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二十一話 世間話

 豪華な装飾がなされた馬車に乗ってきたのは私の商売相手になる男だ。

 降りてきた男は、上質な布を使って縫われた服を着ている。商人としては、上澄みにいるのがこの男であり、口だけであれば、かなりのやり手ではある。

 もしかしたら、アユム相手でもやり合えるかもしれない。

 身長もしっかりと高く、ガタイもある。目は細く吊り上がり、細く、それで笑みを浮かべると、どこか肉食の獣のようにも思える。


「久しぶりね、レザード。前に合った時よりもお父様に似てきてるわね」

「皆様に最後のあったのが五年前ですからね。あと五年は私たちのところに何か依頼があるとは思ってなかったのでこちらとしては驚いていますよ」


 レザード・ジーニアス・ロジック。

 私が人間界を旅するようになった頃からお世話になっている商会。

 私たちが魔族だと言う事を知っていながらも、私たち相手に商売をしてくれる商魂逞しい一族だ。

 私たちの情報を売れば、国からそれなりのお金が出るはずである。

 特に私が内に宿している魔石は格別なものであるから。

 けど、それを得ないのはどうしてかそう面白半分で問うたことがある。


「短期的な利益もいいですが、ここで良くしておけばずっと貴方が私たちの商会にお金をもたらしてくれるので」


 そして、その考えは脈々と受け継がれて今に至る。

 私としてもその考え方が面白いのでずっと利用させてもらっているわけだが。


「立派なお屋敷に住まわれているのですね。突然どうしたんですか?」

「今は私、ここで領主をやっているのよ。褒めてもいいのよ?」

「存じておりますよ。少女の見た目で領主の真似事をやっていると貴族たちの中で随分噂になっておりますよ」

「そうなの? ここだと貴族の繋がりとは無縁だからそういう噂を耳にしたことがなかったわ」

「貴方にとって貴族の噂など大したことでもないでしょうからね」

「そうね、聞いて楽しむ程度しかないわね。さぁ、ここで長話も良くないわね。お客様なのだから、中に入って頂戴」


 そう勧めると、レザードが体を張り、礼をして入っていく。

 馬車から二人の少年が降りて、付いていこうとした。

 二人とも身長は私とさほど変わらないぐらいだろうか。

 片方の少年は、黒髪に少し焼けた肌をしている、目は大きくどこかどこか人懐こい顔をしている。

 もう一人は白髪に焼けた肌に少し長く伸びた耳と特徴的な部位を持つ。見た目からしても、この大陸に住んでいる種族ではない。別の大陸から連れてこられた耳長族の子供だろう。

 どうして連れてこられたのかはきっと聞いていい気分になる話でもないから、そこは聞かないでおこう。


「彼らは?」

「私が育ててる子たちです。商会の将来にきっと必要になるはずです」


 先のことを見据えているレザードはまだまだ成長していくのだろう。

 それがこれからどのような方向を向くのか楽しみである。


「引退を考えるのは早いんじゃない?」

「まだ、結婚もしていないのに引退など先の話ですよ」

「あら、まだしていなかったの? 貴方なら引く手数多でしょうに」

「私の理想が高いのでしょう。なかなか決まりませんね」

「それは難儀な話ね。早くあなたの相手が見てみたいのに」

「その時はご報告させてもらいますよ」

「ええ、楽しみにしてるわ」


 話しながら進んでいると、いつの間にか客間に着いてしまっていた。

 アルフレッドが扉を開けて脇に控える。

 先に客間に足を踏み入れた。


「寛いでくれているようで何よりよ。レザードが到着したわ」


 客間に入ると、ソーニャとサリーが緊張した面持ちで背筋を伸ばした。


「レティシア様のご紹介に預かりました、ロジック商会の代表を務めているレザード・ジーニアス・ロジックです。フィリーツ領のお二方、どうぞロジック商会をごひいきに」


 そう言って、礼をするとソーニャとサリーも慌てて頭を下げた。


「彼女たちは?」

「貴方のところの少年二人と一緒で、私が育ててる子たちよ。きっとこの村の将来、必要になる人材よ。レザード座って」


 そうやってレザードに席を勧め、私はその対面のソファに座った。

 アルフレッドが紅茶をすぐに用意してくれて、お互いに唇を濡らす。


「最近、王都の方はどうなのかしら?」

「そうですね、以前に比べて国の方から食料関係の買付が増えておりますね。あとは武器の需要が増えてますね。私の商会も入荷を増やしているところです」

「物騒ね。大きな戦いでもあるのかしら」

「私たちでは存じかねます。お上が何を考えているのか、私たちでは知る術がありませんからね」


 レザードはニコニコとした相貌を崩さない。

 彼らの商会の手は城内にも伸びようとしている。本格的に商売相手として相手取りたいのも知っているがそれを出してこないのはさすがと言える。

 手広く商売をしているロジック商会なのだから、民間と言わず、城内にも伸ばしたいと思うのは当然だ。

 情報は入っていることから、末端まではいいのかもしれないけど、もっと深い場所にはコネクションを持っていないのかもしれない。


「じゃあ、王都の方はまた一段と活気づいているのでしょうね」

「ええ、商人たちがここぞとばかりに売り出していますからね。市場はもう売り手に溢れていますよ」


 活気溢れているのであれば、それはそれでいいだろう。

 暗く陰鬱なところでは商人も寄ってこない。

 それにロジック商会もそんなところだと立ち去ってしまいそうだから。


「して、レティシア様、今日お呼びいただいたご用件は?」

「ええ、売りたいものが出来たのよ。アルフレッド」


 そう呼ぶと、アルフレッドが先日剥ぎ取った飛竜の鱗が入った袋を持ってきた。


「これは……?」

「開けてみて」


 そう言って促すと、レザードが袋を開ける。


「これは……」

「私たちが手に入れたものよ。どうかしら?」


 世間話は終わりだ。

 さぁ、ここからは楽しい楽しい取引の時間だ。

謝辞


いつも読んでいただきありがとうございます。

いいね、評価、ブクマ、誤字報告もありがとうございます

これからもどうか、本作「美少女吸血鬼の領地経営」をよろしくお願いします

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