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聖女つながり

 夜遅くヒラリーが私の部屋に来た。

 私は寝ようとベッドに入ったばかりだったので、扉が開いてヒラリーが入って来たのに気付いていたが、寝たふりをして起きなかった。

 私が目を覚まさないので、ヒラリーは私の顔を軽くペチぺチ叩いた。

「ねえ、イルカ。起きているんでしょう」

「・・・」

「ねえ、イルカってば。寝たふりをしてもわかるのよ」

 今度は軽くではすまない感じがしたので目を開けたら、思いっきり手を振り上げているのが見えた。

「何をするんですか、ヒラリー様」

 私は振り上げられた手が私の顔面を直撃する前に横にずれて飛び起きた。

 ヒラリーの手が枕にボスンと沈んだ。

「なんだ、起きてるじゃない」

「起きてるじゃないですよ。いったい何の用事ですか」

 どうせろくな事ではないだろうと思って聞くと、やはりろくな事ではなかった。

「昼間の続きなんだけど、いまいちしっくりこないのよね」

「何がですか?」

「本物の聖女って、本当にいるのかな」

「ヒラリー様は私が聖女を探す役だと言っていませんでしたか」

 私はベッドの上にあぐらをかいて座り込んだヒラリーの横に座った。

「あの時はそう思ったのよね」

 ヒラリーは、「うーん」と考え込んでいる。

「何か疑問点でもあるのですか」

「サーシャリアとも話してみないと」

「どうしてですか?」

「もし、イルカのゲームが本当の聖女を探すのが目的だったら、私のゲームとサーシャリアのゲームにどんな関係があるかを知らないといけないと思わない?」

 思わないと聞かれても私は分らないので、答えようがない。

「つまりね、私のゲームとサーシャリアのゲームが繋がっているのは分っているのだけれど、イルカのゲームに私たちがどのくらい関係しているかと言うことなのよ」

「と言うと?」

「私のゲームにイルカのゲームの影響がどのくらいあるのかなと・・・」

「つまり、ヒラリー様のゲームが私のゲームに影響がなければ、自分には関係ないと思っていると言うことですか」

「そんな事は言っていないじゃない」

「いや、でも、そういうことですよね」

 私が詰め寄ると、

「そうよ。私やグレッグ様に関係なければ、イルカ一人でもいいんじゃない」

 面倒臭くなったのだろう、ヒラリーは突き放すように言った。

「聖女探しが私のゲームの目的だろうと言っておきながら、ヒラリー様は私一人で聖女を探せと言うのですか?」

 私が言った言葉に、「第2王子がいるじゃない」と、ヒラリーは反論した。

 は?

 私は一瞬、ヒラリーが何を言っているのかと思ってしまった。

「考えてもごらんなさいよ。私とサーシャリアのゲームに参加していないのは、イルカとフェアルート第2王子よ。それに、あの幽霊王子は第2王子に本当の聖女を探してくれと頼んでいたでしょう」

「それを言ったら、この国を守っている聖女はどうなるの?聖女の力がなくなったら、魔女だけでなく、魔獣も沢山出てくるのでしょう。そうなったら、全然関係なくないと思わない?」

 私の口撃にヒラリーは黙ってしまった。

「とにかく、明日みんなで話してみたほうが良いと思います。なので、ヒラリー様も今夜は寝てください」

 私は、納得がいかないヒラリーを部屋から追い出した。


 翌日、アルに連絡を取り、ヒラリーの話を伝えると、サーシャリアを交えて会うことになった。

 第1王子付のサーシャリアが、第2王子に呼び出されるのは如何なものかと嫌がられたため、偶然を装って礼拝堂で会うことにした。

 私たちが礼拝堂前で待っていると、サーシャリアがやって来た。

「おや、君たちも来ていたのですか?」

 いかにも演技のような、少し大げさな様子で私たちを見た。

「ああ、先日の幽霊王子を調べに来た」と、こちらもやや大げさにアルが答える。

「偶然ですね。私も同じ事を調べに来ました。一緒に見に行きますか?」

 そんなやり取りのあと、私たちは礼拝堂の中に入った。

 礼拝堂に入ると、また、二頭身に変化する。やはりここはゲームの中のようだ。

「それで、話しとは何でしょう」

 サーシャリアは奥に進まずに、入り口の近くに立ち止まったまま尋ねた。

「サーシャリアのゲームと私のゲームには共通点があるけれど、イルカのゲームとはどうなのかを知りたいと思っているの」

 ヒラリーが言った。

「私とヒラリー嬢のゲームとイルカのゲームの接点と言うことですか?」

「そうよ。昨日の幽霊王子が、フェアルート殿下に“本当の聖女を探す”という依頼をしたのよ。それで、イルカのゲームの目的が“本当の聖女を探す”と分ったんだけど、私やあなたのゲームとどう関係してるのか分らないから、相談したと言うわけよ」

「本当の聖女って?」サーシャリアは首を傾げた。

 そこで、ヒラリーが昨日の幽霊王子の話しを教えた。

「国を守る聖女の結界ですか」

「幽霊王子曰く、聖女五人の力を合わせても、結界を守っている聖女様に及ばないらしいわ」

「確かにこの国は聖女の結界で守られています。そして、その力が年々減少しているため魔物が出没していると聞いています」

「じゃあ、あの王子の言っていたことは本当なんだな」

「そうですね。でも、二人の聖女の話しは初めて聞きました。聖女隊の力が二人の聖女の力には及ばないと言うのも不思議です。だって、彼女たちの魔力も一人700くらいあると聞いています。700×5人だったら3500。計算しただけでとてつもない魔力のはずですが、現在の聖女様の魔力等々、魔法省に確認しないと私では分らないことばかりです」

「そうか、で、ゲーム的にはどうなんだ」と、アルはサーシャリアに尋ねた。

「もし、“本当の聖女を探せ”と言われたのならば、この礼拝堂での私たちの身体を見ると、イルカのゲームの主題とみて間違いないと思います。それに、この国が聖女の結界で守られているのは事実ですから、結界の為に“本当の聖を探せ”なければ、この国は魔物や魔女で溢れると思います。そう考えると、イルカのゲームも聖女がらみで関係しているのでしょう」

 サーシャリアは私のゲームも関係しているとはっきり言った。

「そうね、聖女で考えると、繋がっているかもしれないわね」

 ヒラリーは納得したようだ。

「私は、魔法省に行って、聖女達の力と、結界の状態を聞く事にします。結果は第2王子宛て送ります」

 サーシャリアはそう言うと、礼拝堂を出て行った。

 私たちも帰ろうと出口に向かっていると、何処からか、「本当の聖女を探せよ」と声が聞こえた。

 全員が驚いて振り向いたが、そこには誰もいなかった。


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