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十七話 解体作業開始

 ガレオンに氷漬けにしてもらって、力に物を言わせて飛竜を山から下ろしてきた翌日。

 私たちはまた村へ降りてきていた。

 自分の執務室でもやることはあるのだけど、こうして頻繁に村の方に来ていると暇に思われてしまうかもしれないが、それぐらい余裕があるアピールもしておこう。

 今はそれよりも注目を集めているのは、やはり先日氷漬けにした飛竜だろう。


「大丈夫、怯える必要はないわ。もう核……と言っても分からないわね。心臓、のような機関は取り出しているから息を吹き返すことは決してないわ」


 そう言っても信じてもらえないのは分かっている。


「れ、レティシア様が嘘を吐くような人ではないと短い間でしたが、近くにいて分かりますが、本当に大丈夫なのですか……?」


 ソーニャがみんなの前でそんなことを言ってくれると思ってなかったが、微笑みを向けた。


「貴方たちに危害がないと誓うわ。万が一、動き出したらその時は全身全霊で貴方たちを守るわ」

「分かりました。貴方もいいわよね?」

「あ、あぁ」


 私の言葉に答えたのはサリーであり、村のまとめ役をやっていた男だ。一緒にいる時間が多いけど、他の夫婦よりも淡白だと思って関係に至ってはいないと思っていたが、そうでもなかったみたいだ。まだまだ私の人間に対する認識も甘いと思い知らされる。


「それで、レティシア様、今日は一体何を?」

「これの解体をして、様々な部位を売って氷の季節越えの資金にしようと思うのと、飛竜の肉を干して当面の貴方たちの食料としてあげようと思ってるのだけど、私たちだけだと手が足りないから手伝ってほしいのよ」

「しかし、我々も自分のことが……」

「ええ、分かってるわ。だから、無理には頼まない。それに手伝わなかったら、何もなしってわけじゃなくて、手伝ってくれた家庭よりも多少は気持ちとしては少ないかもしれないけど肉にお金かそれに値するものを配るつもりよ」


 そんなうまい話があるのかとかちらほら聞こえるが、美味い話なのは間違いない。

 どっちにしても食べるものとお金が回ってくるのだ、これ以上美味い話はないだろう。


「私たちにとっては美味しい話ではありますが、本当にいいのですか? それでは貴方たちが何も……」

「もちろんいいわよ。それにさっきの話だけど、全額貴方たちに還元することは出来ない。何割かは私たちがもらうわ。税の支払いや、村の設備にお金が必要なのよ。それは分かってもらってもいいかしら?」


 それはもちろんです、と男が答える。

 それぞれの家族で話し合っているみたいだけど、結論が出ているところは一組というところか。


「まだ朝も早い時間。それぞれやることはあるでしょう。都合がつく人は、私たちはここで解体しているので手伝ってくれると嬉しいわ」


 そう言って、パンパンと手を叩いて、これで話は終わりという合図を送る。

 それぞれまだ私たちの方に後ろ髪を引かれるように、それでもやることがあるので動き出し始めた。

 無関心ではないだけ、彼らの関心を得られたと思えば上出来だろう。


「いいのかよ、お嬢」

「ええ、いいのよ。強制してまでやらせるつもりもないし。それよりガレオン、とりあえず顔の方だけ氷解いてくれるかしら?」


 私がそう言うと、徐々に顔の部分だけ氷が解けていく。


「とりあえずは眼球を摘出するわ。その後に周囲の鱗を落として――」

「あの、レティシア様」

 背後から声を掛けられ、振りむく。


「あら、どうしたの、ソーニャ?」

「て、手伝いに来ましたけど……」


 最初に来る人物としては、意外で目を丸くしていたと思う。

 ソーニャよりもサリーの方が先に来るものだと思ってたから。


「これもお嬢様の偉大さのおかげでしょう」

「そういうわけじゃないでしょ」

「そーじゃなかったら、どーすんだよ」

「教え込みますよ。その体に」

「そういうことしちゃダメだとレティシア様が言ったじゃない」


 後ろで従者たちが話しているのを聞いていてまだ、返事をしていないことに気が付いた。

 ソーニャが不安そうな目をこちらに向けてきている。

 いけないわね。

 呆けている場合ではない。


「ええ、ありがとう、ソーニャ。そうね、まずは――」

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