表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/95

北の塔

「すごいよ!ヒラリー、このスカーフを風魔法で北の塔まで飛ばすなんて!」

 グレッグが自慢気なヒラリーを褒めたので、ヒラリーの鼻はますます高くなった。

「ふふん、こんなこと朝飯前よ」

 朝飯前?そんなに簡単なことだろうか?

「本当にいつの間に練習したのですか?」

 私としては、ヒラリーがこんな風魔法をいつ習得したのか些か疑問だった。

「練習なんかしていないわ。ただ、サーシャリア様がうわさ鳥を飛ばしていたのを思い出して、私にも出来るかもしれないと思ったのよ」

「あれは風魔法だったのですか?」

「そうだと思うわ。フワフワ飛んでいたでしょう」

 確かに、うわさ鳥は飛んできた。

「あの時、サーシャリア様が近くに居る気配はしなかったから、何処かから飛ばしていると思ったのよ。式は遠隔操作できる設定だからかもしれないけれど、何らかの魔法で動かしているわけでしょう。それが風魔法でも出来るかもしれないと考えたら、スカーフも飛ばせるのではないかと思ったのよ」

 そうか、ヒラリーは頭を使ってないようで使っていたんだと妙に感心した。

「では、行こうか」

 お茶を飲んでいたアルが急に立ち上がった。

 アルの言葉に「何処へですか?」とグレッグが尋ねた。

「北の塔に決まっているだろう」」

 呆れた顔でアルが言った。

「えっ、大丈夫でしょうか?」

 グレッグが信じられないと思わず声を上げた。

 さっきまで騎士や兵士が大勢外に出て警戒していたのを思い出すと、まだ早いのではと私も心配になった。

「また、地下通路を通るのですか?」

「まさか、地上の道を行くよ。侵入者も捕まったから大丈夫だろう」

 アルは、もう扉の前で私たちが来るのを待っている。

 本当に大丈夫だろうか?と思いつつ、私たちはアルの後に続いた。

 アルの執務室から北の庭園へはすぐだった。

 侵入者が捕まったからだろうか、あれほど大勢いた騎士達の姿はすでに消えていた。騎士達はいなかったが、兵士はまだ所々に立っていた。

 北の庭園は中央に噴水があり、噴水を囲むように円形に花壇が作られていた。

 花壇は手入れが行き届いていた。季節の花が色とりどりに咲いている。

 私たちは、花壇に作られた小道を北の塔に向かって歩いていく。

 花を見るわけでもなく、ただひたすら北の塔に向かって歩いている私たちに、若い兵士が一人近づいてきた。

 先頭を歩いているアルに、「フェアルート殿下、どちらに行かれるのですか?」と尋ねた。

 アルは立ち止まることなく、「北の塔に行く」と答えた。

 それを聞いた兵士は、「フェアルート殿下、申しわけありません。北の塔にはまだ入れません」と、アルを止めた。

「どうして?侵入者は捕まったのだろう」

 不可解だと言うようにアルは兵士を見た。

「侵入者は捕まりましたが、まだ、その仲間が近くに居るかもしれないため警戒しています」

「おかしいな、侵入者を捕まえたと聞いたから出掛けてきたんだが」

 アルは立ち止まって兵士と対峙する。

「侵入者は二人拘束致しました。しかし、北の塔には複数の足跡が残っていました。それで仲間がいると考えています」

 捕まったのは二人。あの時アルは三人いたと言っていた。そして、後からもう一人来たと・・・

 魔法を使える者は逃げたとしても一人足りない。

「それにしては騎士の姿が見えないが」

 アルは周りを見わたした。

「それは犯人達に捜査は終わったと思わせる為です」

 なるほど、油断をさせておびき出そうということか。

「そうか、でも、北の塔に行くのは止められない。どうしてもダメなのか」

 アルはどうにかならないかと兵士に詰め寄った。

 兵士は王族の気分を害してはいけないと考えたのだろう、「どのような用件で行かれるのですか?」と、おずおずと尋ねた。

 アルは仕方ないなというように、大きくため息をついた。

「さっき北の塔に飛んでいったスカーフを取ってきて貰ったけれど、スカーフにつけていた留め具がないんだ」

 いつ持って来たのだろう、アルはポケットからスカーフを取り出した。

「スカーフの止め金具ですか?どのような物か教えて頂ければ、私が行って取ってきます」と、兵士は言った。

「君には見つけられないよ」

 アルは少し冷たい口調で言った。

「どういうことですか?」

 若い兵士は自分の能力を否定されたと思ったのだろう。顔には出さなかったが不満に思ったのが私には分った。

 アルも感じ取ったのか、「あ、君を否定しているわけじゃないんだ。ちょっと特別な物だから魔法を掛けているんだ」と訂正した。

「魔法ですか?」

 兵士はキョトンとしている。

「ああ、お気に入りの物だから、俺にしかわからない魔法を掛けている。だからこのスカーフを取ってきた者も見つけられなかったのだろう」

 それがその場しのぎの嘘だと分っているけれど、アルは演技派らしい、本当の事の様に兵士と話している。

「そうですか。そういうことでしたら、私もお供させて頂きます。少しお待ちください、隊長の許可を頂いて参ります」

 兵士はアルに頭を下げると、少し離れていたところにいた隊長の下に走って行った。隊長は私たちの様子をずっと見ていたようだった。

 兵士が隊長に説明している。

 アルはその様子を見ながら、黙って兵士を待った。

 しばらくして兵士が戻って来た。

「隊長は何と?」

 待ち構えていたようにアルが聞いた。

「北の塔には見張りが残っているので、少しの時間ならとのことです。ただし、何処に侵入者が潜んでいるかわからないので用心するようにと言われました」

 アルは兵士の報告を聞き、「わかった。迷惑をかけるね」と言って、北の塔に向かって歩き始めた。

 北の庭園を抜けると、森の中に入った。木々が等間隔に植えられている。ここも整備された庭園の一部のようだ。

 木の陰に侵入者が隠れているかもしれないと用心しながら進む。

 さいわい襲われることもなく北の塔の前に出た。

 塔の前には二人の兵士が立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ