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美少女吸血鬼の領地経営  作者: ベニカ
来訪者編
38/153

三十八話 医療行為


 翌日。

 彼女たちを地下室に連れて行った。


「ねぇ、レティ。ちょっと聞いても大丈夫系?」

「どうしたのかしら? ベッドが固かった?」

「いやー……違うくて、これ何でアタシたち縛られちゃってるの?」


 彼女たちはベッドできつく縛り付けてある。

 手足と腿、二の腕に胸元までも縛り上げていた。


「暴れても良い様にじゃない。あなたも目玉を取り出されるときこうされたんじゃない?」

「いや、あんときは抑え付けられてで、ここまでは……って麻酔とかないの?!」

「何かしら、それ」

「マジ?! マジだ! 何で銃とか微妙に進んだものはあるのにそーゆーのはないのー!」


 彼女たちはここに来て、どれだけ過ごしているのか分からないがその指摘は良いところを付いている。

 この世界の発展というよりも、この大陸が発展しているのだけどそれは歪な形をしている。

 主に兵器が大きな発展を遂げ、その次に食べ物が後を追いかけている。

 しかし、そこに人が追い付いていない。

 発展させるだけの能力を持った者が様々な恩恵をもたらしても、まだ私達が受け取れるだけの土壌がない。

 銃にしたって、最初に作られたのは六発の回転式拳銃というものだったらしい。

 それを現代の技術で再現しようとしたが、不可能だった。

 拳銃に込める弾に拳銃の構造。

 特に弾の生成が難しく、一時は危ぶまれたが、魔術を組み込むで何とか形にした。

 魔術で火薬に引火させて、弾頭を押し出すという仕組みらしい、と昔もっと詳しく教えてもらった覚えがあるが、専門家ではないためこれぐらいの認識でしかないが、この魔術を起動させるための式にスペースを取られているため、小銃であれ、装填される弾数はニ発から三発が限度とされている。

 このように無理矢理使える形にした劣化品でしかない。


「お嬢様のお客だから手は出さないが、あまり五月蠅いと黙らせるよ」


 マリアが真顔でマサキの頭に傘型の銃を突き付ける。


「はい、静かにします。ごめんなさい」


 満足したようにマリアが銃を下ろす。

 痛い思いは早めに済ませてしまいましょう。


「アンナ、お願いね」

「はい、レティシア様」


 口を開けるとアンナが舌を持って、ナイフで一閃。

 綺麗な切り口で舌を切り下ろしてくれた。

 ユリナが声は出せないのに息を呑む音が聞こえた。


「え、ちょ、何してるの? 分かんなくて怖いんだけど」

「お嬢様が舌を切り落としただけですよ」

「いや、だけって! え、何してんの?! マジ!」

「静かに、撃たれたいですか?」

「いや、撃たれたくはないけど、けど、いいの、自分のご主人がそんなことして……」


 マリアが首を傾げているが、マサキには残念ながら見えていない。

 それを指摘しようとしたが、舌がまだ生えてきてないから指摘できないんだけど。

 下を向くと、マリアが皿を差し出してくれたので、そのまま血を流させてもらう。


「あれぐらいで死にませんよ。すぐに治りますし」

「えぇー……どういう体してんのー……」


「マリア、手伝って」

「分かった」


 血が少しずつ止まってきた。

 だから、再び口を開けると、二人が私の牙に手をかけた。

 そのまま力を籠めると牙が根元から折れる。

 体の損傷は痛みを伴う。

 実際に痛いと体は発しているはずだが、無視出来てしまう。

 自分の痛みは気にならない。

 不思議なものだ。

 私は長く生きているはずなのに、そういう人間が知っていることを知らないで生きている。

 そして、それを知りたいとも思っているんだ。

 牙以外にも二人が数本歯も抜いて、皿の上に置く。

 牙に歯、それに舌、私の血に浸っている物たちが皿には並ぶ。

 牙の再生にも時間は少しばかり時間がいる。


「なんかすっごい音してたんだけど、何してたの?」

「お嬢様の歯を抜いていました」

「え、え、なんで」

「治療に必要だからでしょ、さっきもそう言ったでしょ?」

「え、いや、言ってない、言ってないって」

「……言ってないかもしれませんが、察することはできるでしょう?」


 マリアとマサキがそんなことを言っている間に、アンナがユリナに口を開かせる機器を取り付け始める。


「大丈夫よ、力を抜いて」


 口が強張って開ききってなかったのだろう。アンナが諭すように言えば、機器が取り付けられて、口が開かれたままになる。


「気分が良いことではないと思うけど、絶対に暴れないで。レティシア様を信じて」


 皿に乗った舌や歯、牙をユリナの口の中に入れていく。


「――! ――――!!」


 暴れ出しさえしなかったが、それでも口の中にある異物、それに不快感に涙目になっている。

 ふぅと息を吐けば、ようやく歯も牙も元通りになった。


「それじゃあ、ユリナから始めるわ」


 呼びかけるは、精霊。

 細く息を吐きかけながら、呼びかける。

 彼らの言葉は失われ、今残るは詩からの懇願。

 気まぐれな精霊たち。

 あなたたちへの貢ぎ物は用意した。

 私に力を貸してほしい。

 息を吐く。

 音を出す。

 小さな区切りをつけて、変化させる。

 応えるは精霊たち。

 光が集う。

 

「――――!!」


 ユリナの足元が発行すると同時に変化が訪れた。

 突然ユリナが暴れ出した。


「抑えて」


 そう短く告げれば、アンナがユリナを取り押さえる。

 少女一人抑えつけるのはわけもない。


「え、大丈夫なの?」

「成功したわよ。それじゃあ、次はマサキの番ね」

「……いたくないよね?」

「保証できないわね。ユリナ位痛いかもしれないわね」

「麻酔とか薬とか、やっぱなし?」

「ええ、なしよ。我慢しなさい。マリア、猿轡」

「はい、お嬢様」


 私がそう言うと、マリアは容赦なくマサキに猿轡をかます。

 そして、私は二つの木の実を取り出した。


「マリア、マサキの頭をしっかりと抑えておきなさい。あ、潰さないように力加減間違えないように」


 マリアが抑えつけて、私がマサキの瞼を開ける。

 空洞になっているそこを見つめて、考える。

 さて、どうやってこの殻を破ればいいのか。

 木の実を瞼の近くで手で弄びながら、考えていると中で動くような感触がした。

 もしかして、と思って瞼にさらに近づけると、激しく動き出した。

 こうやって使うのか。


「マサキ、痛くなるから我慢するのよ」


 マサキの返事を聞かないで瞼の中に木の実を入れた。


「…………ぁ!!!!!!!!!」


 猿轡をしていても分かるぐらいマサキが声を上げた。

 暴れ出しそうだったが、マリアがしっかりと抑えていてくれる。

 木の実はどう変化していくのか観察していると、割れる音がすると同時に殻が外に押し出されてきた。

 鉄よりも固い殻があっさりと、だ。

 よく見てみると、目のような物体が、マサキの瞼の中で動いている。

 そして、大きく中で動いたと思ったら瞳と目が合った。

 やはり、目だった。

 ただの目ではない。

 神造兵装の目だ。

 どんな力を持つのか楽しみで仕方ない。

 

「痛みが治まって、大丈夫そうに見えたら、拘束を解いて上に連れて行って寝かせてあげなさい。七日ぐらいは口も目もあまり使わないように言っておいて。大丈夫か判断付かない場合、呼びなさい、上にいるから」


「はい、レティシア様」

「はい、お嬢様」


 七日。

 その間は私も村のことに集中しよう。

 村のこと、彼女たちのこと。

 やることはまだまだ多い。

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