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えっ、なぜに2頭身!?

 ローレイル侯爵家の朝は早い。部屋こそヒラリーの隣という待遇だが、小間使いの一人に他ならない私は、早朝に起きて鍛錬をした後、他の使用人と同じようにしっかり働いているのだ。

 いつもと変わらない朝と言いたい所なんだけど、今朝はいつもと違っていた。何故か行く先々の廊下の隅や花瓶の下に金貨が落ちている。昨夜誰かが落としたのだろうか。“早起きは三文の徳”って言うから、このままもらってもいい様な気もするけど・・・だめだ、ヒラリーに知られたらうるさいからきちんと届けよう。

 そろそろヒラリーの起きる時間なので、洗顔の用意をした後で届けようと思っていたら、タイミング良く執事長が歩いて来るのが見えた。ヒラリーに預けるより執事長の方が堅実だと思い、執事長に預けることにした。

 私は執事長に近づくと朝の挨拶をした。

「おはようございます」

「おはよう、ルカはいつも元気でいいね」

 にこやかに笑顔を返してくれた執事長はそのまま通り過ぎようとした。私は慌てて執事長を呼び止めた。

「執事長、少しお話をよろしいですか?」

 執事長はピタリと足を止めて私を見た。

「実は今朝、廊下を歩いているときに金貨を拾ったのですが、どなたか落とされたのではないかと思うのですが・・・」

 私はポケットから拾った金貨を出して見せた。

「金貨の落とし物ですか?おや、本当に金貨だ。5枚も落ちていたのですか?」

「はい、廊下の隅と花瓶の下にありました」

「花瓶の下?」

 執事長は少し考えてから首を振った。

「落とし物の報告は聞いていませんが、一応預かっておきましょう。誰も名乗り出る者がいなければ、旦那様に相談してどうするかを決めましょう」

 執事長は私から金貨を受け取ると歩いて行った。

 私は一仕事終わったとほっとした。

 気持ちも軽くなったので、洗顔用の器と水を持ってヒラリーの部屋に向かった。

 ヒラリーはまだ寝てるだろうと思っていたのに、扉を開けて部屋に入るともうソファーに座っていた。

「おはようございます、ヒラリー様」

 ヒラリーは眠そうな目を私に向けて「塔の調べはうまくいったの」と聞いた。

 どうやら昨夜の事が気になって早起きしたようだ。

「幸いフェアルート殿下が西門のところで待っていてくださいましたので、昨夜は城の中に入れました。そして、殿下と一緒に西塔と南塔に行ってきました」

 ヒラリーの朝の支度をしながら報告する。

「やはり殿下はイルカを待っていたのね。昨日の感じだとそんな気がしたのよね。行って正解だったでしょう」

 誘いを仕掛けたアルとそれに乗ったヒラリー。やはりこの二人はどこか似ているのかもしれない。

「東の塔は行かなかったの?」

「昨夜は時間が無くて行けませんでした。でも殿下の話しでは何処にあるか予想は付いたと言っていました」

「何処にあるの?」

「東の森だそうです」

 顔を洗っていたヒラリーが濡れた顔のまま顔を上げた。

「東の森ですって!あそこは魔物が出るから行ってはいけないと言われているところよ」

「はい、だから行きませんでした」

 私はヒラリーにタオルを渡した。

 その時、タオルを乗せていたワゴンからチャリンと金貨が落ちた。

 ヒラリーが音に反応して金貨を見た。

「あら、金貨が・・・」

「今朝は何故か金貨を拾うんです」

 おかしな事が続くものだと思いながら、床に転がった金貨を拾った。

「金貨を拾った・・・朝から?」

 ヒラリーも不可解な顔をしている。

「はい、今朝は5枚拾って執事長に届けました」

「どんなところで拾たの?」

 ヒラリーはこの話に興味を持った様だ。

「廊下の隅っこや、花瓶の下にありました」

 私の返事を聞いて、ヒラリーは思い当たることがあるのか、確信した様に腕を組んで頷いた。

「フーン、もしかしたらそのうち宝箱も出てくるかもね」

「宝箱ですか?」

 意味が分らないと首を傾げていると、ヒラリーが私の顔を覗き込んで言った。

「以前、イルカはRPGのキャラだと言った事覚えている?何のゲームか分らないけれど、あんたのゲームが始まったんだと思うわ」

 ヒラリーは目をキラキラさせている。

「私のゲームですか?」

「そうよ。乙女ゲームでは金貨は落ちてないもの。サーシャリアのゲームにも金貨は出てこないと思うわ。だからあんたのゲームが動き出したのよ」

 はぁー!?いったいヒラリーは何を言っているのだろう。

「イルカ、あんたが驚くのはもっともだわ。でも、道ばたの箱の中や引き出しの中に金貨が出て来たら、あんたのものだからもらっておきなさい」

「金貨が私のものなのですか?」

「そうよ。金貨を集めて剣や防具やポーションを買うのよ。そうそう、宝箱の中身ももらっておくのよ。剣や防具だったら自分で使っても良いし、いらないときは武器屋に売るのよ」

「はぁ?」

 ヒラリーの言っていることは、私にはさっぱり分らなかった。

「RPGは詳しくないけど、分らないことがあったらその都度私が教えてあげるわ」

 どうやら私のゲームが始まったということらしい。この世界はどうなっているのだ・・・

「RPGだと、あんたと一緒にいる時はパーティを組むことになるわね。ステータスとか分るといいのに・・・」

 同じ転生者でも、ゲームをしたことのない私は、ヒラリーの言っていることが全くもって分らなかった。

「ヒラリー様、私はこれを片付けてきます。朝食はどちらに運びましょうか?」

「昨日、領地に戻られていたお父様が帰ってこられたから、食堂で頂くことにするわ」

 そうだった。ヒラリーの用事ですっかり忘れていた。

「たぶん、週末の聖女達のパーティに招待されたのよ」

「週末に決まったのですか?」

「昨日、グレッグ様から招待状が来たと聞いたわ」

 いつそんな話しをしたのだろう。アルは何も言ってなかったので全然知らなかった。

「ヒラリー様には来なかったのですか?」

「来るわけないじゃない。聖女達の護衛として城の近衛騎士の精鋭が数名つくらしいわ。お父様には近衛騎士の抜けた穴をローレイル騎士団に補って欲しいと要請があったと聞いたわ」

 ああ、それで城の警備にローレイル騎士団の人達がいたのかと私は納得した。


 久しぶりにヒラリーの部屋でまったりしていると、ノックの音がしてメイドが入って来た。メイドは第2王子殿下とグレッグ様がいらしたので応接室にお通ししているとヒラリーに言った。

 それを聞いたヒラリーは「待ってたわ」と、嬉しそうにソファーから立ち上がると部屋を出て行った。

 私はヒラリーの後に付いて応接室に向かった。

 応接室の扉を開けるなり、挨拶も抜きでヒラリーが言った。

「殿下、塔の話しを教えてください」

 えっ、グレッグじゃなくてアルに用があったの!?

 グレッグも訝しげな顔をしている。

「イルカから聞いてないの?」

 アルはヒラリーの態度が想定内だったのだろう驚きもしなかった。

「おおよその話は聞きましたが、殿下の話しが聞きたいのです」

 私はメイドにお茶の用意を頼んだ。

 メイドが出て行くと、ヒラリーはアルとグレッグの前に座った。私もヒラリーの横に座った。このメンバーだと私は小間使いでなく仲間として扱われている。

 アルは地図をテーブルの上に広げた。

「昨夜、西の塔と南の塔に行って分ったことがある」

 アルは地図上の塔の場所に印を付けていた。

「これが北の塔、西の塔、南の塔の場所だ。そして、東の塔の場所はここだと思う」

 地図上の印を見ると東西南北の塔が一定の間隔で立っているのが分った。

「この中心の場所は?」

 ちょうど4つの塔の対角線上の中心と思われる場所に付いている印を指してヒラリーが尋ねた。

「礼拝堂だ」と、アルが言った。

「「「礼拝堂?」」」

 思わず私たちの声がかぶった。

「そうだ、王族の為の礼拝堂。この地下には代々の王族が眠っている墓地がある。何故そこが中心になっているのか俺も分らない」

「行くしかないわね」

 ヒラリーが叫んだ。

「ヒラリーだったらそう言うと思ったよ。だからここへ来たんだ」

 アルがグレッグの戸惑いをよそに、清々しい顔で言った。

「では、早速行こう」

 メイドがお茶を運んで来たときは、私たちは出掛ける気満々になっていた。


 お城に着くと、礼拝堂に向かった。

 礼拝堂は王宮の東側の庭園の木々に囲まれたところに建っていた。

 礼拝堂の入り口のところにサーシャリアが立っていた。

「サーシャリア殿、ここで何をされているのですか?」

 グレッグがサーシャリアに話しかける。

 サーシャリアは私たちの顔を見て言った。

「聖女様達のお披露目パーティで最初のイベントが始まるから、礼拝堂を見ておきたいと思ってね」

「最初のイベントが礼拝堂であるの?」

 ヒラリーが驚いた。

「いや、正確には魔女に操られた王族の霊がパーティ会場を襲うんだけど、王族の霊と言ったら礼拝堂の下の墓から出てくると思ったんだよ」

「魔女が霊を操るの?」

「そうだよ。この霊がなかなか強くてね。特に銀髪の子供の霊がめちゃくちゃ強いんだ」

「銀髪の子供?」

「あ、もしかしたら第2王子だったのかもしれない。僕のゲームでは第2王子は設定上もう存在してなかったから・・・」

 アルの非難じみた目線に、サーシャリアはしまったと言うように言葉を詰まらせた。

「えー、そんなわけで、ちょっと内部を見ておきたいと思ってきているんだ。一応第1王子の許可はもらっているよ」

「わかったわ。私たちは王宮見学に来たのだけど、ここに立っていいても仕方ないから中に入りましょう」

 私たちがここに来た理由をサーシャリアが疑問に思わないよう、ヒラリーが機転を利かせた。

 私たちは礼拝堂に入った。

 礼拝堂に入ったところで、何故か身体が縮んで2頭身に変化した。

「えっ、何故に2頭身!」

 ヒラリーが叫んだ。

「僕のゲームでは移動するときや戦いのシーンなどは2頭身になっていたけれど・・・これもゲームの設定なのか・・・」

 サーシャリアがブツブツと呟いている。

 全員がちびっ子サイズの2頭身になってしまった。

「ここから出たら元に戻るのよね」

 ヒラリーが心配しているので、「では、私が外に出てみます」と声をかけて、私は礼拝堂から出てみた。そうしたら建物の外では元の姿に戻った。どうやら礼拝堂の中では2頭身になるらしい。みんなのところに戻ってその事を伝えたところ、みんなから安堵のため息が聞こえた。

 気を取り直して、礼拝堂の中を探検することになった。


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