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五話 朝の挨拶

 ディリレイト大陸。

 この世界の五大大陸では二番目に小さな大陸。

 小さな国々が集まって、統合や分裂を繰り返していたが、ある時状況が一変した。

 大陸東部の国々を吸収して、大陸を支配するように勢力を伸ばしたのは聖リザレイション王国だった。

 それに対抗するように、西部の国々を武力で支配して対抗してきたのがアルドラン帝国。

 長い年月、大きな戦は過去に一度。それからは国境での小競り合いを繰り返しているが、にらみ合いだけが続いている。

 お互いに相手をつぶせるだけの力を蓄えているのだと噂されている。

 そして、私たち一行が向かった村はアルドラン帝国との国境沿い。

 聖リザレイション王国北東に位置するフィリーツ領。

 北には魔物の住み着いていると言われている山脈があり、西には国境となる大きな川と森が広がる。

 どうしてそんなところを今更開拓しようとしているのか。

 端的に言えば戦線が開いた時の最前線にするため。

 私達、レティシア一行がある意味で最大戦力であるため、衝突の際、防衛に向いているという事らしい。

 その間に本国でしっかりと戦力を整えて、立ち向かうらしい。

 間違ってはいない。

 さすがという采配だろう。

 それをアユムから説明されて、さらに村を動かすために近くの町から人を送ったり、私たちにこの国のことを説明したりしていた。

 そうして、私たちが開拓中の村に向かったのはそれから二つの季節跨いだ後だった。


 影の中から出て、朝日を浴びる。

 朝だというのにもう人々が動き出す音が混じっている。

 私が何も言わないでも、ガレオン以外の三人は影から立ち上がってきた。


「ガレオン、起きなさい」


 そう言うと、ガレオンも影から出てくる。

 髪をかきながら、気だるそうにしているがそれが彼の基本スタンスなので気にしない。


「それじゃあ、行きましょうか」


 村の方に歩いていくと、村人たちの生活音に加えて子供の声も聞こえてきた。

 小さな村であるはずだけど物静かなだけじゃなくて、こうして生活音がすることは活気がある証に思える。

 ゆっくり歩いているけど、さして広いわけでもない村の中。

 すぐに人の姿が見えてくる。

 そこに見えるのは、十六人の男女に十人ほどの子供。

 一人が私たちの姿を見つけると、それをきっかけに大人たちが私たちに視線を集める。それを見た子供たちが遊ぶのやめて私たちの方を見つめた。

 せっかくこうして注目を集めているのだから、ちょうどいい。


「ごきげんよう、フィリーツ領の皆さま」


 そうして、スカートの裾を摘まんでお辞儀をする。

 後ろにいる従者たちも私に倣って、それぞれ頭を下げていた。


「聖リザレイション王国国王様よりフィリーツ領を任せられたレティシア・ヴァリアス・アドガルド・フォン・スカーレット。爵位は男爵、以降お見知りおきを」


 ニッコリと微笑んであげるサービス付き。


「後ろにいるのは私の従者たち。村の開拓や様々なことで貴方たちの力になるでしょうから、是非頼ってちょうだい」


 そんな昨日のまとめ役の男に話したことで、きっと大勢がもっと知っていることだろう。


「あとそうね、付け加えるとしたら私たちは全員魔族よ。ただし、全員王宮魔術師アユム・レイエル・ナカハラに従属の契約を結んであるわ。だから、貴方たちを傷つけることはない」

「そ、そんな事信じられるわけないっ!」


 一人の女性がそう声を上げた。

 もっと多くの人が声を荒げると思っていたが、ちょっと意外。


「信じなくてもいいわ。ただ、私たちは契約によって貴方たちをどうこうすることは出来ない、という事を知っておいて欲しい。それにこれからの生活、ずっとその疑心を抱いて生活するのはきっと辛くなるはずよ。だから、それを軽減出来れば、それを思ったのよ」


 女性が声を上げるのを隣の男性が遮る。

 言いたいことがあるならば、吐き出させてしまった方がお互いのためだとは思うんだけど、私たちが魔族だから、怒らせて事が起きたらと思ってしまうんだろう。


「今一度知っておいて欲しいことがあるわ」


 そう言って、一歩踏み出す。


「私は貴方たちのことを愛してるわ。私の領民である貴方たちは私が必ず、何があっても、どんな暴力や脅威からも守ってあげる」


 全員が怪訝な目でこちらを見ているのが分かる。

 だけど、これは本心であり、私の性分であったりする。


「私たちの手でこの村を聖リザレイション王国一豊かな場所にしましょうね」


 それだけ一方的だけど伝えて、一礼して従者たちと共に背を向ける。

 そして、屋敷の方に向かって歩き出す。


「村はまだ彼らに任せた方がいいわね。それよりも私たちは自分たちの屋敷をどうにかしましょうか」


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