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百五十一話 応酬

 ここからだ。

 私は気合を入れなおした。

 開戦してから届いたのでは遅すぎる。

 隣にいるユリナ様を見れば、少し硬い表情になっている。

 これは良くないということだろう。

 表情をあまり表に出さないユリナ様であるが、ここで動揺していてはいけないのだが、まだレティシア様の下に着いて日が短いから学んでいないのかもしれない。

 だから、私達が補佐をしてあげないといけないのだと認識を改める。

 費用については安く出来るのであれば、安くした方がいい。

 ユリナ様は、レティシア様に許可をもらったと言ったが、全部は取っていないと言っていた。

 だから、安くなるのであればそれに越したことはないのだが、それでご破算になるのなら、致し方なし。レティシア様に怒られようと言っていた。

 第一目標ではないが、達成できたらいい目標としては設定してある。


「短く……ですか、どれほどの納期がご希望で?」

「どれだけ短く出来るでしょうか?」


 先にレザード様に答えを促す。

 こちらから先に言うつもりはない。

 それを言ったら、レザード様に決められてしまう。


「そうですね……提携している工房を全力で稼働させれば、氷の季節の終わりには間に合うか、と」


 まだもう少しいけそうな気がする。

 レザード様の言い方もどこか想定している通りの物のように聞こえる。

 ここで頷いてもいいのだが、ユリナ様はまだ満足していない。

 それに踏み込める。

 だから、持ってきた宝石を一つ机の上に置く。


「これで、稼働できる工房をさらに増やせないでしょうか」


 これだけでも金貨袋二十は下らない。

 前にレザード様に買い取ってもらった、ダイヤモンドという宝石と大きさは一緒の物で、これは赤い色をしたもので、ユリナ様はルビーというものだと言っていた。

 それがどういうものか知らないが、宝石として価値のある物だという話。

 宝石が高騰しているというのもあって、前のダイヤモンド並かそれ以上を狙っても行けるのではないかと思っている。

 ちゃんとした商人に見せられたらいいのだが、私やソーニャがいきなりそんな高価なものを持ってきたら、どうなるか分からないから、見せられない。


「これは……」

「レティシア様が手に入れた宝石です」

「ふむ……レティシア様がですか」


 机に置いた宝石を手に取り、光に当てたりしている。

 本物かどうか気になっているのかもしれない。

 偽物ではないと思うのだけど、商人として気になるのだろうか。


「あの山ででしょうか」


 これはどこで手に入れたか、ということなのだろうか。

 私には分からない。

 目だけ動かして、横を向く。


「ええ、あの山に来る魔物から取れたものです」

「一度調査に行きたいものですね」


 今日一目を輝かせているように見える。

 それほどあの山にお金の気配があるということだろう。

 だけど、あの山は領民でも立ち入りを禁じられている。

 特に氷の季節は、特に言われている。

 魔物が多く現れて、レティシア様たちでないと対処出来ないと言われていて、もし、近くに魔物が現れた時には、至急屋敷に連絡するように言われている。


「私からは止めておいた方がいいと私から強く言わせてもらいます」

「どうしてでしょうか?」

「あの山、いえ、あの山に通じる森にも多くの魔物たちが現れ、それを食すために大型の魔物が山から下りてきます。軍隊でも連れてくるのでしたら大丈夫でしょうが、そうでないのであれば魔物の餌になるか、山の養分の一つになるだけでしょう」


 領民はレティシア様たちの言うことを守っている。

 これは慕っているから言うことを聞いているのもあるが、レティシア様たちが人ならざるものだということを分かっているから、その人たちが警告しているのだから聞いているのもある。

 

「それに山に入るのはレティシアが禁止しております。最もレティシアよりもおっかない自然の精霊様が勝手に山や森を荒らしたら、怒るのでやめておくのが賢明でしょう」

「ふむ……それは残念ですね。宝石の需要が高まっているのですが、どうしても産出量が限られておりますので、フィリーツ領が産出地となればと思いましてね」

「無理でしょうね。レティシアを説得できたとしても、精霊様は絶対に首を縦に振らないでしょうから」


 そのレティシア様を説得するハードルがそもそも高い。

 私達でレティシア様を説得しようとする者もいないのだけど。


「いえ、すみません。話が横に逸れてしましましたね。これで、ですか」


 レザード様が考え込む。

 何を考えているのかは読めないのだが、それでも何を狙っているのか思考を巡らすしかない。

 一番、やらせたいこととしては私たちに宝石をさらに出させることだ。

 必要だと。

 これでは足りないから、もうないのかと。

 ただ、私達にこれ以上払う必要性もない。

 その宝石一個でも十分な価値はある。

 工房の一つと言わず、三つぐらい契約できるのではないだろうか。

 金貨というのは平民にとっては馴染みの少ないものだ。

 銀貨や銅貨で事足りてしまうから、というのもある。

 金貨での取引と言ったら、大体が貴族様が行うもので、私達平民が行うものではない。

 金貨百枚と言ったら、私達にとっては一生暮らせるかもしれない金額だ。

 工房の契約の値段がどれほどだろうと、金貨袋二十袋で一カ所ということはないはず。

 それほど高い契約が必要なところはそれこそ、王族の方々がご用達にしているものを制作しているところとかではないだろうか。

 レザード様の力がいくら凄くても、そこまで力が伸びているとは考えにくい。

 

「良いでしょう。工房についてはこれで足りるでしょう。ただ、増やしたとしてもすぐに生産力が上がるということはないですよ?」

「はい、重々承知しております」


 これまでの仕事だってある。

 すぐに取り掛かることは難しいのは理解出来る。

 それも分かったうえで、答えた。


「そうですね……これならば、氷の季節が終わる前、確実にお渡してできるかと」


 少しだけ前倒しになった。

 しかし、これだけでいいのだろうか。

 ここが限界なのだろうかと、自分の手持ちを頭の中で確認する。

 宝石はもう出してしまった。

 もう一つだけ緑色の宝石を持っているのだが、こちらを切るのは出来たら避けたい。

 これまで出してしまったら、私が相手に切れる手札が無くなる。

 ソーニャも持たせてあるし、他に別の物をユリナ様の許可をもらって持ってきたものがある。

 それが何か私は見ていない。

 見せてもらっていない。

 それが何か気になるのだが、それよりも、期限について考える必要がある。

 先程までは確実性のない日程だったのだが、今は確実だと言われた。

 氷の季節の終わりに確実に間に合うのだとしたらこれで十分なものだと思ってしまう。

 良いのだろうか。

 しかし、良い策が何も思わないのだから仕方ない。

 レザード様の表情も読めないようにニコニコとほほ笑んでいるばかりいる。

 私が黙っているとレザード様が肯定と捉えてきた。


「それでは――――」

「お、お待ちください、レザード様」


 レザードの言葉に重なるようにソーニャが被せてきた。

 レザード様が怪訝そうにソーニャの方を見る。

 ソーニャはうつむいたままだ。


「何でしょう、ソーニャ様」

「こ、これも」


 そう言って机のに置かれたものは銃とソーニャが持ってきた宝石だ。


「こ、これらも見ていただけないでしょうか」

謝辞


いつも読んでいただきありがとうございます。

いいね、評価、ブクマ、誤字報告もありがとうございます

これからもどうか、本作「美少女吸血鬼の領地経営」をよろしくお願いします

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