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セデクは愛しいメリヌを諦めざるを得なかった。己が欲望のために家名を辱めるなど、騎士である身に許されるはずもなかった。
まさに断腸の思いで、彼は馬上槍試合に赴いた。
だが勝利を重ねていくに連れ、徐々に戦闘に酔い痴れるようになった。
馬の荒背に揺れる感覚。
風を切って走る快感。
相手の板金鎧を突いたときの手応え。その衝撃で、自らの馬上槍が砕け散る音。
落馬する相手の、兜の隙間から覗く怯えた表情。
血。
見物客の歓声。
鍛え抜かれた肉体が、咆哮をあげる。
あれよという間に決勝まで勝ち進んだ。
その夜、ゴース王子がセデクの部屋を訪ねてきた。
ゴース王子は葡萄酒を呷ると、真っ赤な顔で告白した。
セデクは驚愕した。
王子は、母方の従妹ファテカを愛していたのだ。
セデクは驚くと同時に、この神が与えたもうた児戯を嘆いた。お互い、従妹を妻にできない苦しみにもがいていたとは。
再びメリヌへの慕情が燃え上がってきたセデクは、王子に一計を耳打ちした。