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収穫品

 テーブルの上には隠し通路で発見した色々なポーションや魔石が並んでいた。

 隠し通路からアルの執務室に戻って拾得物を空間ポケットから出していたヒラリーが首を傾げた。

「こんなに沢山のポーションや魔石を空間ポケットに入れた覚えはないのに、私の空間ポケットからみんなの分も出てくるわ」

 空間ポケットは4枚あったので、その場でそれぞれ一枚ずつ持つことにした。初めは4枚全部白いポケットだったが、それぞれの属性の色に変化している。アルは赤、グレッグは青、ヒラリーはミントグリーンだ。私のは白いままで変化はしていない。

「みんなで使える物は共通で取り出せるようになっているようだ。俺の空間ポケットの中には表が赤いルビーで裏が黒曜石のピアスが入っていた」

 アルはピアスを手のひらにのせた。

「片方だけだ」

「そのピアスは宝箱が『真実の瞳』と言っていました」

「みんなにも聞こえていたと思いますが・・・」

 私は宝箱が開くときに聞こえた声を口にした。

 そうなのだ。宝箱は開くときに中に入っている品物の説明をしてくれたのだ。

「あの時俺はグレッグの空間ポケットに入れたような気がするが、俺の空間ポケットに入っていたから、多分これは俺用なんだろう」

「そうです。私が宝箱から取り出して私の空間ポケットに入れました」

 グレッグが思い出したように話している時、アルは手に持ったピアスを耳に付けようとしていた。

「殿下、もう少し慎重に扱った方が・・・」

 グレッグが慌てて止めにはいったが、アルはすでに付けてしまっていた。

「違和感はありませんか?」

 心配そうにグレッグが尋ねた。

「今のところは大丈夫みたいだ。『真実の瞳』の力が分らないから、この能力を知るのはこれからだな」

 アルはピアスを付けても何も変化を感じなかったみたいなので、グレッグはホッと安心したようにため息を吐いた。

「私のポケットには盾が入ってますわ」

 ヒラリーが自分の空間ポケットから盾を出した。

 上が丸くて下が尖っている形は一般的な盾だが、大きさはかなり小さい。そして厚みも薄い。軽量な作りのようだ。表面には上品な透かしの模様まで入っている。中央にエメラルド色の石が付いていて、女性が持っていても違和感を感じない作りになっていた。

「剣と一緒に入っていた盾だね」

 アルが興味深そうにヒラリーの手元を覗いた。

「私の空間ポケットに入っていたのは盾だけよ。これは私用なのかしら?」

「見てすぐ分るからでしょうか。宝箱は何も言ってなかった気がします。剣は入っていないのですか?」

 私はヒラリーに尋ねた。

「入っていないわ。盾だけよ」

「まって、剣は私の空間ポケットに入っている」

 グレッグは剣を取り出した。

 剣の鞘は盾と同じような装飾が施されている。柄の部分にはアクアマリンの石が付いていた。

「明らかにこれは剣と盾が一緒に入っていたから、本来なら対でなければならないはずなのに、どうしてだろう?」

 不思議がるグレッグにアルが言った。

「多分、盾はエメラルド色の石が付いているから風の盾だと思う。そして、剣はアクアマリンで水なのだろう。それぞれの属性の者を盾と剣が選んだんだと思うよ」

「殿下、なぜそう思われるのですか?」

 ヒラリーがもっともな質問をした。

「だって、同じ風魔法で戦うとき盾があった方がよくない?」

「同じ属性で戦った時ですか?」

「そうだよ。風の刃が飛んできたとき、同じように風で応戦したらそこら中風が吹き荒れて危ないだろう。盾があれば、風の刃を吸収してくれると思うよ」

「そうね。そういう事もあるわよね」

 ヒラリーは理解したようだ。

「で、イルカの空間ポケットには何が入っているの?」

 みんなの目が私に集まった。

 私の空間ポケットの中には濃い藍色の石の付いたピアスが片方と同じ石が付いた指輪が入っていた。

「ピアスは『勇者』で指輪は『小鳥の囁き』と聞こえました」

「『勇者』が何故イルカなんだ。俺のと間違えているのではないか」

 アルはさっき付けたばかりのピアスを無意識に触った。するとアルの頭の中に声が響いた。

『真実の瞳はそなたのもの』

「これは俺の物だと声が聞こえた。だから間違いないみたいだ」

「しかし、どうしてイルカが勇者になるの?聖女を探すのは殿下の役目でしょう」

 ヒラリーは釈然としない様子だ。

「とにかくそれはイルカの物だから、付けるべきだと思う」

 アルの瞳の色と同じ濃い藍色のピアスを私は付けた。

 付けたら力が沸いてくるかと思ったが、そんな事はなかった。

 しばらく様子を見ていたアルが、「イルカも大丈夫そうだな。ピアスの能力は後で分るとして、指輪はどうだ?」

 私は指輪を左手の中指に付けた。初めはゆるゆるだった指輪は、腕輪の時と同じように指にピタリとはまった。

 指輪を付けたときから、廊下を通る人の話し声が聞こえてきた。

「話し声が聞こえます。もしかしたら、サーチの腕輪の時に映像と一緒に声が聞こえたらと思っていたのですが、それが叶う気がします」

「そうか、それは便利だな」

 アルは指輪の能力に満足したように頷くと、「えーと、後はテーブルの上に乗っている物だな」と、ずらりと並べられたポーションや魔石を見た。

 ポーションの横に胴衣が3枚有った。

「この胴衣は?」

「私の空間ポケットの中に入っていました。3枚あるので私一人の物ではないと想います」

 私の空間ポケットに材質も形も同じ胴衣が3枚入っていた。

「たぶん、殿下とグレッグ様と私の物だと思うのですが、必要に応じて私の判断で貸し出しできる物かもしれません」

「イルカが持ち主を選べる物か・・・イルカの空間ポケットに入っていたなら必要な時に出すようにしてくれたらいい」

 私はアルの言葉に従って、胴衣を空間ポケットにしまった。

「ポーションと魔石はどのポケットからでも取り出せるからこれもしまっておこう」

「殿下、虹色の瓶が2つありますが、これは初めて見ました。どんな効き目のポーションですか?」

 ヒラリーが虹色の瓶を1つ取り上げで光に透かして見ている。

「調べてみないと分らないが、それは死んですぐなら生き返らせることができる伝説の万能のポーションじゃないかと思う」

「伝説の万能ポーションですか。滅多なことでは使えないですね」

「そうだな、それを使うときは慎重に考えた方が良いだろう。他のポーションも分るように効能書きを付くって入れておこう」

 ポーションと魔石を空間ポケットに全部しまって替える支度をしていると、アルが私を呼び止めた。

「イルカは残ってくれる」

 グレッグとヒラリーを見送って戻ってくると、アルは机に寮の屋根裏で見つけた剣を乗せて待っていた。

「殿下、それは・・・」

「この装飾が取れている部分に、隠し通路で見つけた石が入るのではと考えている」

「あれは上着のポケットにしまわれてましたね」

「そうだよ。みんなは忘れていると思ったし、この剣の事は誰にも話していないから、あの石を入れるときにはイルカにいて貰おうと思った。この剣はこの石を入れたら生き返ると思うんだ」

 アルはポケットから、綺麗にカットされた透明の石を2個と赤と青と緑と黄色と白と黒の石をそれぞれ1個ずつ取り出した。石は自ら光を放っているようだ。

 柄の表側に小さな丸い緑色の石と菱形のすこし大きな透明の石と赤い石、そして小さな丸い黄色の石の順に並べた。裏側は小さな丸い白い石菱形の青い石と透明の石、ちいさな黒い石の順に並べた。

 剣に石をはめ込むと剣はほのかに光った。

 鞘の透かし模様に王家の紋章が浮かんだ。

「やはりこれは魔剣の様だ」

 アルが鞘から剣を抜くと刃先は青白く光った。


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