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魔獣!?

「前方二時の方向。魔獣の集団発見!」

 上空を飛んでいたヒラリーが叫んだ。

「魔獣だって!」アルが驚いた。

「ハッキリとは見えないけれど、今までに遭遇した魔物より大きくて足が4本付いてるわ」

 私は一番高い木に登り、ヒラリーが指さす方向を見た。

 そこは森が途切れ木は1本も生えていなかった。周りには何も無い見晴らしの良い草原だった。草原の中に黒い集団が見えた。

 あれか・・・私は黒い集団に注視する。

「確かに額に角の生えたオオカミの群れが見える」

 私の報告にアルが反応した。

「角の生えたオオカミだって!上級の魔獣じゃないか!この区域には生息していないはずだ!」

「でも、どうみてもあれはオオカミに見えます」

 私はオオカミの群れをよく見ようと更に目を凝らす。

 オオカミは何かを取り囲むように集まっている。中心にいるのは・・・

「大変!オオカミが取り囲んでいるのは、4人います。1人はグレッグ様のようです」

「何だっ」「何ですって!」アルの言葉に被せるようにヒラリーが叫んだ。

「ざっと見て、50匹はいます。どうしますか?」

「助けよう!」

 私は戦闘態勢を取りながらゆっくりと木から下りる。

「イルカちょっと待って」

 ヒラリーが私を止めた。

 いや、待ってる場合ではないだろう。オオカミは今にも4人に飛びかかりそうだ。

「イルカ、あんたが行ってパーティモードになると、恐ろしく長い戦いになりそうな気がする。あの変な戦い方になるのは避けたいわ」

 確かに言われてみれば、そんな気がしないでもない。

「上手くいくかどうかは分らないけれど、私が風魔法でオオカミを蹴散らしてやるわ」

「どうするんだ?」

「簡単よ。グレッグ様のところまで飛んでいって、オオカミたちをトルネードで飛ばすのよ」

「確かにそれだったら何とかなるかもしれないな」

「でしょう。それでは先に行ってグレッグ様を助けてくるわ」

 ヒラリーはグレッグに向かって飛んでいった。

「アル、私たちはここで待っていた方が良いのだろうか」

「イルカが動いて、あの戦闘モードになることを考えたら。俺たちはここにいるのがベストだと思う」

 アルは疲れたように言った。

 私は再び木の上に登り、森の外れまで移動した。

 ヒラリーはグレッグのところに着いたようだ。

「グレッグさまー」

 ヒラリーの声が草原に響く。

 グレッグ達は空から降りてきたヒラリーに驚いている。

「ヒラリー、どうしてここに・・・」グレッグの驚いた声が聞こえる。

「話しは後ですわ。いきますわよ」

 ヒラリーの右手が挙がる。

「トルネード!」

 ヒラリーの上空に小さな渦巻きの雲が現れた。それは少しずつ大きくなりオオカミの群れの上を覆う。

 見ていると、オオカミが渦巻きの中に巻き上げられていく。そして、四方八方に飛んでいく。それは私たちのところにも飛んできた。

 ヤバいと思った瞬間、身体が縮んだ。戦闘モードだ。

 周りを見回すと、10匹くらいのオオカミが落ちてきていた。幸い地面や木にぶつかって怪我をしており、万全の状態でないようだ。上級魔獣が完全体で戦ったら、一匹でも勝てる見込みはかなり薄い。

「アル、どうしますか?」

「ヒラリーのトルネードを見て思ったんだけど、全体にダメージを与える魔法を使ってみよう」

 アルは「風刃!」と、オオカミに向けて魔法を唱えた。

 強い風と共に小さな刃が無数に飛び出した。

 手負いのオオカミが数頭消えた。

 次はオオカミの攻撃だ。

 オオカミの口から冷気が吐き出された。アルは慌てて避ける。冷気が当った場所の草が凍り付いた。

「あぶない、あぶない。危うく凍らされるところだった」

 私はオオカミを見回し、一番元気そうな一匹に剣を振り下ろした。

「斬!」

 私の一撃で一匹が消えた。

 オオカミは5匹。どれが攻撃をしてくるのかわからない。さっきと同じように冷気を吹き出すのだろうか。

 警戒しながら様子を見ていると、一匹のオオカミの口から緑色の液体が飛び出した。

 私とアルが同時に避ける。

 緑色の液体は足下の土の上に落ちた。

 避けられた。やれやれと思っていたら、落ちた液体が集まりぷよぷよとしたスライム状になった。そして、近づいてきた。

 アルが剣の先でスライム状になった液体を払った。スライム状の物は二つに分かれてまたくっついた。

「何だ?」

 アルが困惑している。

 アルの様子を見ていた私は異変に気付いた。

「アル、剣が」

 スライムに触れたアルの剣が剣先から徐々に変色している。

「これは剣では切れませんね」

「ああ、切っても元に戻ってしまう。火で焼き払おうか」

「そうですね。焼くか凍らせるかしないといけないと思います」

 アルと私がそんな話しをしていると、急に強い風が吹いてきた。上空を見るとヒラリーのトルネードの雲が私たちのところめがけて降りてくるところだった。

「アル、逃げないとトルネードの巻き添えになってしまいます」

 私たちも慌てたが、オオカミ達も自分たちを跳ね飛ばしたトルネードが近づいているのに気付いた。戦いどころではないと思ったのだろう、慌てて逃げる準備を始めた。

 私たちも逃げる。

 逃げながら後ろを振り返ると、バリバリと木々が飛んでいくのが見えた。

「危機一髪でしたね」とアルと顔を見合わせた。

「まったく、さっさとやっつけたら良いのに、順番で動くなんて見ていてイライラするわ。あんたのパーティに参加すると、私まであの変な戦い方になってしまうから、後ろから吹き飛ばしてやったわ」

 鼻息荒くヒラリーが言った。

「助かったよ」とアル。

「どういたしまして」

「グレッグ達は無事だったのか?」

「こっちに向かってきてるわ」

 草原に目を向けると、ヒラリーのトルネードに吹き飛ばされたのか、オオカミの群れはいなくなって、グレッグとサーシャリアと聖女のアレカとコレカが私たちの方へ歩いてくるのが見えた。

 彼等と合流するとアルが言った。

「まずはこの場所から移動しよう。上級魔獣のオオカミが出るところに長居は出来ない」

「そうですね。Cの避難小屋まで戻りましょう」と、サーシャリアがアルの提案に同意した。

 私たちは周囲に気を付けながらCの避難小屋まで戻った。


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