塔の探索2
暗闇の向こうに通路が続いている。
「行くぞ」
アルは暗闇に足を踏み出した。
私はアルの後を追う。もちろん通路の出口は塞いでおく。
坂道をくだって行くと左右に分かれた道に突き当たった。
「ここまでは同じだ」
「そうですね。どっちに行きます?」
「どっちでもいいだろう」
アルは右の道を選んだ様だ。右側に歩き出した。
しばらく歩くと、右の壁に別の通路が現れた。
「1つ目の通路だな。北の塔と同じだとすると、この通路を上がると出口があるはずだ」
アルは通路を上り始めた。
上り詰めた先は予想に違わずレンガの壁にぶち当たった。
この壁のレンガを動かせば外に出られる。閉所恐怖症ではないけれど、こう暗いトンネルの中を歩いていると疲れる。少しの間でも外の空気を吸えるのは嬉しかった。
私は壁のレンガに手をかけて止めた。
急に止まった私を見て「どうした?」と、アルが聞いた。
「シッ、壁の向こうから話し声が聞こえます」
「話し声?」アルは声を潜めて壁に耳を当てた。
アルの耳にも壁の向こう側から何と言っているかは分らないが、数人の声が聞こえた。
「何と言っているか分るか?」
私は耳に神経を集中した。
「兵士達が武具を確認しているようです」
「武具の確認?」
「ええ、剣と盾と鎧の単語が聞こえて来ます」
「武具のあるところか・・・」アルは少し困った顔をした。
「心当たりがありますか?」
「多分、この向こう側は兵舎の下にある装具倉庫だろう」
「兵舎の装具倉庫ですか。それは何処にあるのです?」
私は兵舎の位置を知らない。
「兵舎は城の西北にある」
困った表情のままアルが言う。
「西北ということは、西の塔から近いのですか?」
「近くはないな。しかし、不味いな。兵舎の倉庫だと人の出入りが多い。ましてや、不審者の侵入で交代人員も多いと思う。ここから出るのは難しいだろう」
アルの眉間に皺が寄っている。
「戻りますか?」と、尋ねた。
「戻るしかないだろう」と、アルは仕方ないとため息を吐いた。
回れ右をして、私たちは通路を下った。
分かれ道のところに出た。
「左に戻りますか?」
「北の塔と同じだとすると、右に行っても西の塔に出るだろう。右に行こう」
私たちは右に進んだ。
軽くカーブした地下通路を進む。
進行方向の右にまた通路が現れた。
右に現れた通路をそのまま上っていくと思っていたら、アルが急に立ち止まったので、私はアルの背中に思いっきり鼻をぶっつけた。
「あいてて、どうひゃれたのですか?」
痛む鼻を押さえて尋ねた。
アルは通路の壁を明かりをかざして丹念に調べていた。
壁の周りを一通り調べ終えてアルが言った。
「これを上って行ったら北の塔に出るようだ」
私は驚いた。何故に北の塔に出ると思ったのだろう。今までの事を考えると、この道を上がると西の塔に出るはずだ。
「どうして北の塔に出ると思うのですか?」
腑に落ちないと私の顔に書いていたようだ。アルが苦笑いを浮かべた。そして、通路の足下に光を当てながら、「ここを見て」と言った。
壁に小さく『N』と書かれていた。
「これは?」
「昼間、北の塔に行くのにいろいろあったでしょう。次の時に間違わないように印を付けておいた」
いつの間に書いたのだろう。
「では、西の塔の通路にも印を付けたのですか?」
アルは私の問に「当たり前だろう。この通路はおかしな作りになっているようだから、印が会った方が迷わないだろう」
「確かしそうですね」納得して頷いて、はたと気付いた。
「待ってください。私たちは西から右回りで歩いてきましたよね」
「ああ、右回りに歩いてきた」
「そしたら、南の塔が近いと思うのですが、どうして北の塔になるのでしょう?」
「そこが問題なんだけど。たぶん、この通路に魔法が掛っているんだと思う」
「通路に魔法ですか?」
「ここで話していても時間が経つだけだ。とりあえず次の通路を探そう」
アルはそう言うと、また右の方向に歩きはじめた。
「この通路の何処に魔法がかかっているのでしょう」
私はそう呟きながらアルの後を追った。
しばらく歩くと、また右に通路が現れた。
アルは壁に明かりを当てて調べていたが、「この通路は通ったことがないようだ」と言って、通路を上り始めた。
登り着いたところには、レンガの壁があった。
壁に耳を当てて、向こう側の様子を探る。
なにも聞こえない。
私はアルに頷くと、レンガを動かした。
そこは小さな部屋だった。そっと通路から部屋の中に入る。
ざっと見回したところ、北の塔のあの部屋と同じようだ。
私がレンガを元の位置に戻している間に、アルが部屋の扉を開けた。扉の先には短い廊下があって、別の扉に続いていた。ここまでは北の塔と同じだ。
廊下の先の扉をそっと開ける。真っ暗だ。人の気配はない。
私たちは、階段を上り階段の上にある扉を開けた。
そこは塔の入り口だった。この入り口の扉には魔法の鍵は掛っていないようだ。
アルがゆっくりと入り口の扉を開けて、ゆっくりと慎重に外の様子を覗った。
外にも人影はなかった。
アルに続いて私も外に出る。
塔の形は同じだけれど、西の塔でも、北の塔でもなかった。
「この塔は南の塔だ」
周りの様子を見ていたアルが呟いた。




