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魔力測定

 疲れた一日だった。

 5限までの授業を全て終えて、教室を出たときアルとヒラリーから「あの女を殺れ!」「私の前の女を消しなさい!」と言われたときは、流石に困った。

 私は単なる女子生徒で、刺客ではない!と叫びたかったが、グッとこらえて黙っていたら、当の公爵令嬢が「殿下~」と近づいてきたので、アルはさっさと姿を消してしまった。

 公爵令嬢はアルとグレッグに逃げられたと察すると、ヒラリーをジロリと睨んで教室に戻っていった。

 ヒラリーはヒラリーで天敵を見る目で公爵令嬢を睨みつけていたけれど、今のところ公爵令嬢の方がヒラリーより上手の様な気がする。

 そんなこんなで、教室を出てから夕食の後までウダウダと愚痴を聞かされる羽目になった。

 とにかく、最初の一日は疲れた日となった。

 しかし、二日、三日と続くとだんだん慣れてきた。アルとヒラリーの愚痴もスルーできる耐性が付いた様な気がする。こういうのをグレッグの境地というのかもしれない。

 慣れとは恐いですね。

 アルが公爵令嬢から逃げている間に、聖女候補はジョイール王子と仲良くなったようだ。それを見て、公爵令嬢はアルからジョイール王子に的を変えたようだ。

 振り向かない相手より、少しでも脈のある相手の方が良いのだろう。でも、ジョイール王子も公爵令嬢とは話したくないような気がする。

 聖女候補、ヒラリーは聖女もどきと呼んでいるので、私もこれからは聖女もどきと言い換える。

 聖女もどきは王子と話していても公爵令嬢が話しかけてくると、公爵令嬢に場を譲るようだ。聖女もどきが席を外すと王子の表情が曇るので、一応公爵令嬢を立てながら話しを合わせている。

 我が儘な令嬢に付き合わされるウザさを知っている私は、思わず聖女もどきに同情してしまう。

 まあ、聖女に認定されたら、公爵令嬢より上になるから今だけの辛抱だけど・・・その辺は羨ましいかも・・・


 先生の予告通り、席替えは一ヶ月に一回行われた。

 王子達も例外ではないと言っていたが、側近と離すのは不味いと思ったのか、側近は一緒に移動していた。

 私やヒラリーはくじ運が悪いようだ。2回目、3回目とアルとグレッグからはだんだん席が離れていった。

 それなのに、聖女もどきと公爵令嬢はいつもどちらかの王子の近くになった。

 4回目のくじを引いた後、ヒラリーは「陰謀だ」とわなわなと拳を振るわせて悔しがった。私もそう思った。これは仕組まれた席替えだ!ヒラリーがグレッグから離れる度に宥める私の身にもなってほしいものだ。

 私はアルとグレッグには剣の授業で会っていたし、同じ班なので話しもしていたので、教室の席は授業が受けられれば何処でも良かったがヒラリーは違った。

 王子達はいろいろ用事があるようで、授業が終わったらさっさと何処かへ行ってしまう。たまにアルが時間を取ってくれるが、それは一ヶ月に一回有るかないかで、ヒラリーとグレッグが二人で話す時間は本当に僅かしかなかった。教室の中だけがグレッグと会える場所なのに、休み時間は王子達の周りを公爵令嬢達が取り囲んでいるので、アルと離れられないグレッグとはなかなか話す機会も作れなかった。

 だから席替えの度に期待して、結果にガッカリする。

 楽しみにしていた学校生活が遠ざかっていくようだった。

 席替えの度にヒラリーを宥めながら2年が過ぎた。

 もうすぐ3年生になる。

 3年生になったら担任が替わるはずなので、変な席替えもなくなるかも知れない。かもしれないと思うのは、どうやら学校側が王城や教会の意向に逆らえないように感じるからだ。

 あまりに席替えの不公平が多いので、アルが密かに調べたところ、主要貴族の誰かが密かに後ろから手を回しているらしい。

 この2年の間にアルとヒラリーはすっかりやさぐれてしまった。

 アルは休み時間になると教室からいなくなり、授業が始まると首の向きが条件反射で公爵令嬢とは反対方向に向いている。

 首が疲れないかと少し心配している。

 2年生が終わる頃には、アルは私を学校の屋根に誘って息抜きをするのが常習化していた。

 不平不満を聞かなくてはならない私の身になって欲しいものだ。

 それに、私にはヒラリーという我が儘な主人が付いているのだ。ヒラリーは、席替えの度に癇癪を起こした。公爵令嬢に文句を言えないので、取り巻きの令嬢や聖女もどきを呼び出して文句を言いそうになるのを必死で押し止めている苦労もある。

 3年生になったら状況が良くなることを願っているが、私の予感だとそうは上手くいかないだろうと思われた。

 2年の間に騎士科にも女子が増えたとエドナが言っていた。

 エドナが3年生になったときに騎士科に女子部が出来たらしい。エドナを中心に新加入した1年の女子が一緒に授業を受けることになった。

 しかし、私はその中に入れて貰えなかった。どうして私だけが外されたのかと抗議したところ、私のレベルは強い男子並だから、女子部に入れて浮いてしまうのは宜しくないと言われてしまった。


 王立学校では、3年生になる前に魔力測定がある。

 2年の生徒全員が広間に集まって、魔力の数値を図る機械の前に立って測定をするらしい。

 今日はその測定日だった。

 王子二人は受けなくて良いらしい。

 しかし、アルは暇だからと測定を見に来ていた。

 ジョイール王子も来ていた。多分聖女もどきの結果が気になるのだろう。

 アルは何故か私の側に立っている。アルの横にはグレッグがいるので、ヒラリーは嬉しそうだ。

 測定は高位貴族達から始まった。

 計測器はキッチンの計量器みたいな形をしていた。メモリは1000迄あり、上の皿が有るところに透明の球体が乗っていた。

 その球体に両手を添えると、魔法の種類によって色が現れるらしい、そして、下に有るのメモリが魔力量を表示すらしい。

 魔力量の平均は300だそうだ。

 ヒラリーの測定結果は、魔法は風属性で魔力は500だった。ヒラリーの魔力が強いのは昔から知っていたけれど、こうして数字で表されるとやっぱり強いんだと認識した。

 聖女もどきは、聖女に推されているだけあって、光属性の魔力が600もあった。

 公爵令嬢は火属性で300。今のところ魔力はヒラリーの方が勝っている。しかし、魔法の授業は3年生からなので、勉強するに従って魔力は上昇するらしいから、今魔力が弱くても卒業する頃にはどうなっているか分らない。

 グレッグは水属性で魔力は500有った。

 ちなみに1年生の時に私と手合わせしたクロードは、火属性で400だった。やはり魔力が強いから剣に魔力を添わせることができたようだ。

 あの後、先生から注意されて魔法を使わなかったけれど、これからは自由に使えるのだろう。

 剣の実力だけなら私の方が上だけど、魔法が使えたら嫌な相手になりそうだ。これからの剣の授業には魔法を防御する事も考えないといけなかった。

 ジョイール王子は聖女もどきの結果を知ると早々と帰って行った。

 私の順番は最後だった。

 終わった順番から帰っていたので、私の周りにはヒラリーと先生、それに何故かアルとグレッグが残っていた。先生が何故いる?と言う顔でアルを見た。

 アルは騎士科の班長だから班の者の測定値を把握するために残っていると伝えると先生は納得した様だった。

 アルはただ単に私の魔力がどのくらい有るのか興味があったのだと思うけれど・・・

 私は火遁の術や水遁の術やこの葉隠れの術で、魔法らしきものが少し使えるが、世間的には魔力がないと思われている。私自身も魔力が有ってもほんの少しだけだと思っている。

 この結果で、3年生からクラスが魔力の多い者と少ない者にクラスが分けられる。

 魔力の量によって、魔法の授業のカリキュラムが違うらしい。

 私としては、どっちでも良いのだけれど、ヒラリーは同じクラスになりたいのか、心配そうに私を見ている。

 私は透明の玉の上に手を乗せた。

 玉の中で色がクルクル回る。これはみんなと同じだ。クルクル回った後に一番強い属性が現れるはず・・・

 ん?止まらない?他の人よりクルクル回る時間が長い。玉の色がクルクル回っているのと同じように下のメモリもクルクル回っている。

 少しして止まったけれど、玉の色がマーブル色になって止まった。

「これは見たことが無い!」と先生は驚いている。

 側で見ていたアルも驚いている。

 全属性の色がマーブル状に合わさっているのだ。

 魔力のメモリは、へ?・・・10!?

 先生は測定器が壊れたかも知れないと言った。

 私が手を玉から外すと玉は透明に戻った。

 先生は念のためヒラリーに手を乗せるように言った。ヒラリーが手を乗せると、風属性の色とメモリも500を差した。先に計測したのと同じ結果が出た。

 壊れていないようだ。

 再度、私が手を乗せる。やはりクルクル回って全属性がマーブルの様に合わさった。

「これは、どうしたことだ!君は全属性が使えるが、魔力は10と言うことか!」

 私は火と水と風の魔法なら少し使えると先生に伝えると、先生はまた驚いた。そして、先生の前で、手のひらくらいの火の玉と水の玉と小さな竜巻を出して見せた。

 これには先生だけではなくその場にいたみんなが驚いた。

 先生は少し悩ましげな顔をして、「君の結果は他の先生と協議してから決める」と言って、私たちを広間から追い出した。

「イルカ、いつの間に魔法が使えるようになったんだ」

 広間から出た途端、アルが興味津々で聞いてきた。

 私はヒラリーの作成した忍法帳の練習をしていて出来るようになったとは言えなかったので、「ヒラリーの風魔法の練習を真似していたら何となくそれらしいものが出来るようになったのよ」と言った。

「見ていただけで出来るものではないよ。きちんと勉強したら魔力も上がるかも知れないね」

 何処か嬉しそうにアルが言った。

 ヒラリーは怒ったような目で私を見ている。たぶん魔法が使えるのを黙っていたのに腹を立てているのだろう。後で忍法帳の練習で出来るようになったと教えるつもりだ。しかし、納得してくれたらいいけど・・・

 あー、ヒラリーと二人になるのが嫌だ!

 ヒラリーは私が逃げないように腕に手を回してきた。

「じゃあ、俺たちはこれで帰るから」

 アルとグレッグは去って行った。

 その後、何故教えてくれなかったのとヒラリーから延々と愚痴られた。


 それから数日後、先生から呼び出され、3年生から魔法クラスに行くように言われた。

 魔力10で魔法クラスに決まったのはどうしてなのかと聞いたら、魔力10でも全属性が使えるのは珍しい。もしかしたら、幼児が魔法を身につける前段階の状態かも知れない。これからどんな変化をするのか、観察したいと言うことだった。

 いわゆる観察対象として魔法クラスに入れたいらしい。

 私はモルモットになってしまったようだ。


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