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イベントとパーティ

 馬車はローレイル公爵邸の前で停まった。

 馬車を降りて屋敷の中に入ると、ヒラリーは大きく深呼吸をした。

「馬車の中で何も話せないなんて拷問だわ」

 私はすかさずサーシャリアの式が屋敷の中について来てないか確認をする。うわさ鳥は検知できるようになっているが、馬車の中には違う式が張り付いていたからだ。

 気配を探る。どうやら屋敷の中にはいないようだ。

 私はホッとすると同時にヒラリーを見た。

 ヒラリーは1つ大きく息を吸い込むと、深呼吸を止めた。

「イルカは気付いたかしら、あの馬車の中にうわさ鳥とは違う式が潜んでいたのを」

 ヒラリーはあの式の存在に気付いていたらしい。

「何となくそんな気はしていました」と言う私の言葉を最後まで聞くことなく、ヒラリーは自分の部屋に向かった。

「ヒラリー様、そんなに急がれてどうされたのですか」

 私の問いかけにヒラリーはピタリと足を止めて振り返った。

「決まっているじゃない。さっき聞いた地下ダンジョンの事を検討するのよ」

「サーシャリア様は、今度のパーティの時と言われてましたが・・・」

「ええ、確かに彼はそう言っていたわね」

 再びヒラリーは部屋に向かって歩きはじめた。

「違うのですか?」

 問には答えずにスタスタと歩いて行くヒラリーを、私は慌てて追った。

 ヒラリーは部屋に入ると机の引き出しから一冊のノートを取り出した。

 これまでの経緯が書いてあるのかと覗き込んだら、何も書いていない白紙のノートだった。

 私がガッカリしたのを見ていたのだろう。ヒラリーは口を尖らせてムッとした表情で私を睨んだ。

「これまでの事ではなく、これからの事を書くのよ」

 別に何も聞いたわけではないけれど、ヒラリーはノートの初めのページに『地下イベント』と書いた。

「地下イベントですか?」

「そうよ。サーシャリアは今度の披露パーティと言っていたけれど、私の記憶だと雪が降っていたんだよね」

「ヒラリー様はモブなのに『地下イベント』に参加していたのですか?」

「何言ってんのよ!ゲームをするときの私はヒロインなのよ。聖女だったの」

「えっ、ヒラリー様が聖女ですか?」

「あー、もう!ゲームをするときにはヒロインになのよっ!」

 ヒラリーの顔が赤くなってきた、いまにも癇癪が出そうだ。

「すみません、私はゲームとやらをしたことが無いものですから」

 ヒラリーはジロリと私を睨んだ。

「そんな事わかっているわよ!」

 ヒラリーは、「まったく、肝心なときに話しが通じないんだから」としばらくブツブツと呟いていた。

 私はというと、癇癪の収るのをじっと待つしかなかった。

 しばらくじっと待っていると、ヒラリーが諦めたように言った。

「イルカ、あんたに言っても仕方のないことだった。でも、あんたに手伝ってもらいたいのよ」

 何を手伝うというのだろう。ヒラリーの次の言葉を待つ。

「ゲームをしたのはずいぶん前のことだし、私の記憶も曖昧だというのは知っているわね」

 私は頷く。「そこで、私の記憶を呼び起こすために、色々質問をして欲しいの」

「質問ですか?」

「そう、たとえば、私は地下イベントの時雪が降っていたと言ったでしょう。それについて、どうして雪が降っていたと思ったのかとか、その時はどんな状況だったのかとか聞いて欲しいの。一人で考えるよりも良いと思うでしょう」

 確かに。しかし、あれこれ質問して「うるさい!」と叱られないだろうか?

「さあ、聞いてちょうだい」

 私は迷ったあげく、ヒラリーが最初に言った「どうして雪が降っていると思ったのか」と聞いてみた。

「最初の覚醒のパーティのあと学校がはじまって・・・聖誕祭のパーティまでは何も無かったと思うの」

「聖誕祭のパーティ?」

「イルカも知っているでしょう。我が国に最初の聖女が現れた記念日」

「ああ、聖女の日の事ですか?」

「そうよ。巷では聖女の日と言って各地でお祭りがあるわ。でもお城では聖誕祭と言ってパーティが開かれるのよ」

「では『地下イベントは』聖女の日なのですね」

「話の流れ敵にはそうなるわね。でも、サーシャリアのゲームでは違うのかもしれない。だから次のパーティがそうなのかもしれない」

「地下イベントはパーティの後なのですね」

「そうよ、パーティの時に誰かが聖女に声を掛けたの、聖女が化粧室に行こうと席を立って部屋の外に出た途端、薬を嗅がされて意識を失ってしまうの。聖女が何処かわからないところで目を覚ましたのだけれど、とても寒いところだったのよ。鉄格子の付いた窓の外に雪が降っていた」

「誰が聖女を閉じ込めたのですか?」

「それはもちろん公爵令嬢よ」

「公爵令嬢ですか?」

「乙女ゲームだもの。悪役令嬢が犯人に決まっているでしょう」

「では取り巻きであるヒラリー様もその一件に加わっていたのですか?」

「私はそれには加わっていないわ。領地の聖女の日のお祭りの手伝いでいけなかったのよ。それなのに、国外追放の罪名の中に『聖女誘拐事件』の仲間として入っていたのよ」

「じゃあ、ヒラリー様は『地下イベント』には参加されないのでは?」

「あ、そういうことになるわね」

「ヒラリー様が聖女の日にお城のパーティに出ないと言うことは、私も行けないと言うことですよね」

「そうなるわね」

「ヒラリー様はどうして領地の聖女の日の手伝いをすることになったのですか?」

 ヒラリーの性格だと手伝いの種類によっては参加しないのではないだろうか。

「私はモブだから、そんな説明があるわけないでしょう。ゲームの中で罪状を読み上げられたときに、ヒラリーが『私はそれに参加していません』と抗議をするけれど聞いて貰えなかった旨の小さな説明が書いてあったのよ」

「で、聖女は何処に閉じ込められていたんですか?」

「お城の使われていない塔の地下室だったわ」

「で、誰に助けて貰ったのですか?」

「私はグレッグ様のルートをしていたから、もちろんグレッグ様よ」

「そしたら、グレッグ様はそのパーティに参加するんですね」

「そうね、参加していたわ」

「じゃあ、もしパーティがあれば、グレッグ様のパートナーとしてヒラリー様もそのパーティに参加できますね」

「あら、そうだわ。私はグレッグ様の婚約者ですもの。グレッグ様のパートナーとして参加しないといけないわ」

「では聖女の日の聖誕祭のパーティにはグレッグ様のパートナーとして参加できるとして、今度ある聖女のお披露目のパーティにはグレッグ様は参加されるのですか?」

「待って、聖女が覚醒した後、パーティらしきものが開かれた記憶があるわ。それにグレッグ様も参加されていたわ」

「では、聖女のお披露目のパーティにも参加できますね」

「話しの流れからしたら、多分グレッグ様のパートナーとして参加すると思うわ」

「では、両方のパーティとも参加できると言うことで、後はサーシャリア様のゲームの『地下イベント』がどうなっているかですよね。あちらは魔女が出てくるので予想も出来ませんが」

「確かにそうね。こちらとしてはどちらかのパーティで『地下イベント』が始まると思っていた方が良さそうね」

 ヒラリーのノートに地下イベントに繋がるであろう2つのパーティが追加された。


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