かけはし
地面に点が描かれていく。小さい点。一つ二つだったのが数え切れないほどになった。やがて音を立て出した。降り注ぐ雫が髪を顔を体を濡らしていく。
歩くたびに水が跳ね、靴やズボンを濡らしていく。
「流石にまずいな」
慌ててコンビニに逃げ込んだ。 店員の決まり文句が向かい入れてくれた。
冷房が濡れた体を冷やしていく。いくらなんでも効かしすぎだと思う。長居すると風邪をひきかねない。雨足が弱まったらすぐにでていこう。
店員の声がまた聞こえた。新しい客がきたらしい。なんとなく入口を見た。
「あ、先輩」
「雨宿り?」
そうなんですよ。答えながら彼女は鞄の中から取り出したタオルで髪や服をふいている。
「折りたたみも忘れてきちゃって。先輩は?」
「俺も似たようなものだよ」
言いながら彼女からタオルを奪い、ふけてない後ろ側をはたくようにふいた。
「先輩もっと丁寧にやってくださいよ」
「悪いな」
もう。とか言いながらも彼女は嫌がらなかった。髪がふき終わると、
「っくしゅっ」
かわいらしいくしゃみが聞こえた。彼女は恥ずかしがりながら鼻をおさえていた。
「ビニール傘買ってくるから、一緒に帰るぞ」
タオルを渡して、入口そばのビニール傘を物色しだした。
「え、いや、いいですいいですっ」
「いいから」
自分一人なら買わなかっただろう。予想外の出費だが、気にするほどでもない。
「大丈夫です大丈夫っ」
「遠慮するな。この雨でどうやって……あ」
外をみると雨はほとんどやんでいた。
コンビニをでて空を見上げると、重かった鉛色の雲はちぎれ、日の光が差し込んできた。
タイミングが良いのか悪いのか。
「先輩、あれ」
横にいた彼女が、東の空を指さした。
そこには薄い七色をしたアーチがかかっていた。
「……綺麗」
「そうだな」
久しぶりに見た。そう滅多に目にするものでもない。
「じゃあ帰るか」
「はい」
いつまでも見ていたい気持ちを断ち切って歩き出した。
了