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聖剣または魔剣?

「これは魔剣かしら」

 私は思わず呟いた。

 剣は鞘に収められた状態で宝箱に入っていた。

 鞘は全体的にグレーがかった色で、気を付けて確認しないと見落とすほど、同色の緻密な模様が付いていた。

 剣の柄にも装飾が施されていたが、何カ所か装飾が剥がれて空洞になっている箇所があった。

 私は鞘から剣を抜こうと手に掛けた。

 しかし、剣は抜けなかった。

 中で何かがつっかえているのだろうか。柄の装飾も欠けているし、もしかしたら、かなり古い物かもしれない。古い物だと剣先がさび付いて膨張しているかもしれない。それで剣が抜けないのかもしれない。

 私がそんな事を考えていると、いつの間にかアルが横に来ていた。

「イルカ、待たせたな」

 アルは開いている宝箱と手元の剣を見て、「宝箱から剣が出て来たのか?」と私の手元を覗き込んだ。

 この剣に興味を持ったのか、アルは私から剣を受け取って調べ始めた。

「ここは暗いな。部屋に戻って調べてみよう」

 アルは屋根裏から出て部屋のあるバルコニーに降りた。

「客人は帰ったの?」

 部屋の中には誰もいなかった。

「ああ、帰った」

「新しい側近を付けてくれるの?」

 アルは私の顔を見てニヤリと笑って部屋へと入った。

「側近の話しではなかった」

 私はアルの後に続いて部屋に入る。

「さっきいたのは、俺の補佐官だ」

「補佐官?」

 アルの補佐官については初めて聞いた。

「俺が学校に来ている間、城との連絡などいろいろとして貰っている」

「それで、この警備が手薄な状況を改善して貰えるのですか?」

「いや、そんな話しは全然しなかった」

「では何しに来たのか聞いても大丈夫ですか?」

 アルはニヤリと笑って、「ジョイールが婚約者を決めたらしい」と言った。

「第1王子が婚約者を決めたのですか?もしかしてエレーナですか?」

 思わず同級生の聖女の名前を言った。

「まあ、ジョイールは一年の時から彼女一筋だったから、聖女が増えても関係なかったみたいだね」

 先日第1王子の部屋を覗いたときも、エレーナがジョイールの隣に座っていたから、多分そうなのだろうと思っていたけれど・・・

「で、ジョイール殿下が婚約者を決めたから、アルも決めないといけないとか言ってきたのですか?」

「そうなんだよ。それもあのいけ好かないコンレイル公爵令嬢との話しがぶり返しているらしい。あの時、グレッグに押しつければ良かった」

 アルはなんとも言えない顔をしている。

「それで、アルもコンレイル公爵令嬢と婚約することになったのですか」

「まさか!俺が承諾するはずないだろう。俺は心に決めた人がいるから、その人以外とは婚約する気はないとハッキリ言ってやった」

「へぇー、アルには心に決めた人がいたんですね」

 アルの周りに女性の気配を感じた事がなかったので、正直驚いてしまった。

「まあ、その話しはまたゆっくりしよう」アルは誤魔化すように呟いた。

「まずはこの剣について調べよう」と、剣をテーブルの上に置いた。

 明るいところで見た剣は、装飾が剥がれてはいるが、それほど古さを感じられなかった。

「この剣は魔力を帯びているな」

 剣から出ているオーラの様な物をアルも感じている。

「魔剣でしょうか?」

「うーん、剣から感じるこの気配だけでは、魔剣とも聖剣とも言えないな」

「聖剣の可能性もあるのですか?」

 アルは分らないと首を振った。

「装飾の外れている部分もあって古く感じますが、明るいところで見ると、それほど古い物には見えませんね」

「そうだな。この装飾の外れたところには石が付いていたのかもしれないな」

 剣の柄をまじまじと見てアルが言った。

「石ですか。もしかして先日の魔石でしょうか?」

「いや、丸もあるが大きさが違う。そして、メインのところは菱形にちかい」

「では、探せばこれにあった石も出てくると言うことですね」

「多分そうだろう」

 アルは剣の柄を持つと鞘から抜いた。

 私が抜こうとしても抜けなかった剣をいとも簡単に抜いてしまった。

 剣先は銀色に輝き、錆びてはいなかった。

「剣が抜けましたね」思わず声が出た。

 アルが不思議な顔で私を見た。

「剣が鞘から抜けるのは当然だろ」

「いえいえ、私が抜こうとしても抜けなかったんです」

 アルは剣を見ていたが鞘に収めると、今度は私に抜くように言った。私はアルから剣を受け取り鞘から抜こうとしたが、やはり抜けなかった。

「ダメです。私では抜けません」

 私はアルに剣を渡した。剣を受け取ったアルが剣の柄に手をかけて抜くと、剣はスルリと音もなく抜けた。

「なぜ・・・?」

 私では抜けない剣が、アルにはどうして抜けたのだろう?

 宝箱は私のゲームの中に出てくる物だとヒラリーは言っていたけれど、宝箱に入っていた剣が私ではなくアルを選んだのはどうしてなのかわからなかった。

「抜けない剣を私が持っても、何の役にも立ちません。この剣はアルが持つていて下さい」

 私はアルに剣を渡した。

「じゃあ、俺は先に寝るからね。今夜も見張りをお願いするよ」

 アルは新しく手に入れた剣を嬉しそうに眺めて、剣と共に奥の部屋に消えた。

 私は一つだけ残して部屋の明かりを消した。そして、ソファーに座って警護を開始した。


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