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西の島

 森の中に立っていたという表現は間違っているかもしれない。私たちは見知らぬ森の中に飛ばされたと言うのが正解だろう。アルとグレッグは木の側に倒れ、ヒラリーは尻餅をついていた。私はかろうじて立っていた。魔方陣による移動は学校の森で経験していたが、移動装置の移動は乱暴なようだ。しかし、これほど激しかったら移動装置を使う度に覚悟がいりそうだ。

「イタタタ、ここは何処?」

 ヒラリーが腰を押さえながら立ち上がった。

 アルとグレッグはキョロキョロと辺りを見回していた。

「何処かわからないな」

「城や学校裏の森ではないみたいですね。我が国にはこの種の木はありません」

 グレッグは冷静に森の木を見ている。

「あら、魔女。あんたが何故ここにいるのよ」

 辺りを見回していたヒラリーが驚いたように叫んだ。

 よく見ると、さっきドームの中で私たちを待ち伏せしていた魔女が木の下で伸びていた。

「おい、魔女。目を覚ませ」

 アルは魔女の頬を叩いた。

 ウッと唸り声をあげて魔女は目を覚ました。私たちを見ると驚いて2メートルほど飛び退いた。

「な、何だお前達は!ここは何処だ!私をどうする気だ!」

 私たちは騒ぐ魔女を取り囲んだ。

「俺たちも同じ事をお前に聞きたいんだけど」

 アルが魔女の顔を睨む。

 私たちに囲まれた魔女は、「チッ、魔力の加減を間違えたみたいだ」と小さく呟いた。

「なんだって!」

 アルが追求すると魔女はタジッと動きを止めた。魔女はアルから順に私たちの顔を見回して、「お前達を移動装置に放り込んだ後、装置を破壊した。だけど破壊の威力が強すぎたみたいだ。お前達につられて自分も移動させてしまったみたい・・・だ」と、最後の方は囁くように小さく呟いた。

「バカねぇ。自分も飛ばしちゃったなんて、あんたホントに魔女」

 ヒラリーが呆れたように言うと、魔女はキッとヒラリーを睨んで、「これでもライラ様の弟子だぞ。そんなドジをするはずないだろう。ちょっとした手違いがあっただけだ」と強がっていたが、心なしか手が震えているような気もする。

「ライラ様ってだれだ」アルが聞いた。

「私の師匠だ。私はライラ様の・・・番目の弟子だ」

 魔女の声はさっきよりも小さくなった。

「ん?何番目だって」

「何番目でもいいだろう!」

 魔女は叫ぶと私たちを睨んだ。

「睨んだって無駄よ。その体型で睨まれてもちっとも恐くないわ」と、ヒラリーは魔女を見て鼻で笑った。

 確かに2頭身の魔女は恐くなかった。絵本にあるようにかぎ鼻でしわしわのお婆さんだったら少しは迫力があったかもしれないが、化粧は濃いが思ったより間抜けに見えるその姿はちっとも恐くなかった。

 それを聞いて魔女は怪訝な顔をして自分の姿を見下ろした。

 自分の姿を確認して一瞬固まった。

「な、な、なんだこの姿は!」

 相当驚いたのだろう、さっき以上に飛び上がった。

「私は縮んだのか。お前達私に魔法をかけたのか」

 魔女らしくなくあたふたと2頭身の身体を触って確認していた。

「おい、魔女。驚くのは構わないが、ここは何処だ」

 慌てている魔女にアルが聞いた。魔女は私たちを見て堪忍したのか、力なく周りを見回した。

「多分、ドッテン島だと思う」

「ドッテン島?」

「大陸の西の端にある島だよ。移動装置に西の端と指定したから。しかしあの装置でこの距離を移動出来るとは思わなかった」

 魔女は立ち上がり、辺りを見回す振りをして私たちから少し離れた。

「この森の先に、カイと呼ばれる小さな集落があれば、間違いなくドッテン島だ」

 私たちが魔女の指さす方向に目を向けた隙に、魔女は何処からか箒を取り出し空中に逃げた。

「それじゃあ頑張って島を抜け出しな」

 上空から魔女の声が聞こえる。

 しまった!と空を見上げた時には魔女はもう消えていた。

「逃げられたか」

 悔しそうなアルの呟きが聞こえた。

「飛んで島から出られるのなら、私たちも飛びましょうよ」とヒラリーが言った。」

「ダメだ」アルは即答した。

 どうしてと首を傾げたヒラリーに、

「大陸の西の端には多くの島が点在していると聞いたことがある。まずこの場所が本当にドッテン島かどうかを確かめて、大陸までどのくらいの距離があるかを調べてからでないと動かない方がいいだろう」アルは真剣だ。

「そうね、私たち全員が飛べるというわけでもないし、距離が長いと途中で落ちる可能性もあるわね。それじゃあ私が上からこの島の様子を見てみるわ」

 ヒラリーは風魔法を使い空中に飛んだ。

 しばらくして降りてくるとヒラリーは言った。

「四方が海だから島なのは間違いないわ。右方向に集落が見えたわ」

「魔女が言ったカイという集落だろうか。もしそうなら、ここがドッテン島と言うのは本当のようだな」

「行ってみますか?」とグレッグ。

「行かないことには先に進めない。とにかく島民に会って、大陸に渡る方法を教えてもらおう」とアルが答えた。

 私たちは集落を目指して歩きはじめた。

 少し歩いたところで宝箱を見つけた。

「こんな所に宝箱があるわ」

 ヒラリーの指示で、私は宝箱を開けた。中には弓と矢が入っていた。

「弓と矢なんて誰が使うの?」

 ヒラリーの問に「分らないけど持っていこう」とアルは弓と矢を宝箱から取り出すと空間ポケットに入れた。

 そこから少し行った所でまた宝箱を見つけた。今度は木のボートとオールが入っていた。

「これは島脱出用のボートになるな」

 アルの呟きに「そうですね」とグレッグは頷いて、ボートとオールを空間ポケットに入れた。

「あとどのくらいで森を抜けられるかわかるか」

「そんなに距離はなかったように見えたけれど。どうして?」

「日が暮れる前にこの森を抜けた方がいいと思う」

「そうね。知らない所で野宿なんて嫌だわ」

 アルとヒラリーの話しを聞いていた私は、不穏な気配を感じた。気配の方へ目を向けると、一匹の熊のような動物が木々の間に見えた。熊はまだ私たちに気付いていないようだった。

 私は小声で「熊のような動物が一匹います」と囁いた。

「熊?魔獣じゃないのか」アルが私を見た。

「魔獣の気配はしません。野生の動物だと思います」

「とりあえず見つからないように移動しよう。見つかったときは戦うしかないな」

 アルの言葉に全員が頷いた。


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