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塔の探索

 私は昨夜と同じ時刻にいつもの忍者装束で屋敷を出る事にした。違うのは、昨夜は白かったカチューシャが黒に変わったくらいだ。

「やはり夜には黒のカチューシャね。今度から夜間の外出の時はこれを着用するように」

 ご丁寧なことにヒラリーが見送りついでに言った。

 出来れば、この世界のまっとうな衣装を身に纏いたい・・・と言いたいけれど言えない私はグッと拳に力を入れた。

 ヒラリーから見たら、気合いを入れたと思ったのだろう。

「しっかり頑張るのよ。塔を三つも調べるのだから時間掛ると思う。私は寝てるからね。帰った時にみんなに気付かれないように入ってくるのよ」

 しっかり自分は寝て待つ宣言をしている。

 今夜中に帰れたらいいけれど、下手をすると夜明けまで掛るかもしれない。私は重い足を引きずりながら屋敷を後にした。

 昨夜アルと別れた地下の入り口に向かう。

 あの地下通路はアルの執務室に繋がっているけれど、確実に覚えているわけではないから、途中で迷ったら、永遠に城の地下通路をウロウロしないといけないかも・・・と遭難者の心境でいたら、地下通路の入り口にアルが立っているのが見えた。

 アルは私の姿を認めると、軽く片手を上げた。

「やっぱり来たね」

 私は安堵のため息をついた。

「私一人ではどうすれば良いのかわからないところでした」

「昼間、北の塔と同じような塔が他に三つあると言ったから、ヒラリーがイルカに調査を頼むと思っていたよ」

「思っていて言ったのですか?」

「まあね。俺も知りたいし、一人で調べるのもつまらないからね」

 結局、ヒラリーの興味を引く話しを振れば、ヒラリーは私に調査を頼むと読んで、他の塔の話しをしたと言うことか。

「それで、また地下から城の中に入るのですか?」

「いや、今夜は通用口から行こう」

「大丈夫ですか?」

 通用口は見張りが厳しいはず。

 疑い深い態度でアルを見ていたのだろう。アルは「大丈夫」と言って、通用門に向かって歩きはじめた。

 昨日の今日で、まだ不審者が残っているかもしれないのに、本当に大丈夫なのだろうか。

 そうこうしているうちに通用門に着いた。

 アルが堂々と門の中に入って行く。私も遅れないように後に続く。

「フェアルート殿下、用事はもう済まれたのですか?」

 門兵がアルに尋ねた。

「ああ、側近を迎えに行っただけだからな」

 側近と聞いて、兵士はアルの後ろに付いている私を見た。

「あれ?イルカじゃないか」

 顔を合わさないように下を向いていた私に門兵が声を掛けてきた。私を知っている!驚いて顔を上げた。見ると、ローレイル騎士団で一緒に稽古をしていた団員だった。

「そうか、イルカなら側近になってもおかしくないね」

 門兵は納得した様に頷いている。そうなのだ、私は団の中でも強いほうだ。

「なに?知り合い?」

 アルは門兵と話す私を意外そうに見た。

「ローレイル騎士団で一緒に鍛錬をしていた仲間です」

 私の説明に、アルはキョトンとした。

「ローレイル騎士団がなぜ此処で門兵をしているの?」

「侵入者騒ぎで、しばらくの間、人の出入りに注意することになったのです。それで、門兵だけでは心許ないので、我々も手伝うことになりました」

「そうなんだ。それじゃあ、今夜は私がイルカを迎えに出たけれど、今後は一人でも通して貰えるかな」

 アルの頼みに、ローレイル騎士団の団員である門兵は、自分たちの当番の時であれば何とかなりますが、そういうことなら、正式に警備担当の上司に依頼して欲しいと言った。

 侵入者騒ぎがあったばかりなのに、いくら王子だからと言って、アル個人の頼みを下っ端の門兵に頼む方が悪い。

 アルは、「めんどくさいな」と言いつつも、上司に掛け合うと言った。

 今夜は無事に門から城の中に入った。

「それでどの塔から調べる?」

 早く調べて帰りたい私は、仕事モードでアルに尋ねた。

「ここから一番近いのは西の塔だね」

 アルが指さした先に、ボンヤリと塔のシルエットが見えた。

「西の塔は城壁の上にあるのですね」

「いや、城壁と塔は少し離れているよ」

「えっ、でも城壁の上に有るように見えます」

「近くに見えるけれど、結構遠いんだよ」

 そう言いながら、アルは急いで歩きはじめた。かなり速い、自転車並みの早さだ。

 遅れないように付いて行く。

 10分程で西の塔に着いた。

 西の塔の前には誰もいなかった。

 扉に手をかけるが、びくともしない。

「鍵が掛っているみたいですね」

「内側から魔法の鍵が掛っているみたいだ」

「魔法の鍵ですか?」

「多分全部の塔に付いているはずだよ」

「へぇ、それじゃあ北の塔は誰かが魔法で開けたと言うことですか?」

「そうなるだろうね」

「じゃあ、アル、魔法で開けてください」

「それは出来ない」

 魔法で開くのに、魔法で開けられない。おかしな事を言うなとアルを見た。

「魔法で開けると魔法の痕跡が残るんだ。痕跡を見たら誰が開けたか分るようになっている。だから、俺が開けると俺の痕跡が残る。それはちょっと避けたい」

「では、どうして塔に入るのですか?」

「上から入る」

 アルが塔を見上げたので、私もつられたように塔を見上げた。

「俺は浮遊魔法で上までいけるけれど、イルカは登れるか?」

「窓に足を掛けて飛び上がれば大丈夫です」

「よし、じゃあ行くよ」

 アルがフワリと浮き上がった。

 私は少し助走をつけて3階付近の窓に足をかけて、そのまま最上階に飛んだ。塔の形が上に行くにしたがって細くなっているので何とか飛べた。

 塔の上に着いて周りを見回す。

 塔の近くに城壁が建っていたが、アルが言ったように、塔と城壁は離れていた。

 階段のところの扉に、黒い大きな鍵が掛っていた。

「不思議ですね。此処は中ではなく外に鍵が付いてます」

「鍵は普通外につけるものだろう」

 私は変なことを言ったのだろうか。

「でも、この塔は中の階段を登って上に出るので、外から鍵を掛けたら中から出ることは出来ません」

 アルが、アッという顔をした。

「確かに、そうだ」

 しかし、内鍵なら開けにくいけれど、外鍵なら開けられるから良かったのかもしれない。

「この鍵なら、何とか開けられます」

 私はヒラリーから持たされた、忍びの七つ道具からカギ型の道具を取り出して、鍵穴に差し込んだ。少しガチャガチャしていたらカチリとカギが開いた。

「開きました」

 扉を開けると、下に降りる階段があった。

「この鍵どうしますか」

「中からも掛けられるようだ」

 扉の内側を見ていたアルが言った。

 アルの手元に小さな明かりの球が乗っている。

 扉の内側を見ると、確かに鍵を掛けられる様になっていた。

 私は鍵を取り、扉を閉めて内側から鍵を掛けた。

「さあ、行くよ」

 アルが階段を降りる。私も続いて降りる。

 階段を降りきったところに扉が有った。

 扉を開けると、そこは1階の入り口の前だった。

 入り口の扉がボンヤリと薄明るく見えるのは魔法が掛っているからだろうか。

「この薄明るいのは魔法の鍵ですか?」と私が言うと、アルは驚いた様に振り返った。

「この魔法の光が見えるの?」

「やはり魔法なのですね」

「いや、この光が見える方がすごいよ。この光は魔力の強い人でないと見えないんだよ」

 うっかりしていた。私は魔法を使えないけれど見えるのだった。何とか誤魔化さなければ。

「そうなのですか。魔力の少ない私にもはっきり見えますが・・・」

「へぇ、驚いた。でも、その話しは後で考えよう。今は先に進まないといけないからね」

 アルはそれ以上詮索せずに、塔の探検を進めた。正面入り口の扉の横に降りてきた扉とは違う扉があった。開けると、また下に降りる階段があった。

 階段を降りた先に部屋があり。部屋の奥に扉が有った。

 その扉を開けると短い廊下があって、また扉が有った。

 その扉を開けると、北の塔で地下通路と繋がっていたのと同じようなレンガ壁の部屋があった。

「此処だね。レンガを動かしてみよう」

 私はヒラリーが動かしたのを思い出しながらレンガを動かした。そうすると、レンガの向こうに地下通路が現れた。


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