城の地下3
隠し通路はゆっくりと下っていた。
この通路は、昨夜アルの執務室に続いていた通路と違い横道がない。
黙々と下っていく中で、ヒラリーが不安気に尋ねた。
「ずっと下っているみたいね」
「ヒラリーはこの道を知っていたのではないの?」
グレッグがヒラリーに尋ねた。
「自分で歩いたわけではないから知らないわ。隠し通路に入ったら、あの出口のところになっていたのよ。出るときに仕掛けがあって苦労したことしか覚えてないわ」
まあ、ゲームの様な二次元の世界では坂道なのかどうかは問題ではないので、ヒラリーが知るわけがないかと私は納得した。
急に道が平坦になった様な気がした。
アルが突然立ち止まった。
「平坦になったね」グレッグが私の思った事を口にした。
「ここから先は真っ直ぐにはいけない。正面は壁だ。壁の左右に道があるけれど、どっちに行こうか」
確かに目の前は壁になっている。
「北の塔に行きたいのだから、北に行けばいいんじゃない」
ヒラリーが簡単に言う。
「北かぁ」アルとグレッグが顔を見合わせた。
「あのホールは縦に長かったでしょう。私たちが通路に入ったのはどっち側?」
「あそこは北側の壁だから、今まで下ってきたのが北方向になる」
「それじゃあ、この通路は西と東に向かっているのね」
「そうとも言えない」
「どうして?」
「よく見てごらんよ」アルが小さなファイアーボールで脇道を照らす。脇道はゆるくカーブしていた。
「ここで立ち止まっていても仕方ないんじゃない。どっちでもいいから進みましょうよ」とヒラリーが言った。
「確かにそうだな」
アルとグレッグもヒラリーの楽観的な意見に同意した。
「では、どっちに進む?」
「左の行ってみましょう。カーブしてるということは回っているかもしれないでしょう。次の次くらいに北に向かう通路に出くわすかもしれないわ」
ホントにヒラリーは楽観的だ。まあ、こういう状態の時落ち込まれるよりはいい。
昨日の地下通路を見ていなかったら、私もヒラリーの様に簡単に考えられるのだが・・・
何気なく考えたことが口に出ていたようだ。
「この地下通路が作られたのはいつ頃のことなのかしら?」
「この城は、初代の王様が建てたと聞いている」と、アルが教えてくれた。
「初代。かなり昔ね」
「これだけ大きな城だから、何年もかかったのでしょうね?」
ただ歩くだけでは退屈なのだろう。ヒラリーも話しに入って来た。
「一晩で建てたらしい」
アルのこの話は、みんなを驚かせた。
「まさか、一晩で?」
「城の周りにシールドが張ってあるだろう。あれもその時張られたらしい」
「えっ、それって、最初の王様って、かなりチートな人だったのね」
ヒラリーがまたわからない言葉を使う。
「チートって?」
「並外れた、現実的ではない力を持った人の事だと思う。たぶん・・・」
言葉の最後の方が小さくなったのは、ヒラリーもよく解っていない気がする。
「チートか何かは知らないけれど、とってもすごい魔法使いだったと聞いている。ふらりとやって来て、あっという間に周りの小さな町を纏めて王国を作ったらしい」
そんなすごい魔法使いが、一晩で建てた城の地下。私たちにわかるはずがない。
しばらく歩いていると、また道が分かれていた。1つは道なりに回っている道。もう一つは左に上っていく道だ。
「ヒラリーのさっきの話しを参考にすると、この上っている道は西かもな」
アルが通路の壁を触りながら言った。
「じゃあ次の分かれ道が来たら、上ってみましょう」
ヒラリーの声は明るい。
そんなに単純だろうかと不安になる。
しばらく歩いて、次の通路を左に行こうとしたとき、アルがあることに気付いた。
「この通路は降りてきた道だ」
「どうしてわかるの?」
「俺はずっと辿ったところに印をつけていた。ここにその印がある」
確かにそこにはアルがつけたと思われる印があった。
「いったいどうなっているの?」
ヒラリーは不満を隠す気はないようだ。顔しか見えないからわからないけれど、多分手は腰に当てているのだろう。
「この通路は一筋縄ではいかないみたいだね。通路に入るときもブロックのカラクリがあっただろう。多分この通路の何処かにカラクリがあるかも知れない」
「じゃあ、このまま進んで、次の通路を上ってみましょうよ」と、ヒラリーが言った。
確かにヒラリーの言うとおりだ。もし一周回っていたとしたら、もう一つの通路が北に出る通路かもしれない。
「しかし、あのカーブの角度で一周したとは考えられないけどな」
アルが私にだけ聞こえる声で呟いた。
そう言われてみればそんな気もする。カーブはかなり緩やかだった。一周するには早すぎる気もする
私たちは道なりに進み、次の分かれ道のところから左の道を上っていった。
上に着くと、そこにもブロックを動かして開けるカラクリがあった。
ヒラリーは入った時と同じようにブロックを動かした。
ブロックはカチリと当たり、ブロックの扉が動いた。
そこは暗く埃臭い小さな部屋だった。
「ああ、ここだわ」
ヒラリーが安心したように言った。
その時、私の耳に話し声が聞こえた。
「シッ、ヒラリー様。誰かいます」
アルとグレッグが警戒の態勢を取る。
小さな部屋にある扉の前にそっと近づく。
扉に耳を当てると、アルやグレッグの耳にも話し声が聞こえた。
「この扉の向こうがどうなっているかわかる?」
アルがヒラリーを見た。
「確か廊下だったと思うわ。廊下の先に部屋があるわ。人がいるとしたら多分そこだわ。その部屋は、北の塔の地下室なんだけど、人を隠すのに最適なところよ。
「わかった。ここは俺が調べてくる。君たちはブロックの向こうに隠れていて。この壁の厚さなら、俺は移動魔法を使えるから心配しなくていいよ」
アルは私たちを残して、一人部屋を出て行った。




