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移動装置2

「どうしてサーシャリア様と一緒に行かないのですか?先に移動装置を発見されてしまうかもしれませんわ」

 ヒラリーは不満を隠さない。

 アルは移動装置に興味が無いのだろうか「発見させたらいいじゃないか」と他人事のようだ。

「何ですって!」

 ヒラリーは憤慨したようだ。

 グレッグはそんな2人をオロオロと見ている。アルもヒラリーもお互いに引かないところがあるからだろう。

「移動装置は北の塔だけではないだろう」

「それはそうだけど」

 サーチによれば城の地下にもある。

「もし、城にあるものが発見されたとしても、別荘の埋まってしまった洞窟の移動装置を使えるようにすれば良いだけのことだ。それに彼等と一緒に行動したくない。俺たちは戦闘が起こる度に身長が縮んでしまうからそれを説明するのも面倒だ」

「そう言われたら、そうね」ヒラリーはアルの説明に納得した。

 確かにアルと私が一緒にいると、戦闘時は身長が縮むし、1人ずつしか動けない。そんな状態を説明しろと言ったって、サーシャリアはゲームだと理解しているから良いけど、ゲームを知らないジョイール殿下に納得して貰えるとはとうてい思えない。

「ここで立ち止まっていたら不審に思われるよ。俺たちも北の塔に向かおう」

 話しは終わったばかりにアルは北の塔に向かって歩きはじめた。


 北の塔の前にはジョイール殿下達の他にも人が集まっていた。

 濃い紫と銀のマントを纏った人達が見える。

「魔法省の方々がいます。ハンターさんとアンジェラさんが見えます」

 私は見えた状況をアルに伝える。

「相変わらず目が良いな」

 まだ数百メートル先にある北の塔を見ている私にアルが言った。

「ホント、昔からあんたは目だけは良いわね。ここからだとマントは見えるけれど顔までは分らないわ」

 ヒラリーの顔を見るとスンとしている。内容ほどには褒めていないようだ。

「さて、魔法省はどうするのかな」

 アルの言葉に、「どうするとは?」と、グレッグとヒラリーが同時に聞いた。

「多分、サーシャリアはジョイールに移動装置の話しをしていないと思う。ただ魔女がどこから来たのかと考えた時、魔の山がある北の方角にある北の塔から調べるよう誘導したのだろう」

「そこで移動装置を発見したことにするのね」

「たぶんそうだろう」

「移動装置が見つかったらどうするのかな?」

 グレッグは不安そうだ。

「もし、移動装置があったとして、今回の聖女奪回作戦には、ジョイールの他に、もう一人の聖女の婚約者隣国の第三王子が参加することになっている。見つけた物が本当に移動装置だとしたら、第三王子には知られないようにするんじゃないかな」

「そうですね。隣国とは同盟を結んで友好的な関係ですが、次期国王になる王太子は好戦的な人ですからね。移動装置のことを知られるのは不味いと思われます。現在の王国間の均衡が壊れることもあり得ますからね」

 グレッグの眉間に皺が寄っている。

「隣国の王太子はそんなに好戦的なんですか?」

 ヒラリーも私も初めて聞く話しだ。

「我が国は別として、隣国と国境を交えている国とは何かと諍いを起こしていると聞いています」グレッグが補足して教えてくれた。

「確か隣国は魔法を使う人はあまりいなくて、武力が勝っていると聞いた事があるわ」とヒラリー。

「そうだね。だから第三王子の婚約者が聖女だと判明したときは、国を挙げて喜んだと聞いている。我が国としては聖女を国外に出すことに反対なんだけど、幼少期から決まっている婚約を聖女になったからと、こちらの都合で解消させるわけにもいかないし、まして相手は隣国の王族だからね。魔法省には頭の痛いことらしい」

「魔法省が?国にとってじゃないの?」

 ヒラリーの顔に疑問が浮かぶ。

「魔法省は魔法を使える者が国外に出るのをあまり良く思っていない。しかし、国王は聖女が5人もいるから1人くらいどうって事ないと思っているみたいだよ」

 世界を見ても魔法を使える者が少なくなってきている。貴重な魔法を国外に出したくないのはわかる。

「魔法は遺伝だからね。魔法省はこの婚姻で隣国に優秀な魔法の遺伝子がもたらされることに危惧しているみたいだよ」

「そう言われてみれば、この国でも魔法が使えるのは一部の貴族だけですものね。昔はもっと多くの者が魔法を使えたのでしょう」

 ヒラリーの問にアルとグレッグが頷いた。

「魔法が使える貴族同士が婚姻を結んでも確実に魔法が使える子供が生まれるとは限らない。遺伝のはずなのに魔法が使えない原因が分らないから困っている」

「魔法省は頭が痛いだろうね。我が国は魔法が多く残っているから、少しでも囲っておきたいんだろう」

 話しながら北の塔に近づく。

 ハンターがグレッグに気付いた。

「フェアルート殿下、グレッグも来たのか」

「北の塔を探索すると聞いたので私たちも手伝いに来ました」

 アルがハンターに言った。

「今から魔女がシールドに触れないで城の中に入ってきたのかを調べるんだ。人では足りてるから手伝いはいらないと思うよ」

 ハンターは丁寧に断った。

「ジョイールの婚約者が攫われたんだ。じっとしていることは出来ないよ」

 アルはもっともらしく反論をした。

「本当に人手は足りているからいいんだ。それに魔女を相手にしないといけないからとても危険なんだよ。ジョイール殿下も婚約者のために動いているみたいなんだけど、魔女は恐ろしいから出来れば近づいて欲しくないんだ」

 ハンターの言うことももっともだと思う。

 ハンターはグレッグにアルを近づけないようにと忠告していると、北の塔の中で動きがあったようだ。

 誰かが叫んでいる。

「変な装置を見つけたぞ」と聞こえる。

 ハンターはその声を聞き、私たちを置いて塔の中に入って行った。

「見つけたみたいですね」

 私は小声でアルに囁く。

「そのようだな。俺たちは一旦ここを離れるとしよう」

「見て行かないのですか?」

 アルが帰りかけたのをグレッグは呼び止めた。

「ここにいても、俺たちは邪魔者だ。後で会議があるだろうからその時に詳しく聞けるだろう」

 ここに残っても装置に近づける訳でもないし、ただ遠巻きに見ているだけなら、もう一つの装置の場所を特定した方がいいように思えた。

「もう一台を探しますか?」

 私の問に「今はいい」とアルが答えた。

 結局私たちはアルの執務室に戻ることにした。


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