劇団が小劇場で上演している演目にはミュージカル仕立ての作品があり、歌、ダンスが有能な役者が数多くいるのにも関わらず、低予算の自主映画において、ミュージカル映画は、余り聞いたことがありません。なので、一度、挑戦しょううと思い執筆しました。


脚本について

この脚本は、数年前、余命宣告を受けていた、とある少女が、病床でブログに書いていた小説に私がインスピレーションを受けて書いたものです。

これを書くにあたって彼女に使用の許可をお願いした時は、大変喜んでくれて完成を楽しみしてくれていましたが、完成を待たずに彼女は亡くなってしまいました。お父様は、お通夜でこの脚本を彼女に読んで聞かせて頂いたとのことでした。この脚本は彼女には妹さんがおられるとの事でしたので、主人公を妹として、それを天国から見守る姉と言った構成にして「天国へ行っても心は永遠に家族や恋人と一緒だよ」と言うことをテーマにしました。

ここでの登場人物


平尾心音 (ここね 愛称ココ 20)

     歌手を夢見ている和菓子屋の

     事務員 


川島智弘(25)元ミュージシャン


平尾早百合(さゆり 17)

      心音の姉  

      ピアニストを夢見ている女子高生


坂本修 (26)智弘の友人

        祇園の仏像ギャラリーの店主


沙也加 (20代)智弘の恋人

         祇園のホステス




49 先斗町通りの公園 現代 夜

    心音 智弘 鴨川を眺めている

    

50 鴨川の土手 二年前 朝 

    智弘(ギターを抱えている)

    早百合 土手に座っている

        (後ろに自転車が止めてある

        自転車のカゴに白いユリの

        花束)

   早百合「おめでとうございます・・・」

   智弘 「えっ?」

   早百合「また 子供さんが出来たと

       か・・・」

   智弘 「(驚いて)子供!?」

    早百合 うなずく 

   智弘 「あー あれ? あれは 今 

       付き合ってる彼女の口癖」

    早百合 驚いて 智弘の顔を見る

   智弘 「ところで 君 今 彼氏いるの?」

   早百合「(赤い顔をして)いたら 日曜の

       朝 こんなとこにいないです!」

   智弘 「だね」

    二人 暫く鴨川の水面を眺める

   早百合「ところで 智弘さんは プロの

       ミュージシャンですか?」

   智弘 「(微笑んで)昔はね」

   早百合「昔?」

   智弘 「そう 遠い昔」

   早百合「じぁあ 今は?」

   智弘 「悪党」

   早百合「悪党・・・」

   智弘 「ピアノは いつから?」

   早百合「小学校の低学年の頃からです 

       ちょうど引っ越した家にピア

       ノが置いてあったんです 

       それで・・・ 智弘さんは 

       ピアノは弾けますか?」

   智弘 「いいや ピアノは弾けない 

       弾けるのはギターだけ」

   早百合「ふーん」

   智弘 「聞いてなかったけど あの曲の

       タイトルは?」

   早百合「それが まだ 付けてないんです」

   智弘 「そう・・・」 

    二人 鴨川を眺める

   

51 祇園の仏像ギャラリーの二階 

    和室の隅に 小さなピアノが置いてある

    智弘(白いユリの花束を抱えている)修

    立っている

    早百合 ピアノの前に座っている

   修  「(早百合に)紅茶でも飲みます?」

   早百合「あ ありがとうございます・・・」

   修  「昨日 珍しいの買って来たんですよ」

    修 降りて行く

   早百合「智弘さん! ちょっと ちょっと!」

    智弘 不思議そうな顔をして舞の横に立つ

   早百合「(立って)座って下さい」

   智弘 「えっ?」

   早百合「座って下さい!」

   智弘 「う うん・・・(と ピアノの前に

       座る)」

    早百合 カバンからA4の茶封筒を出して中

        から楽譜を取り出して

    楽譜を楽譜立てに立てる

   早百合「鍵盤の上に両手を置いて下さい」

   智弘 「えっ?」

   早百合「置いて下さい!」

   智弘 うなずいて鍵盤の上に両手を置く

   早百合 智弘の手の上に自分の手を 重ねて 

       ゆっくりと主題曲Lilyを弾く

   早百合「どうですか? ピアノも なかなか

       いいもんでしょ?」

    智弘 うなずく

    早百合 微笑む

   智弘 「タイトル つけていい?」

   早百合 「えっ!?」

    と 早百合 ふらっと倒れかかる

    智弘 驚いて 早百合を支える

   智弘 「だ 大丈夫!?」

   早百合「あっ はい・・・ ありがとう

       ございます・・・(と 恥ずかし

       いしそうに 微笑む)」

  修 お盆にティーカップを乗せて階段を

    上って来て 二人を見て 微笑む

  


52 鴨川の土手 

    智弘 一人で弾き語っている

    早百合 自転車にまたがって智弘を見て

        微笑む

    ×   ×

    早百合 智弘 並んで座っている

   智弘 「夢は 何?」

   早百合「ピアニストって 言いたいですけど 

       家 貧乏なんで 夢なんて見てられ

       ません」

   智弘 「若いんだから 夢ぐらい見ないと!」 

   早百合「夢は寝て見ます」

   智弘 「そうだ! こんなのどう?」

   早百合「えっ?」

   智弘 「あの曲に歌詞をつけて 誰かに

       歌ってもらって 作曲家デビュー

       って!」

   早百合「それ いいですね! それなら 

       もう 歌ってもらう人は決まっ

       てます!」

   智弘 「へー 誰?」

   早百合「妹!」

   智弘 「妹?」

   早百合「はい! 私には 二つ違いの妹が

       いるんですけど 妹 すっごく歌が

       上手いんです!」

   智弘 「そうなんだ じぁあ あの曲を妹さんに

       歌ってもらう事を これからの夢にしょ

       う!」

   早百合「はい!」

    智弘 うなずく

   早百合「夢は 見た人にしか叶わないって 

       何かの本に書いてありました 

       叶うかな?」

   智弘 「ちょっと あの曲の楽譜 見せて

       くれる?」

    早百合 うなずいて カバンから茶封筒を

        出して楽譜を取り出して 智弘に 

        差し出す

    智弘 受け取って 楽譜を見る

   智弘 「ユリって 英語で 何て言ったけ?」

    早百合 カバンからペンを出して 茶封筒の

        裏にLilyと書く

   智弘 「リ リリーって 読むのかな?」

    早百合 立って ゆらふらと自転車のカゴの

        ユリの花束から一本のユリの花を抜

        いて戻って来て 智弘に ユリの花

        を差し出して

   早百合「はい!」

   智弘 「(驚いて)俺に?」

    早百合 うなずいく

   智弘 「(受け取って)ありがとう・・・」

   早百合「ユリの花言葉って知ってます?」

    智弘 顔を横に振る

   早百合「ピュア 純粋・・・」

   智弘 「へー 君 みたいだね」

   早百合「(顔を赤くして)智弘さんも・・・」

   智弘 「俺が 純粋に見える?」

   早百合「(うなずいて)見えます 私には・・・

       修さんに聞きました」

   智弘 「何を?」

   早百合「昔 ホームレスみたいなかっこして

      仏像 見てたって」

   智弘 「あいつ!」

   早百合「仏像 見る人の心の中は 純粋やと

      思います」

    智弘 微笑む

    二人 暫く 鴨川の水面を見つめる

    智弘 ふと 振り返ると 沙也加が

       立っている

    早百合も振り返る

   智弘 「(早百合に)ごめん(と 立って 

      沙也加の方に行く)」

   智弘 沙也加 暫く話していて 

   沙也加が泣く

   智弘 沙也加を軽く抱きしめる

   早百合 それを見つめて 自転車にまたがる

   早百合 歌う(揺れる心をイメージした歌)


53 鴨川の土手 

    早百合 自転車をこぎながら歌う


54 祇園の町家街 

    早百合 自転車をこぎながら歌う


55 知恩院の近くの白川沿いの道

    早百合 自転車をこぎながら歌う

 

56 平安神宮の大鳥居 

    早百合 自転車をこぎながら歌う

 

57 鴨川の土手 

    智弘 手に持ったユリの花を見つめている 

   智弘(声)「これが 彼女と会った最後の日

         になりました」


58 先斗町通りの公園 現代 夜

    心音 智弘 鴨川を眺めている

    心音の目に涙が溜まっている

   心音 「お姉ちゃん あなたの事を 好き

       やったかも」

    智弘 驚いて 心音を見る

   心音 「初恋・・・ お姉ちゃん ピアノと

       勉強ばっかりしてたから 男の子と

       付き合った事が なかったんです」 

   智弘 「・・・」

   心音 「そして それが 最初で最後の

       失恋・・・」

   智弘 「それ どう言う意味?」

   心音 「その頃 もう 姉は 病気だったん

       です・・・」

   智弘 「(驚いて)病気?」

   

   つづく


  

      


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