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六話 それぞれやることを

「屋敷をどうにかするってどうするんだよ、お嬢」

「そうねぇ、色々と知識は蓄えてきたけど、さすがに家を建てるのは知らないわ」

「それなら、今日もまた野宿か?」


 ガレオンが呵々と笑うとその隣でアフルレッドが嘆息をもらす。


「私はいいのですが、レティシアお嬢様がそのようなところでばかり寝ては……」

「私としては影の中で寝るのは慣れているからいいのだけど……ここで終わっているのは気になるわね」


 そうやって、昨日のままの屋敷に着いた。

 日が上がってきていて、そろそろ大工たちが来てもいいはずなのに、私たち以外誰もいない。

 村のこともあるが、自分たちの住処がしっかりしていないようでは示しが付かない。


「あんまりいい予感はしないけど、貴方たち少し調べてもらってもいいかしら?」

「お嬢が直接行けばいいんじゃねぇか?」

「行けないわ。はっきりした目的はあるのだけど、私はこの村を離れることは出来ない」

「制約ですか。お嬢様を縛る、あの忌々しい仮面女とした」


 そう、従属の契約でされる制約の一つ。

 目的無く村から出ることを禁ずる。また出た場合、報告は必須。

 目的は一応はあるのだけど、それでも報告をするのは億劫である。

 それにそれでアユムが動けば、必ず何かの影響がある。

 それぐらい彼女はこの国での影響力がある存在なのだから。


「レティシア様、それで何を探ってきたらいいのですか?」

「目的は明確。何故、この状態で放置されているのか」


 それさえ分かれば、何かしら状況が打破できる。


「多分、来るときに寄った町、ポートリフィア領のリディーリアの人が請け負ってくれていると思うわ。違ったら、そこで情報収集。今日は無理して帰ってこなくても大丈夫よ」


 今から馬車に乗って向かえば、日が上り切る前には着けるはず。

 それから話を付けたりとか必要なことも多いだろうから、無理なことは勧めない。

 従者全員がそれぞれの礼で答える。


「必ず吉報を」

「無理しないでいいわよ」


 そう言うと、四人は馬車まで歩き出した。

 私はその背中を見送って、彼らの姿が見えなくなってから屋敷を見上げる。

 この世界と違う場所に、私は屋敷を持っていたのを思い出す。

 もう帰ることの出来ない私の故郷。

 帰れないことに後悔はない。

 必要なことを、私は彼らとずっとしてきたのだから。

 そして、これからもまた必要なことをやっていくだけ。

 郷愁を断ち切り、村の方を向く。

 これから、彼らは大事な私の所有物になった。

 だから、どうにか富ませないといけないのだが、大事なのは彼らに学がどれだけあるのかということ。

 やはり、知識というのは代えがたい武器だ。

 知識があれば、そこから正しく判断して、処理していきやすくなる。

 知恵は知識がなくてもいいのだが、より有利に働かせるにはやはり知識は大事だ。

 村人の中で、素養がありそうなのはいくらか検討はつけている。

 影から出した机と椅子に座って、森林浴をしながら読みかけの魔術書を読んで時間を潰して、日が上り切るのを待った。

 全て荷物を影の中に落として、片付ける。

 そうして、一人で村まで行けば、村人たちもそれぞれ休んでいるようで、外に出ているのは子供たちだけ。

 私がジッと入り口でその様子を見ていると、子供たちはそれに気が付いたのか、どうしたらいいのか分からない様子でチラチラと視線を送ってくる。

 興味がある。けど、話しかけてはいけない。

 そんな感じで興味がありそうな視線を隠そうとしない。

 取って食べる訳はないから、遠慮しないでいいのにと思う。だけど、大人たちが私が魔族だから、何かあった後ではとか得体のしれない奴にというのは分からない訳ではない。私は子供を産んだことがないので正しいかどうか別にして。

 そうやって観察をしていると、大人たちがそれぞれの家屋から出てくる。

 村の入り口に立っている私に最初はギョッとするが、どう対応したらいいのか分からず中途半端に頭を下げて行ったりと人それぞれの反応をしながら、それぞれ仕事を始めようとするが、私に口を挟んできた女性を見つけた。

 ようやく目的の人を見つけたので距離を詰める。


「な、なんですか!?」

「貴方、私の下で勉強しない?」

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