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聖女覚醒

 王宮の第3ホールの下見は簡単に許可が下りた。

 こんなに簡単に一般市民を王宮に招いていいのだろうかとも思ったが、そこはアルが旨く話しを付けてくれた。

 アルに下見をする本当の理由を話すわけにいかないので、ヒラリーが事前に場所を見たいと言うとこにした。その場所の記憶があるのはヒラリーだから、第3ホールでイベントが起るのかを確かめたかった。

 私はアルの側近として初めて王宮に行った。

 ヒラリーは父侯爵と何度か王宮に来たことがあったので、私ほど緊張はしてないようだった。

 第3ホールは、大ホーと比べたら小さな部屋だ。東の庭園に面したところにバルコニーがある、庭側一面がガラスで仕切られた長方形の部屋だった。上の方はモザイクの色ガラスがはめ込まれ、パーティなどの時にはオープンに開き、バルコニーと一体になるように出来ていた。

 バルコニーの反対側には扉が3つついていた。2つはホールから続く部屋で、もう一つは配膳の為の入り口のようだ。

 その扉の上にひさしの様に飛び出た欄干が見える。そこからホールに降りる階段があった。階段の上の扉から、王族の方々がホールに登場するときに使われると聞いた。

 招待客が入場する扉は、長方形の短い部分の壁に有り、私たちはその扉の前に立って部屋の中を見ていた。

 ホールにはシャンデリアが3つ並んで下がっていた。

 3つとも同じ大きさの同じデザインだった。

 私はこっそりヒラリーに囁いた。

「どのシャンデリアです?」

 ヒラリーはシャンデリアをしばらく見上げて、「わからない」と予想したとおりの返事を返してきた。

 同じ大きさの同じデザインだったらわからなくても仕方がない。

 シャンデリアを吊す金具は丈夫に見えた。

 しかし、ヒラリーの話だと、シャンデリアは落ちるらしい。庭園側のガラスの扉を解放したら、どのシャンデリアも庭園から狙うことが出来た。

 今の段階では落ちる心配はないみたいなので、パーティの始まる前にもう一度チェックをすることにした。


 5年生になって、魔法も座学だけでなく実技も始まり、慌ただしく過ごしている内に、パーティの日がやって来た。

 私はグレッグとアルトと一緒に、パーティが始まる前の偵察をしていた。

 パーティ会場から見えないところに、警備の兵士が立っている。

 兵士と話しをしていると、第1王子の側近達も同じように偵察に出ていた。

 第1王子ジョイールの側近は、同級生のスコットと1年の時剣を交わした子爵令息のクロード、そして2学年上の魔法科のサーシャリアだ。

「やあ、グレッグ。君たちも偵察か?」

 スコットがニコニコと話しかけてきた。

 それぞれの王子の側近をしているが、仲が悪いということはない。

「やあ、スコット。一応見回りをして確認をしないといけないからね」

 グレッグも笑顔で答える。

「そうだね。何事もなく無事だったらいいね」

 スコットはそう言って、私たちから離れていった。

「そろそろお客様が到着される時間だ。私たちもフェアルート殿下の警護につこう」

 グレッグは顔を引き締めて、アルトと私を見た。

 今日は私たちは部屋の隅から王子の警護をすることになっていた。

 グレッグもアルトも婚約者がいるので、なるべくパーティに参加してもらいたいと思っている。アルとの事前の打ち合わせでは、アルの側には私がつくようにしていた。


 第3ホールに人が集まり賑やかになってきた。

 ヒラリーは父親のローレイル侯爵のエスコートでホールに入ってきた。

 私を見つけると父親と別れて近づいてきた。

「イルカ、首尾はどう?」

「今のところ異常は無いみたい」

 私はヒラリーと話しながら、シャンデリアを吊っている金具に目をやった。金具は異常が無いように見えた。

「あっ、聖女もどきがきたわよ」とヒラリーが私の肘を叩いた。

 入り口を見ると、聖女もどきがアレド伯爵にエスコートされて入って来た。そのすぐ前を、公爵令嬢が兄だろうかよく似た青年といる。

 このシチュエーションは良くないのでは。と思って見ていると、聖女もどきの後から、卒業後魔法省に入ったアンジェラとアンドレとハンターが入って来た。彼等も呼ばれているようだ。

 招待客が揃うと、国王と王子達が階段の上に現れた。

 歓声が上がる。

 国王の挨拶があり、王子達の挨拶があった。

 国王は降りてこずにそのまま退出した。国王が退出した後、王子達が階段から降りてきた。

 貴族達が順番にお祝いの言葉を述べていく。

 ヒラリーは早々に終わらせて私のところに来た。

 それが終わると、楽団が音楽を奏で、パーティが始まった。

 客そっちのけでアルがグレッグを連れてやって来た。

「主賓はダンスの時間では?」

 私の言葉に、アルは「ダンスはジョイールに任せるよ。俺はダンスは苦手だ」と返した。

 ホール中央を見ると、ジョイールが聖女もどきと踊っていた。

「グレッグ、俺はイルカといるから踊ってきていいよ。ほら、アルトもアイリスと踊っている」

 本当だ、アルトはアイリスと楽しそうに踊っている。

「では、少しの間、私も失礼して踊ってきます。ヒラリー、私と踊って頂けませんか」

 ヒラリーの顔が少し恥じらうように赤くなった。」

 そういえば、ヒラリーがグレッグと踊るのは初めてではないだろうか。

「行ってらっしゃい」

 手を振る私たちをおいて、2人は踊りの中に入って行った。

「アルは本当に行かないの?」

 私の問いかけにうんざりした顔で、「ジョイールは踊るのが好きだからいいけど、俺は本当に踊りたくない。聖女候補全員と踊るんだぜ」

「聖女候補全員?」

「そう、聖女候補5人」

 アルがおかしな事を言った。

「聖女候補って5人もいるの?」

「この間まで3人だったのに。辺境伯のところの双子の姉妹がどうやら候補に入ったらしい。年は俺たちより2つ上らしい」

 聖女候補が5人。聞いてないというより、ヒラリーも知らないのでは!?

 その時異様な気配がした。

 アルも気付いたらしい。同時に庭を見た。

 解放されたバルコニーの先に魔女がいた。

 魔女は部屋の中に向けて手をサッと振ると、ニヤリと真っ赤な口で笑って消えた。

 その時ホールからガシャンという音とキャーッという叫び声があがった。

 私は慌てて振り返りシャンデリアを見た。

 シャンデリアは3つとも落ちていた。

 私はヒラリーを探した。

 ヒラリーは奥の壁際にグレッグと一緒にいた。

 魔法が使える誰かが、落ちたシャンデリアを浮かせて他の場所に移動している。

 聖女候補は・・・

 何故か聖女候補は5人とも無傷の様だ。怪我をした人達に治癒魔法や回復魔法をかけている。

 しかし、怪我人が多い。

 聖女候補達も魔力が切れてきたのだろうか、顔に疲労の色が浮かんでいる。

 聖女候補の魔力が切れるかと思ったその時、部屋全体が光った。

 部屋が光ったのではなく、聖女候補達が光っている。

 ヒラリーは、聖女が覚醒するとき光ったと言っていた。

 え?まさか?みんな覚醒した?

 聖女って1人じゃなかったの?

 覚醒した聖女候補達は、切れかけた魔力が戻り、再び治癒魔法、回復魔法を始めた。

 聖女候補達のおかげで、魔女が起こしたシャンデリア落下事件で、怪我が残った人はいなかった。

 公爵令嬢の足も傷も綺麗に消えて治癒された。


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