こいつや!
執筆の意図
低予算の自主映画でミュージカルを!
現在、演劇の世界では、小さな劇団が小劇場で上演している演目にはミュージカル仕立ての作品があり、歌、ダンスが有能な役者が数多くいるのにも関わらず、低予算の自主映画において、ミュージカル映画は、余り聞いたことがありません。なので、一度、挑戦しょううと思い執筆しました。
脚本について
この脚本は、数年前、余命宣告を受けていた、とある少女が、病床でブログに書いていた小説に私がインスピレーションを受けて書いたものです。
これを書くにあたって彼女に使用の許可をお願いした時は、大変喜んでくれて完成を楽しみしてくれていましたが、完成を待たずに彼女は亡くなってしまいました。お父様は、お通夜でこの脚本を彼女に読んで聞かせて頂いたとのことでした。この脚本は彼女には妹さんがおられるとの事でしたので、主人公を妹として、それを天国から見守る姉と言った構成にして「天国へ行っても心は永遠に家族や恋人と一緒だよ」と言うことをテーマにしました。
ここでの登場人物
平尾心音 (ここね 愛称ココ 20)
歌手を夢見ている和菓子屋の
事務員
川島智弘(アーティスト名 トモ 25)
元ミュージシャン
ラジオパーソナリティー 女(20~30代)
居酒屋 縁屋の店主 男(40~50代)
和菓子屋の社員 男(20代)
23 木屋町通り 数日後 夕方
心音 スマホを見たりしてキョロ
キョロして歩いている
24 居酒屋縁屋の看板
25 居酒屋縁屋の店内
開店前で客はいない
心音 入って来て
心音 「こんにちは」
返事が無い
心音 「(少し大きな声で)こんにちは」
返事が無い
心音 「(大きな声で)こんにちは!」
と 心音の背後にいた店主が
店主 「いらっしゃい!」
心音 驚いて振り返る
店主 「すんまへん まだ 準備中なんやわ」
心音 「いいえ ちょっと お聞きしたいこと
が・・・」
店主 「聞きたいこと?」
心音 「はい ここに まあまあ背が高こーて
顎髭生やした ぱっと見た感じ 30
前後の男の人 働いていませんか?」
店主 「30前後で 顎髭・・・ あー それ
やったら こないだまでバイトで来と
ったわ」
心音 「そ そうですか! その人 今日 来ま
すか?」
店主 「それがな こないだ そいつに お品書き
のコピー頼んだんやけどのな 出て行った
まま 帰ってきよらへんねん」
心音 「そ そうですか・・・」
店主 「で こっちは シフト入れ替えたりして
開店は遅れるし えらい損害やったんや
あいつ 何か訳ありの様やったさかい
警察ざたにならんかったらええんやけど
な」
心音 「で その人の名前なんか分かりますか?」
店主 「確か 川島・・・ 川島智弘って言うた
かな」
心音 「川島・・・ 智弘・・・ 住所と電話番
号は 分かりますか!」
店主 「お姉さん あいつに捨てられたんか?」
心音 「(怒って)そ そんなとちゃいます!」
26 木屋町通り 夕方
心音 耳にスマホを当てて歩いている
27 とある路地裏のアパートのドア
心音 呼び鈴を押すが応答がない
28 青葉が夏の強い日差しを浴びて輝いている
騒がしい蝉の声
29 和菓子屋の店先 1年後の夏 正午
騒がしい蝉の声
日傘をさした女が歩いている
30 和菓子屋の事務室 正午
心音 数人の社員 弁当を食べている
ラジオから パーソナリティーが 祇園
祭の話題等を話している
パーソナリティー(声)
「それでは 今日のゲストをご紹介します
今 話題のシンガーソングライター
トモさんです・・・」
心音 もくもくと弁当を食べている
と ラジオから智弘が歌う主題曲Lilyが
流れる
心音 無意識にハミングする
心音 「あれ? あれ? あれ?」
パーソナリティー(声)
「いつ聞いても素晴らしい曲ですね この
Lilyは 動画サイトに投稿されたとたん
凄い再生回数だったんですよね」
智弘(声)「あっ はい・・・ 僕もびっく
りしました・・・」
心音 ラジオに近づいて 座っている社員
(男)に
心音 「なあなあ? 今の曲 歌とてる人
誰?」
社員 「何や 知らんの?」
心音 うなずく
社員 「トモ(箸でつまんだ出し巻きを見て)
ここのお弁当屋さんの出し巻き美味し
いわぁー」
心音 「トモ・・・」
心音 慌てて席に戻ってパソコンで検索する
社員 出し巻きを 口に入れようとする
心音 「(大声で)こ こいつや!」
社員 驚いて 口に入れようとしていた出し
巻きを落とす
パソコンの画面 智弘のプロフィール写真
つづく