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次のイベント

 アルとグレッグが出て行くと、ヒラリーはホーッと大きなため息をついた。

「グレッグ様と殿下に深く詮索されなくてよかったわ」

 私が事故現場に行ったのは、ヒラリーがゲームを思い出したからだ。それを、サンドラの話を強調することで、私が現場に行ったことは曖昧になって、うまく話題を変えてしまった。疑問をもたれなくてよかったと喜ぶべきだろうか。いや喜ぶべきだろう。ヒラリーが土壇場でゲームの事を思い出さなければ、今頃はアルの葬式をしていたかもしれないのだから。

 それに、ヒラリーが転生者で、ここがゲームの世界で、これから起ることがわかっていると知られるととても不味いことになる。アルだけでなく、ヒラリーまで狙われてしまうだろう。

「イルカ、この休みと言うより、領地に戻ったら、今回の事をお父様に相談するつもりよ。フェアルート第2王子を守る為に、あんたはローレイル騎士団に参加して腕を上げなさい。王子の側近としてグレッグ様の補助をするのよ」

 ヒラリー、アルを守るのではなく、グレッグを守れと言っているのだろうか・・・?

「わかりました。私は鍛錬を休まず続けておりますが、これからはもっと頑張ろうと思います。その代わり、今回はギリギリ間に合いましたが、ヒラリー様は、ゲームが始まるまでに殿下が死なないように、ゲームの内容をしっかり思い出してください」

 少し強く言ったので、ヒラリーは顔をしかめた。

「わかってるわよ!」

「本当ですかぁ?」

 私は思いっきり疑わしい顔をしてヒラリーを見た。

「あー、うるさい!思い出せばいいんでしょう」

 ヒラリーは命令をするのは良いけれど、自分が命令をされるのは嫌なのだ。頼まれたこを自らの進んでやってあげようという行為は彼女の頭のにはないようだ。捨て台詞を残して寝室に逃げ込んだ。

 そんなヒラリーの態度はいつもの事なので、私はヒラリーが閉じこもって出てこないうちに、部屋をそっと抜け出した。

 中央階段にあった『keep out』はすでに解除されたようで見当たらなかった。

 階段を降りて、近くにいた使用人にそのことを尋ねると、『じじい‘ず』の行動制限は解除されたと教えてくれた。誤解の無いように付け加えておくが、使用人は『公爵様と伯爵様』と言ったのを、私が『じじい‘ず』と変換しただけなので、使用人が言ったと思わないように。

 その夜は、魔女騒動で集まった人達全員の慰労を兼ねて、結構賑やかな晩餐会が行われた。

 今回はヒラリーと私も仲間はずれにされることなく出席を許された。そんな事もあって、ヒラリーの機嫌はとてもいい。グレッグの隣でニコニコしていた。

 グレッグはアルの警護に、ヒラリーはグレッグの側に、私はヒラリーについていたので、必然的に4人で固まっていた。そこに、アンドレがやって来て、「こんばんは」とヒラリーと私に微笑みかけてきた。

 アンドレは侮れない存在だから、私は心を読まれないようにガードして、挨拶の後はサッとヒラリーの影に逃げた。ヒラリーはアンドレと一言二言笑顔で会話をしていたが、警戒したのか興味が失せたかで、すぐにグレッグの元に戻っていた。

 そんな感じで、私たちが相手にしてくれないことがわかったのか、アンドレはちょっと寂しそうな顔で、ハンターとアンジェラの元に戻っていった。

 ため息をつきながら戻って来たアンドレにハンターが声をかけた。

「振られたようだね」

 アンドレは仕方ないという風に、肩と両手を挙げた。

「で、何か読めたの?」

 アンジェラが飲み物の入ったグラスを渡しながら尋ねた。

「あの黒髪の子は、僕の姿を見た途端ガードを固めて読ませてくれなかった」

「もう1人の、ハンターの義妹になるかもしれない子は?」

「あの子は俺の目を見ながら『フーン、イケボでビケイ、どんだけなんだ』と笑いをたたえた心の中で考えていたね。それ以外は全然読めないんだ」

 アンドレは意味がわからないと頭を振った。

「そうか、俺にはイケボもビケイもわからないけれど、義妹になるかもしれない子は、アンドレの魔法が効かないと考えて良いかもな。それはそれで、公爵家に取ってはプラス材料だね」

 ハンターはアンドレのグラスに自分のグラスをチンと合わせると、にっこり笑った。

「おい、ハンターの笑顔が気持ち悪い」

 アンドレがアンジェラに助けを求めた。

「仕方ないわね。身内としては、アンドレに易々と心の中を見られるようでは困るものね」

 アンジェラも笑いながら、アンドレとグラスを合わせた。

 そんなこんなで夜も更けて、私たち子供は早々に部屋に戻された。

 大人の方々は夜遅くまでわいわいと騒いでいたようだ。彼等に取っては寝る間もなく。朝になった事だろう。

 夜が明けると、集まっていた人々は、初めから休暇で来ていた、私たちを除いて皆帰って行った。

 あの事件以降魔女も現れず、サンドラの嫌みに辟易しながらも、残りの一週間を別荘で過ごした私たちも無事に領地に戻った。

 私はヒラリーとの約束通り、新学期までローレイル騎士団で訓練に参加して過ごした。


 あれから2年、アルが命を狙われることも無く、無事に5年生に進級した。

 もちろん、他のみんなも落第することなく進級した。

 私の魔力も10から50に上がった。他の生徒と比べたらまだまだ少ないけれど、火と水と風のほかに土の魔法も使えるようになったので、魔法科から追い出される事はなかった。

 あの事件以来1年半、みんなに内緒で、授業以外に週に1回アルと魔法の練習をしている。浮遊魔法や移動魔法も教えてもらった。どうして内緒なのかというと、アルも私も自分の魔法を人に知られたくないからだ。学校で習う魔法が表に出るのは仕方のないことだけど、どんな魔法が使えるか敵に知られないためである。

 この1年半、何事も無かったと言っても油断は出来ない。あの時、洞窟の壁を壊した敵が誰だったか未だに掴めていない。そのくらい敵は巧妙に姿を隠していた。

 こんな時こそヒラリーの記憶なのだが、ヒラリーはまだゲームの内容を思い出せていなかった。

 アルが生きているから、ゲーム内容は変わったと思うけれど、卒業前の国外追放は絶対避けなければならない優先事項だ。

 そんなある日、女子寮のヒラリーの部屋でお茶をしていた。

 最近はお互いの部屋を行き来して、お茶を飲みながらゲームの内容を思い出してもらえるよう、ヒラリーと色々くふうをしていた。

 今日も私から「思い出しました?」と聞かれて、ブーッと頬を膨らませるヒラリー。

「ゲームをしなくなって何年経ったと思っているのよ。だいいち私はモブキャラなのよ。思い出せないのは仕方ないでしょう」と逆ギレされてしまった。

「そうは仰いますがヒラリー様。ゲームはヒロインが主人公だったのではないですか?」と私も言い返す。

 早く思い出してもらわないと、本来なら存在しない第2王子にどんな災いが降りかかるか心配なのだ。

「確かにゲームはヒロイン中心で進むけど、私はグレッグ様のルートしか知らないのよ!」

 ヒラリーが私を睨む目が恐い。

「ゲームがどんなものなのかよく解りませんが、いくらグレッグ様のルートと言っても、ヒラリー様がヒロインの聖女でやっていたのなら、ヒロインがいつ覚醒したとか覚えているものではありませんか。そんな時は、ヒラリー様がよく言われているイベントが発生したのではないんですか?」

 私がたたみかけるように言ったので、ヒラリーは少したじろいだ。

「そうね・・・ちょっと待って、ヒロインが覚醒したのは・・・確か・・・何かのパーティの時だったと思うわ」

「パーティですか?」

「そう、大きなシャンデリアのある広間で、パーティが開かれていたのよ。丁度ヒロインがシャンデリアの下に立っているとき、ヒュッと音がして、シャンデリアを吊していた金具が外れて、ヒロインの上に落ちてきたのよ。間一髪でヒロインはそれを避けるんだけど、その時側にいた公爵令嬢の上にシャンデリアが落ちたの。公爵令嬢は大怪我をして死んでいるかもしれないとみんなが騒いでいたわ。それを見たヒロインが回復魔法と治療魔法を発動するのよ。その時画面が光って、ヒロインが覚醒したのがわかるのよ」

「画面が光る?」

「ああ違う、画面じゃないわ、その場所に光が溢れるのよ」

「光が溢れる」

「そう、その光が、もしかしたら死んでいたかもしれない公爵令嬢の傷を治していくのよ」

「ほう、本当に聖女みたいですね」

 私が感嘆の言葉を発すると、ヒラリーは首を振った。

「でも、全部の傷は綺麗にならなかったのよ」

「と、言うと?」

「公爵令嬢の足に、醜い傷跡が残ったのよ」

「それは気の毒に」

「そう、そのことがあって、公爵令嬢は周りから傷物扱いされて、結婚相手としては望まれなくなったのよ。元から傲慢な人だったから、他人から嘲られてると思ったのね。だんだん卑屈な性格になったの。それで聖女を恨んで虐めるようになったのよ」

「えーっ!助けて貰ったのに!」

「元々が聖女を狙って落とされたシャンデリアに、たまたま聖女の隣にいた公爵令嬢の上に落ちたのよ。誰かが聖女を狙わなければ起きなかった事故だわ。聖女は覚醒して、みんなから祝福を受けるのよ。聖女の代わりに傷ついた公爵令嬢が、聖女を恨みたくなる気持ちもわかるわ」

「確かにそうですね。では、そのイベントが起きないようにしないといけませんね。ところで何のパーティだったのですか?」

 それまで饒舌だったヒラリーが突然黙った。そして、しばらくして「覚えてないわ」と言った。

 でしょうね・・・私は頭の隅でやっぱりと思いながら、小さくため息をついた。

 最近私はヒラリーの記憶を当てにしないことにしていたが、これは大きな収穫だった。しかし、何のパーティかを探らなければ止めることはできない。早くヒラリーに思い出してもらわないと・・・と思っていたら、誰かがドアをノックした。黙っていると、ドアの下に白い封筒が差し込まれた。

 私は封書を取ってヒラリーに渡した。

「あら、この封印は王宮からだわ」

 ヒラリーが慌てて封を開いた。中にはカードが入っていた。

「イルカ!これよ、これだわ!」

 内容を見た途端ヒラリーが叫んだ。

 私はヒラリーの横に行ってカードの内容を見せてもらった。

 それは2人の王子の15歳の誕生パーティの案内状だった。

「ヒラリー様、パーティってこのパーティですか?」

「そうよ、ゲームでは第1王子だけだったけれど、誕生日のパーティが行われたのよ」

「三ヶ月後となっていますが、王子達の誕生日は近いのですか?」

「詳しい日付は知らないけれど、二ヶ月違いと聞いたことがあるわ」

「でも、5年生になって初めてのパーティですから、イベントのパーティとみて間違いないですね」

 パーティは3ヶ月後の前期が終わった直後の週末と書かれていた。

 場所は王宮の第3ホールとなっている。

 理由はアルの警護の為に下調べと言うことで、第3ホールを事前に見せてもらう様手続きを取ることにした。


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