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移動装置1

「面白い話しはあったか?」

 執務室のドアが開くなりアルの声が聞こえた。

「あると言えばあったと言うべきかしら」

 部屋に入りながらヒラリーが言う。

 グレッグがヒラリーをソファーに誘う。ヒラリーはグレッグにっこりと笑いかけて座った。

 まめまめしいグレッグの様子を見ていると、この二人の関係が見えてくる。ローレイル侯爵家に婿入りするグレッグは絶対尻に敷かれるタイプだ。しかし、グレッグはヒラリーの推しだし、グレッグに対してツンデレだから実際はそうはならないと思うが・・・ヒラリーの性格だとそうならないと断言は出来ない。

 二人を見てそんな事を考えているなんて、ヒラリーもグレッグも思いもしないだろうな。

「で、どんな話しをしたんだ」

 マイペースなアルが先を促した。

 ヒラリーはお茶を運んで来たメイドが出て行くのを待って、話し始めた。

「どうやって魔女がシールドで守られた城の中に入って来られたのか。それについてサーシャリア様と話していたとき、過去に『移動装置』を見たのを思い出したのよ」

「移動装置?」

 アルとグレッグが首を傾げる。

「そうよ。5年ほど前に殿下が洞窟に閉じ込められる事件があったでしょう。あの時に閉じ込められた洞窟とは枝分かれした場所に光る異様な物が有ったのを覚えてますか。あれが『移動装置』だと思うのです」

「ああ、あのヘンテコな装置か。あれが『移動装置』だと?」

「そうです。そう考えなければ、シールドに守られた中に魔女が何度も現れるわけがありませんわ」

 ヒラリーは身を乗り出して二人に伝える。

「言われてみればそうだな。魔女がどこから現れて消えたのか不明のままだ。学園の魔獣もどうやって来たのか結局分らなかった」

 アルは頷いた。

「あの装置は、私のゲームにもサーシャリア様のゲームにも出てきません」

「サーシャリアは何と?」

「サーシャリア様は直接見ていないようです。誰かに聞いたみたいでした」

「あの洞窟は魔女が塞いだのだったな」

 アルの呟きにグレッグが頷く。

「サーシャリア様のゲームは王都の地下で魔女と戦ったと言っていました。魔女が聖女を攫って行ったのに、何の痕跡も残していないのは、王都の地下に、いいえ城の地下にあれと同じ『移動装置』があるのではないかしら」

 ヒラリーは自信満々だ。

 その様子に「よほど自信があるのだな」とアルが言った。

「あたりまえじゃない。サーシャリア様のゲームの最終決戦が王都の地下ならそれしか考えられないわ。だからこの城の地下にも同じ物があると考えるのは当然でしょう」

 ヒラリーの言っていることはもっともだと思った。

「ヒラリーの言うように、『移動装置』なる物がこの城の地下にもあると考えたら」

 アルは腕を組んでしばらく考えていた。

「イルカ、おまえのサーチで探せるか?」

 アルは私を見た。

 私はアルに頷いた。

「やってみます」

 サーチの腕輪した手を上に伸ばして『移動装置』を探す。

 目を瞑り、あの装置の形を思い浮かべた。

 暗闇の中で光る装置が見えた。光は2カ所見えた。

「2カ所で反応がありました」

 私がそう言うと「2カ所も!」と全員が驚いた。

「その場所はわかるか」

「1カ所はこの城の地下深い場所に感じます。もう1カ所は『北の塔』に感じます」

「北の塔!あそこのそんな物は無かったわ。間違いじゃないの」

 ヒラリーが否定するように首を振る。

「いいえ、間違いありません」と私は断言する。

 ヒラリーは少し考えていたが、「そうね、私のゲームで聖女が閉じ込められたのが『北の塔』だし、同じクリエーターが作ったゲームならそれもありかも・・・」と呟いた。

「だとすると、俺たちが見落としたのかもしれない。北の塔に行ってみよう」

 私たちは北の塔に行くことにした。

「地下から行かれますか?」と私は聞いた。

「いや、上から行こう。もし本当に『移動装置』があるのなら、偶然見つけたように装える」

「そうね。それが良いわ」ヒラリーも同調した。

 私たちは城の庭を横切って北の塔に向かった。

 途中、サーシャリアとばったり会った。彼はジョイール殿下とスコートと一緒だった。

「あら、サーシャリア様どちらに行かれますの?」

 ヒラリーはジョイール殿下に挨拶をした後に、サーシャリアにそう聞いた。

「ヒラリー嬢様こそどちらに?」

 探るようにサーシャリアが尋ねた。

「聖女が攫われたのをみんなで推理していたら、前にあったの『北の塔』の事件を思い出したのですわ。あの時の捕まっていない犯人が何処から逃げたのか不思議に思っていましたの。だから『北の塔』に何かあるかも知れないと思いついて、これから調べに行くところですわ」

 さすがヒラリー、すらすらと嘘が上手だ。

「そうですか。実は我々も『北の塔』に行くところです」

 サーシャリアがヒラリーと話してる間、ジョイールは立ち止まることなくスコートと先に行っている。取り残されたサーシャリアは、横目でジョイール達を見ながら小声でヒラリー耳打ちした。

「地下の魔女の住処に行く通路が『北の塔』にあったのを思い出しました」

「あら、そうなんですね。私は聖女が攫われたのが『北の塔』だったので、何かあるかも知れないと思ったのですわ」

「同じところに行くのでしたら、我々と一緒に行動しませんか?」

 サーシャリアの提案に、「あら、ジョイール殿下はそうは思っていないように思いますわ」ヒラリーは先にずんずん行っているジョイールを見た。

「俺もそう思うな。同じところに行くにしても別々に行動した方が良いだろう」

 二人の話を聞いていたアルが言った。

 すぐ近くからアルの声が聞こえたので、サーシャリアは驚いた。

「フェアルート殿下」

 サーシャリアは後ろに飛び退いた。

「お前がジョイールに何処まで話しているか知らないが、俺たちはヒラリーの事情を知っている」

 落ち着いた口調でアルが告げる。

「では、殿下のゲームと繋がっていることもご存じなのですか」

「俺はゲームという物が分らないから、繋がっているかどうかは分らない。でも、ヒラリーは嘘を言っていないと信じている」

 信じられないと言うようにサーシャリアはアルを見た。

「では、私たちの聖女奪還計画に参加してくださるのですか」

「いや、それはない。俺たちは俺たちで動くつもりだ」

「ああ、そうなのですね」

 サーシャリアはガッカリした様だ。

「それより、ジョイールがお前を待っているぞ」

 アルが指さす先を見ると、ジョイールとスコートが立ち止まってこっちを見ていた。

「行き先は一緒なのだから、また後で」

 ヒラリーがサーシャリアに告げる。

 サーシャリアはなんとも言えない顔をして、ジョイールの元に走って行った。


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