イベントの始まり
聖女戦隊のお披露目のパーティがもう間もなく始まろうとしていた。
誰かが美少女戦隊と言っていたが、ヒラリーは「そーかしら、みんな目が悪いんじゃない」と言っていた。
今日、ヒラリーはローレイル侯爵と一緒にパーティに出席する。
私とグレッグは、フェアルート第2王子の側近として参加することになっていた。
グレッグの家門なら当然招待されているはずだろうって?
いえいえ、グレッグはモラリス公爵家の三男。招待状はモラリス公爵宛になるため、息子が出席する場合は嫡男であるハンターになる。だからどう転んでも、三男であるグレッグは参加できない。それで、私と一緒にアルの側近という形でパーティに参加することになった。
アルは王族としての事前の打ち合わせがあるので、パーティ会場で待ち合わせする事になった。
パーティ会場に行く前に、私はグレッグと礼拝堂を見て回ることにした。
礼拝堂前で様子を見に来ていたサーシャリアと会った。
「やあ、君たちも来たのか」
軽く手を振って挨拶をしてきた。
「何か変わった事はありましたか?」とグレッグ。
三人で話していると、私は背中にゾクリといやな気配を感じた。誰かに見られている?
サーシャリアも何かを感じたようだった。
私とサーシャリアの様子を見て、グレッグは訝しい顔をした。
「サーシャリア?」
「シッ!」
サーシャリアは黙るようにと人差し指を立てる。
こちらが気付いたことに、相手も気付いたのだろう急に気配が消えた。
私たちは用心深く気配のした周辺に探したが、そこには、もう何の気配も感じられなかった。見られていると感じたのが嘘の様に完全に気配が消えたのだ。勘違いとは思えない。素早く気配を消したとしか考えられなかった。
「これだけ完璧に気配を消せるなんて、魔女だろうか・・・」と、サーシャリアは呟いた。
「魔女ですか!」と、言った後で、グレッグは慌てて自分の両手で口を塞いだ。幸い近くに人がいなかったので、それを聞かれることはなかった。
「本当にゲームのイベントが発生するかもしれない。僕は戻って対応を考えなければ・・・」
サーシャリアは私たちと別れて、宮殿の方に歩いて行った。
魔女がいたかもしれないと思うと、サーシャリアの言うとおり、今日のパーティでイベントとやらが起こる確率は高そうだ。
私とグレッグもまた、今の出来事をパーティが始まる前に、アルに伝えるために宮殿に向かった。
アルとはパーティ会場で会うことが出来た。しかし、彼は招待客達の相手をしていたため、すぐには報告できなかった。
アルの周りから人がいなくなった隙をねらって、会場の隅に誘った。
私たちからの報告を受けて、「魔女が現れた!」と驚いたが、それは周りには聞こえないほどの囁くような声だった。
「実際に見た訳ではないので、魔女とは言い切れませんが、何か不穏な気配を感じました。サーシャリア様も一緒にいたので、彼も対策を考えると戻られました」
「そうか・・・」と、アルは会場の方を見つめた。
アルの視線の先を見ると、サーシャリアが第1王子のジョイールと話しをしていた。
私たちには、彼と同じ転生者のヒラリーがいるから、かなり詳しく聞いていると思うけれど、サーシャリアは今回のイベントの件をジョイールにどのように伝えているのだろう。
私たちが見ているのに気付いたのか、サーシャリアはジョイールに分らないように手を振った。
何と答えたらいいのかわからなかったので、無視しようと思っていたら、グレッグはご丁寧に手を振り替えしていた。それを見たアルは、呆れたような顔をした。
ちょうど良いタイミングで、サーシャリアの少し横にヒラリーの姿が見えた。ローレイル公爵と一緒だ。王族達がいる方向から来たと言うことは、国王陛下に挨拶に行っていたのだろう。
グレッグの振る手がヒラリーを見つけたからと思うことにしよう。
ヒラリーは父親と離れて私たちの方にやって来た。
私たちと一緒にいるアルを見て、「フェアルート殿下はあちらの方に行かれないのですか」と、今ヒラリーが来た方向を示した。
「ああ、今日の主役はジョイールと聖女達だから、俺はおまけのようなものだから、あっちにいなくても何ということはないよ」
「そうなのですか?」
ヒラリーの首がどうして?というように傾いた。
「聖女戦隊のリーダーがジョイールだからさ」
「フェアルート殿下は聖女戦隊に参加されないということ?」
「ああ、面倒なので、言われる前に辞退した」
なるほど、ジョイールの下に付けられるのを嫌ったのか。
「あんなのと一緒に行動していたら、調べたいものも調べられなくなりそうだろ」
確かに、アルの言うとおりだ。
「それに、グレッグの報告によると、どうやら今日のパーティに魔女が参加するかもしれないからな」
「誰が参加するですって!」
ヒラリーの声が大きかったので、思わず口を押さえた。
「ヒラリー様、声が大きいです」
ヒラリーは分ったと言うように頷いたので、私は手を離した。
「じゃあ、イベントは起こるというのね」
ヒラリーは囁くように尋ねた。私たちは一斉に首を盾に振った。
そうこうしていると、ホールの前方の壇上に進行役の職員が現れた。
「始まるみたいですね」
私たちは、壇上に目を向けた。
壇上に聖女達とジョイールが登る。
「なんだ、あの衣装は」
アルが私に囁いた。
壇上の聖女達は、制服だろうか同じ色合いのそれぞれの個性に合わせたデザインを纏っていた。
「なんか、胸を強調したデザインが多いわね。いかにもゲームって感じね」
ヒラリーの呟きが聞こえた。
いかにもゲームとはどういう意味だろう。
確かに衣装は身体にフイッとしているが、タイトなロングスカートだったり、ミニスカートだったり、パンツだったり、フェミニンな感じのものも、それぞれの個性に合わせている様に思えるけれど・・・
壇上では聖女達の紹介が始まったようだ。「聖少女隊」が正式な名称となるらしい。
急に会場の明かりが消えた。明かりのは光る魔法石を使っているので消えるはずはないのに。
私とアルは周囲に注意を向けた。すると、ベランダに面したガラス扉の向こうに数人の人影が見えた。
「あれは何だ・・・」
ざわめく会場。
みんなの視線の先には、銀の髪に赤い目の少年が、数騎の鎧の騎士を引き連れて立っていた。




