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十四話 村への脅威

 平和な日常は続いていく。

 一つの季節を巡る間に、私たちの屋敷はようやく完成を迎えた。

 従者と私たちが暮らすだけでは部屋が余ってしまうぐらいとても私好みの立派な屋敷。

 アユムに言って、前の倍はお金出させて良かった。

 一階には食堂や、客間。それだけの予定だったからまだ何室も余っている。

 二階には今のところ私たちそれぞれの寝室。それに私の執務室。

 地下にも部屋を用意してもらったけど、そちらは使用機会がないことを祈ろう。

 執務室の本棚にはこれまで集めた数多くの本を入れていき、机に椅子はどれも王都から取り寄せた一級品。

 屋敷が出来るまでの生活を思い出す。

 外でランチをいただくのはいい。けど、それがしっかりと管理されている庭であればだけど。鬱蒼とした森の中では、優雅さがない。それに寝る時まで外というのは人に見られる訳にもいかない。

 立場上の話だけど。

 旅をしていた関係上、野宿というか影の中に潜んで夜を過ごすのは慣れているのだけど、領主がそんな生活をしていては、村人に示しがつかないわけ。

 だから、豪華で中身のない張りぼてでも構わない。

 今は外見の良さに中身が釣り合ってないわけだけど。

 今はまだ屋敷内に物は少ないけど、もっと色々増やしたい。

 食器に調度品、魔術書に、実験道具もいいかもしれない。

 それにせっかく部屋が余ってるのだから、ここで授業をしてもいいかもしれないとやりたいことがどんどん膨れていく。

 さりとて、今日も村の方に行く。

 アルフレッドとアンナは村人の手伝い、ガレオンとマリアは村の外での作業。

 村の外に一応害獣除けの柵を作ってもらったり、ないとは思うのだけど、一応国境線近い場所なので帝国から攻められた際に盾になるような作りを考えているのだけど、材質の主たるものが木材である。火矢を放たれたら、それだけで村中に火が伝わってしまう危険性もあるので、隣接する方だけ作ってもらうようにしている。

 そして、私は授業だ。

 今日はこの世界の季節について。

 ずっと決まっていなかったのだけど、ある時、この大陸から他の大陸に伝わって、そう分けられるようになった。

 風、水、火、残火、涼風、氷の六つの季節が一巡すると一年。

 それぞれ大体六十日経過で季節は一つ進む。

 そう説明していると、


「――――――――――――――――!!」


 山の方から獣にしては、金属同士を擦りつけるような不快感の強い叫びだ。


「な、何、今の」


 気の強いサリーもさすがに獣ではない声には怯えているようだ。

 ソーニャは気は弱いのに、近くにいた自分の子供や、そうでない子を含めて抱き締めてあげている。

 この村に住んでいる人たちは、優しい善人が多い。

 村全体で一人の家族のように、みんながみんな協力的。

 そうやって、二人を見ていると背後に二人の気配が追加された。


「お嬢、今のは」

「ええ、しっかりと聞こえていたから大丈夫よ」


 特に命令しているわけではないけど、ガレオンもマリアも跪いている。

 私はゆっくりと振り返る。

 森の向こうにある聳えるような山々。


「飛竜の類でしょうね、ここには生息していると聞いたことはなかったけど」

「殺してきましょうか?」


 マリアが言うように私たちの従者なら、さほど苦労することなく殺せるだろう。

 だけど、これからこの村は氷の季節を過ごさないといけないが、貯えがあるだろうか。

 今、畑を作って植えても収穫できるはずっと先。

 私が支援したらいいのだけど、村人全員をずっと養える金はさすがに持ち合わせにない。


「いえ、全員で行きましょうか。飛竜、竜の末席に連なる者たち。竜のような知能も、強大な力はなくとも、その身を守る鱗は並の金属で傷が付かず、宿す魔石は並の魔物の倍は優に超える」


 そう言って、ソーニャとサリーに向き直る。


「二日、三日は村の外、特に山の方には行かないように村のみんなに伝えてくれるかしら?」

「い、いいですけど」


 サリーが答えて、ソーニャはブンブンと音がしそうなほど首を縦に振っていた。


「フィリーツ領領主として厳命するわ。森には入らないように。今日の授業はここまで、みんなに伝えてきてくれる?」

「……分かりました」


 サリーとソーニャは子供たちを連れて、それぞれの家の方に向かって歩いていった。

 それを見届けた後、ガレオンたちの方を向いた。


「それじゃあ、明日から私たちは楽しい楽しい飛竜狩りに向かいましょう」

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