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ゲームが消える!?

 着替えるため移動した部屋で、私はヒラリーに尋ねた。

「ヒラリー様、今日はどうされたのですか?」

「どうしたって、どういうこと?」

 ヒラリーは私を見た。

「先ほど、殿下に対して強く話されていたので、殿下との間に何かあったのかと思ったのですが」

 私は魔法使いのローブと杖について、ヒラリーがみんなと相談せずにサーシャリアに渡したことをアルに当たり前のように話したことを不思議に思っていた。

「ああ、そのことね」

 着替えの手を止めてヒラリーは言った。

「私がモブなのは知っているわね」

「はい、ヒラリー様はモブと言われてましたね」

「もしかしたら、私のゲームが消えるかもしれないわ」

「ヒラリー様のゲームが消えるのですか?」

「まだ消えてはいないけれど、最近の状況から、サーシャリアのゲームと殿下のゲームが主流になっているような気がするの」

「よく分りませんが・・・」

 ヒラリーが何を言おうとしているのか理解できない。

「さっきも言ったように、私のゲームで私はモブだったのよ。グレッグ様は私のゲームにもサーシャリア様のゲームにも攻略対象者として立派な登場人物だわ。だから消えることはないと思うけれど、私は消えても何の影響も与えないただのモブ参加者なのよ。だから、このままおとなしくしていると、消えてしまうかもしれないと思ったのよ。だから消されないように、私の存在を殿下にアピールしようと思ったの」

「アピールですか。でもそれだったら、私はヒラリー様のモブでゲームの中にも出て来ませんが・・・」

「あんたは今のゲームの中で宝箱を開けることが出来る。そして、宝箱の中にあんた専用の魔法具があるわ。と言うことは、名前は出てこないけどゲームの主要人物であることには間違いないわ」

「そんな事を言ったら、ヒラリー様も宝箱から空間ポケットを貰ったじゃないですか」

「空間ポケット。私もそう思っていたけれど、サーシャリア様に渡した魔法使いの杖とローブが私のポケットに入っていたのよ。もしかしたら、私が使っているポケットはサーシャリア様の物かもしれないと思ったら、私はいなくてもいいんじゃないかと恐くなったわ」

 あの魔法使いの杖とローブがヒラリーのポケットに入っていた。そういえば、私のポケットにはなかったような・・・ヒラリーが消える・・・背中に冷や汗が流れた。

「ヒラリー様の考えすぎではないですか」私は誤魔化すように言った。

「だといいんだけどね」

 ヒラリーは止めていた手を動かして、さっさと側近の制服を着てしまった。私も遅れないように慌てて用意を調えた。

 ヒラリーに何も言えないまま部屋を出た。

「思ったより時間が掛ったな」

 アルは出て来た私たちを見た。

「殿下、私はこのまま一緒に行動しても良かったでしょうか」

 ヒラリーは決心したように、真面目な顔になった。

「どういうことだ」

 ヒラリーの態度に違和感を感じたアルが尋ねた。

「さっきイルカに話していたのですが・・・私はこのゲームから降りるのが正解ではないかと思うのです」

「降りる。どうして」

「私が魔法使いの杖とローブをサーシャリア様に渡したと言いましたが・・・」

「そうだったな。事前に相談して貰えるかと思っていた」

「やはりそうですよね」

「何か事情があったのでしょう」

 やはり、ヒラリーの態度に違和感を感じたグレッグが優しくヒラリーに寄り添った。

「グレッグ様・・・」ヒラリーは力のない様子で、グレッグの腕を取った。

「いったいどうしたんだ」

 アルの問いかけに、ヒラリーらしくない小さな声で、

「私の空間ポケットは、私の物でないかもしれないんです」と呟くように言った。

「は?どういうことだ」

 アルもグレッグも訳がわからないとばかりにヒラリーを見た。

「あの魔法使いの杖もローブも私のポケットに入っていたのです。魔法使いでもない私のポケットに・・・だから、このポケットはもしかしたらサーシャリア様の物かもしれないと思いました」

「ヒラリーのポケットに入っていた?」

「そういえば、私のポケットにはありませんでした」とグレッグが思い出したように言った。

「共通部分に入っていたのではないのか」

 アルはみんなを見回した。

「いえ、私のポケットの共通部分にも入っていませんでした」

 私はポケットの中を思い出した。そうだ、魔法使いの杖もローブも入ってなかった。

「まさか、あの空間ポケットがヒラリーの物ではない」

 アルの驚いた声が部屋の中に響いた。

「もし、サーシャリア様の物だとしたら、私はこのグループに入っているのはおかしいと思うのです」ヒラリーは震える声で言った。

「そんな、おかしいじゃないか。君は言ってたじゃないか、この世界ってヒラリーのゲームでもあるって・・・」

 グレッグが戸惑った様子でヒラリーを見た。

「そうなんですけど、このままだと、私のゲームが消えてしまうのではないかと思うのです」

「どうしてそうなるんだ」

 アルが不思議な顔で尋ねた。

「だって、私のゲームで私はモブだったのです。モブなんて居ても居なくても問題ない存在ですわ」

「でも、名前はあるんだろう。名前があれば存在してると言うことだろう」とアルが言う。

「そう言われればそうですが、最近は私のゲームとはずいぶんと違ってきてます」

「ゲームが違ってきたからって、ヒラリーの存在が消えるとは思わないな」

 アルは思ったより冷静だ。

「考えて見ろよ。俺なんか、ヒラリーのゲームでもサーシャリアのゲームでも死んだ存在だぜ、でも、現実に生きている。第3のゲームの主人公かもしれないんだろう。変にややこしく考える必要はないんじゃないか」

 アルは良いことを言う。私もそう思う。

「そうですよ、ヒラリー様。モブとか関係なく私たちは生きているのです。消えるはずはありません。ポケットに杖とローブが入っていたのは、ヒラリー様がサーシャリア様に渡すのに適した人だったからじゃないですか」

「そうそう、深く考えるのは止めて、隣国の第2王子と第3王子に会いに行こうぜ」

 話しはここまでと言うように、アルは勢いよく席をたった。


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