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カフェで初会合

 午後三時ぴったりにサーシャリアの手配した馬車が玄関の前に停まった。

 サーシャリア当人は乗っていなかった。

 従者が一人馬車の中から降りてきた。

 サーシャリアは朝から用事で出掛けて、迎えの時間に戻れそうもないとのことで、出先から直接待ち合わせ場所に行くので、案内の役目を頼まれたと従者は言った。

 馬車は小さくもなく、大きくもない。ちょうど良い大きさの落ち着いた色合いの馬車だった。

 従者は私たちを馬車に乗せると自分は馭者の横に座った。

 馬車は静かに動き出した。

 座席に落ち着くなりヒラリーは扇を口元に当てて呟いた。

「私たちだけのように見せかけているけれど、どうせ何処かから見ているのでしょうね」

 私は先日のうわさ鳥を手に取ったことで、サーシャリアの魔法の色が見える様になっていた。目に付くところではないけれど、馬車の中にもうわさ鳥と似たような気配を感じていた。

 初めてうわさ鳥を見た日、サーシャリアはご丁寧なことに、ローレイル侯爵家の各所にうわさ鳥を飛ばしていた。

 私は窓枠に挟まっているものや、本の隙間に入っているものを、たまたま掃除の時に見つけたフリをして取り除いた。そして、それをヒラリーに見せた。

 ヒラリーは恐ろしい形相で私の手から奪い取ると、うわさ鳥を見つけ次第燃すようにとメイド達に指示を出した。

 私は魔法が見えるので、何処にうわさ鳥が隠れているか分っていたが、下手に動くと私の能力がバレる恐れがあるので、メイド達の働きを黙って見ていた。

 私が動かなくても、メイド達は薄ペラなうわさ鳥を良く見つけてきた。

 しかし、取っても取っても何故か減らなかった。

 ヒラリーではないが、私もいったい何枚飛ばしているのだ!と怒りたくなった。

 このままだと、プライベートが脅かされると考えたヒラリーは、うわさ鳥が屋敷の至る所に隠れていると父親に報告した。驚いた侯爵は回収したうわさ鳥を見て、私と同じように魔法の色が見えたのだろう。執事とメイドに指示を出して屋敷中のうわさ鳥を焼き払った。もちろんサーシャリアの父親のウッドダム侯爵に苦情の連絡を入れる事も忘れなかった。

 ローレイル侯爵は全てのうわさ鳥を焼き払った後、二度と入ってこないように、屋敷中にシールドを張った。


 小一時間ほどで馬車は、賑やかなショップが並ぶ街の通りに入った。そして、大きな窓のある店の前で停まった。

 ショップが並び人通りも多い通りなので、馬車を停めおくスペースはなく、従者は私たちを降ろすと、馭者に馬車を通りを外れた広い道の所で待つように指示を出した。

 従者が馬車の馭者と話しをしている間、私たちは大きな窓から店の中を覗いてみた。

 テーブルと椅子がある。テーブルの上にはケーキとカップがのっている。

 とても繁盛している店のようで、人々はお茶を飲みながら何やら楽しそうに話しているのが見えた。

 どうやらここはカフェの様だ。

 空いている席はあるのかしらと除いていると、奥の方にサーシャリアの姿が見えた。

 サーシャリアの従者は店の扉を開けて私たちを中に入るように言った。

 店に入った途端、コーヒーの香りが漂ってきた。

 コーヒーの匂いはこの世界に来てから初めて嗅いだような気がする。

 入り口を入って店内を見ると、1階席と2階席があった。

 2階席は1階席の上に張り出している。

 奥の左右に2階に上る階段があった。

 従者はサーシャリアを見つけて、私たちを彼のところまで案内した。

「ごめん、ごめん。迎えに行くつもりだったんだけど、用事が出来てしまった」と言い訳をしながらサーシャリアが私たちを迎えた。

 ヒラリーはうわさ鳥の件で腹を立てていたので、サーシャリアに冷たい視線を向けた。

 サーシャリアもヒラリーの視線に気付いたのか複雑な顔をした。

「ヒラリー嬢、申し訳なかった。もう君の所にはいないから安心して」

 ヒラリーの横に行き、小さくそう呟いているのが聞こえた。

 ヒラリーは何にも言わなかったが、サーシャリアはそれでうわさ鳥の件は住んだと思ったようだ。

 サーシャリアは私たちを2階の席に連れて行った。

 ヒラリーはテーブルに着くと、キョロキョロと店の中を見回した。

「なかなかいいお店じゃない」

「でしょう。最近出来たお店だけれど、僕の一推しなんですよ」

 サーシャリアは嬉しそうだ。

 カフェのメイドがメニューを持って来た。

「何にしますか。ここはコーヒーもあるんですよ」とサーシャリアはメニューを見ながら尋ねた。

「お店に入った時からコーヒーの匂いがしてたわ」

「この国でコーヒーは珍しいですからね。この店を見つけてコーヒーを飲んだときは嬉しかったな」

「私もコーヒーを飲みたいわ。あ、それから、イルカも一緒にいいかしら」

 ヒラリーは小間使いの私を同席しても大丈夫かとサーシャリアに聞いた。

「イルカさんは、殿下の側近ですよね。僕はかまいませんよ」

 私をヒラリーの使用人ではなく、殿下の側近としてならかまわないと言うことだろうか。

「ありがとう。では、コーヒーを2つとケーキをお願いします」

 ヒラリーはメニューのケーキを指さした。

 私はヒラリーの隣に座り、サーシャリアはメイドにコーヒー3つとケーキを注文した。

 メイドが注文を聞いて席を離れると、ヒラリーがサーシャリアに聞いた。

「ところであなたこんな小洒落たお店を知っているなんて、転生前はいくつだったの?」

「僕は大学3年生でした。ヒラリー嬢はいくつだったんですか?」

「私は大学を卒業して社会人になった所だったわ。あなたより年上ね」

 ヒラリーが年を誤魔化したので、思わず吹き出したくなった。

「この世界では僕の方が年上ですからね」

「そんな事わかってるわよ」ヒラリーがムッとなる。

 そこへメイドがコーヒーとケーキを持ってきたので、話しは一時中断した。

 一口コーヒーを飲んだヒラリーがホーッとため息をついた。

「懐かしい味・・・」

 ヒラリーがため息をつきたくなる気持ちもわかった。私も一口飲んで懐かしいと思ってしまった。

「イルカは初めてよね。苦くない?」

「いえ、美味しいです」

 知ってるとは言えないので、ただそう答えた。

「ここのコーヒーの味はいいと思うよ」

 コーヒーを飲んでしばらく郷愁に浸っていた。

「そういえば、やはりあなたのゲームが主流になってきてるの?」

 何を思ったのか、突然ヒラリーが話し出した。

「先日、聖乙女隊も編成されたし、僕の方が主流だと思うよ」

「そうね。私の方では聖女は一人だったものね」

「そういえば、来週か再来週にパーティを開くと言ってました。そこで、聖乙女隊の正式な発表が行われる予定です。僕の予想では、そのパーティが地下イベントにつながると思います」

 サーシャリアがサラリと次のイベントの予想をしたので、ヒラリーは驚いた。

「地下イベント!そんなに早かったっけ?」

「僕のゲームでは、パーティの後イベントが発生しましたからね」

「そういえば、私のゲームでも何かのパーティの後だったわ。でも、雪がふってたような気がする」

「雪ですか?僕のゲームでは雪は降ってなかったと思います。だから今度のパーティだと思うのですよ」

「そのパーティは私たちは招待されるのかしら」

「イベントが同じなら、招待されるんじゃないですか?」

 サーシャリアはどの範囲で招待状を出すのかはわからないと言った。

 それを聞いたヒラリーは、慌ててコーヒーとケーキを食べ終わると、「こうしてはいられないわ。イルカ帰るわよ」と席を立った。

「もう、帰るの?じゃあ馬車まで送るよ」

 サーシャリアは急に帰ると言い出したヒラリーに呆れながらも、馬車まで送ってくれた。

「それじゃあ、またね」とサーシャリアが手を振る。

「ありがとう、今日は楽しかったわ」とヒラリーも手を振って、サーシャリアとの初会合は終わった。


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