剣士転生
目を覚ますと見たことない天井だ。自分の手を見る。小さな手だ。どうやら赤ちゃんになったらしい。
周りを見渡すと子供のおもちゃなどが見えた。どうやらここは子供部屋だと分かった。
体を動かそうとするが、思うように動かない。
そんなことをしていると金髪の髪をしたイケメンが僕を抱き上げた。
「俺の息子は可愛いな」
どうやらこのイケメンが父親のようだ。僕の体やほっぺを触ってくる。
男に触られる趣味はないので、イラっとしていると紅い髪をした美人さんが父から僕を奪い抱っこした。
「私の息子ですもの。可愛いに決まってます」
この美人さんがお母様か・・・。少し母に触られうれしい気持ちになっているとまた父が僕を母から奪い抱っこした。
「君がとても綺麗で素敵だから、息子も可愛いんだよ」
父はそういうと母の髪を撫でた。母は顔を横に向けながら、ほのかに赤面した。
「この女たらしが・・・」
ラブラブな両親の行動にイラっとして、ついつい言ってしまった。僕もまさか赤ちゃんが話せると思わなかった。さすがは神様にもらった唯一の能力だ。
両親は言葉を話す僕を見て喜ぶのではなく、すごく嫌そうな顔をした。
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5歳になった。僕の異世界での名は山田最強という。先祖に日本からきた山田さんがいたらしい。山田は日本で生きてきた時と同じ苗字なので、違和感がなくてありがたい。
最強というのは両親が、最強の騎士を目指すように付けたらしい。恥ずかしいので改名したい。
容姿は母の紅い髪を継いでいて、目もキリっとしていて悪くない顔だと思う。
また僕の家は神様が言っていた通り貴族らしい。貴族といっても世襲できる一番下の男爵。王国としては重要な貴族ではないので、王様に生まれてから一度も会ったことがない。
ただ重要ではない男爵だが潰れられると王様のイメージが悪くなるので、安全な王国ではあまり重要でない仕事を与え、潰れない程度に給料を渡している。
もちろん優秀な貴族は重要な仕事に就くが、うちの父は優秀ではなかった。
なのでうちはとても貧乏で、あこがれのメイドさんというものはいない。金持ちの貴族にはいるらしい。羨ましい。
さて今僕は、父に庭に立たされている。
「今日でサイは5歳になる。5歳になった貴族の男子は、剣の修行に入る。王様に使える騎士として、父さんのように立派になってほしい」
父が立派な騎士かどうかは置いておいて、剣の修行を出来るのは嬉しい。
赤ちゃんの時に剣の修行をすると言って、両親を困らせてからは一人で隠れて修行をしていた。
一人でやるのと相手がいるのとでは全然違う。父は5歳から今の年齢まで剣の修行をしていたとなると5歳の僕よりは、はるかに強い事だろう。
僕が木刀を構えていると父は僕の横にやってきた。
「ちょっとそこで、振ってみろ」
父が言うので、呼吸を整え精神を集中し木刀を振った。
何度も降ってきた素振りは、力みもなく綺麗に出来た。
その素振りを見た父は右手を額に当て、少し考える仕草をした。
僕は父の仕草を見て日本の剣道は、異世界では変なのかと不安になった。
「いやー、綺麗な素振りだ。素振りについては教えることがないな。どこで覚えたんだい」
父に言われ焦った。一人で隠れて修行をしていたので、異世界の剣道なんて見たことがないからだ。
「お父様の素振りを見て学びました」
とりあえず父の素振りを見て学んだことにしよう。見たことないけど・・・。
「そうか。俺の剣を見て学んだか。嬉しいな」
父は満面の笑みを浮かべた。
少し罪悪感が出てきたな・・・。
「よーし、じゃあ次は僕に向かって打ってきなさい」
父は木刀を構えた。
5歳の僕じゃ相手にならないだろう。全力でぶつかり今の自分の力を把握して、これから毎日父に稽古に付き合ってもらおう。
「メーーーーン」
僕はそういうと全力で父に向って木刀を振り落とした。
父はその木刀を華麗に避ける・・・事が出来ずにまともに食らった。
「痛ぇーーー!!!」
父は大声で叫ぶとどこかへ走っていった。
取り残された僕は茫然としていた。まさか避けられないとは思わなかった。
「父、ごめん」
もう父には聞こえないが、一応謝った。
さて、また一人で稽古するか・・・。