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7. 幸せな夜

夜が明けて、俺たちはまた門の偵察に向かった。


ルミスは今日もいるだろうかーーー


そんなことを考えてるうちに、東水門へ到着した。


「…………見つけた……」


道の端っこで、彼女はうずくまっていた。

駆け足で近づき、彼女の顔を覗く。その顔は、昨日よりも青白く、目に光が点ってなくて、どこかぼうっとしていた。


「……ルミス」


 俺が声をかけると、彼女はゆっくりと顔をこちらに向ける。


「あ……昨日の……えっと……」


「クロム、それが俺の名前」


「クロム……さん……えっと……今日は何しに……?」


「君を助けに来た」


 そう言った瞬間、石の様に固まっていた表情が、驚きで少し砕けた。


「ど、どういう……ことでしょうか……?」


「その目の傷、あの男にやられたんだろ?」


「……正確には……あの人のお父様が……」


「……なあ、そんな奴と一緒にいるのはやめないか? 俺のパーティに来よう、メンバーに話もつけてる。きっと快く迎えてくれるはずだ。お金だって、モンスター狩りで稼げる。きっと今の環境より絶対いいぞ……!」


「……別に……大丈夫です……」


「なんで……!?」


「きっと……足手まといになるし……それに……私は今のままでいいんです……誰にも必要とされてない自分は……道具と同じだから……」


「そんなこと言うな!!!!!」


 つい、大声をあげてしまった、驚いたルミスは、右しかない目を丸くする。


「必要ないだとか……道具だとか……そんな人間はいない!!!! 俺はもう、大事な人を不幸な目に遭わせたくないんだ!!!」


「大事って……なんで……昨日会ったばかりの私に……」


「いつ会ったとか関係ない……俺らはもう、友達だろ……?」


「……と、も、だち……」


 そう呟いた後、彼女は急に泣き出した。


「……うっ……えぐっ……うぅ…………ずっと……ずっと、辛かった……あぐっ……うぅ」


「ルミス……今度は……人としてちゃんと生きよう……」


「うっ……はい……」






日中、俺は監視をしながら、ルミスと色々なことを話した。両親のこと、ナーガ市での出来事、そして、今の俺の目的。

そして、また日が落ちて、宿に戻る。


「紹介する。こっちの魔術師がリナで、隣の重騎士がアデルート」


「よろしくね、ルミス」


「……そんな怖がらなくても大丈夫だぞ?」


ルミスは緊張しているのか、ずっと俺の後ろに隠れている。まぁ……無理もないか……二人は初対面だし、彼女は自分を道具としてしか扱わない人としかまともに関わったことはないのだから。


「そういえばクロム、彼女の部屋はどうするの?」


「え……リナの部屋じゃダメか……?」


「アタシはいいけど、ルミスがそんな状態じゃ……」


「じゃ、じゃあ、新しく部屋を借りるとか……」


「そう思ったけど、今晩はどこもいっぱいだって」


 ということはーーー




「……ルミス、着替え終わったら言ってな……」


「はい……」


 水浴び機の音に少しかき消されつつ、彼女の返事が聞こえる。俺は自分の部屋で、ただじっと窓の外を見ていた。


 水音が止まり、扉の開く音。ぺたぺたと足音が近づいてきて、リナが日中買っておいてくれた衣服を手に取る音が聞こえる。


 自然と自分の鼓動が早くなっているのを感じる。考えてはいけないと思いつつも、どうしても気にせずにはいられない。


「もう……大丈夫ですよ」


そろりと慎重に振り返ると、そこにはーーー

髪を濡らした少女が、火照った顔でこちらに微笑む姿が見えた。


なぜだろう、さっきよりも鼓動が大きくなっている様な気がする。


「あの……最後に……」


 呆けている自分に、彼女が語りかけてくる。


「包帯だけ……巻いてくれませんか」


「ああ……そうだな……」


 ベッドの上で、正座している彼女の背中から、包帯を巻いていく。


「……これで……あってるのかな……?」


「はい………ふふっ……ちょっとぎこちない……」


 ルミスが、笑ったーーー


 そんなに俺の手際が悪かったのだろうか……?


 包帯を巻いていると、彼女の濡れた髪が直に手に触れる。


 そういや、女性の髪の毛なんて触ったことないなーーー


 それに気づいた時、また一気に鼓動が激しくなる。


「……? どうしました……?」


「あ……いや、なんでもない……」


 平常心、平常心……

 そう自分に言い聞かせながら、止まった手を動かしていく。




「ありがとうございます」

 

 なんとか、巻き切ることができた……

 なんだか、異常に疲れてしまった気がする。


「じゃあ、ルミスはベッドで寝て。俺は床で寝るから……」


「そ、そんなダメです……! 私が床で寝ます……! 慣れてるので……」


「いや、なら余計に寝かせられない。ルミスの方が絶対に疲れが溜まっているんだから、上で寝てくれ」


「で、でも……」


「「………」」


「じゃ、じゃあ一緒に寝ましょう……!」


「え……?」


「一緒に寝れば、二人ともベッドで寝れます!」


「い、いやいやいや……! 男女が一緒のベッドに寝るのはまずいって!」


「それが嫌なら、私は絶対に床で寝ますから! クロムさんを床で眠らせる訳にはいきません!」


「…………わかったよ……」




 どうしてこうなってしまうのかーーー

 さっきからずっと動悸が鳴りっぱなしで寝られそうにない……!


 ……ルミスは寝ただろうか……?


 ゆっくりと寝返りを打つ感じで振り返る。


「うっ……ぐすん……うぅ……」


 な、泣いてる!!!???


「ど、どうしたルミス、俺なんかしたか!? あ、それともどこか痛いのか!!??」


「い、いや……なんか……嬉しくて…………こんな風に安心して寝られるの……初めてだから……」


 その言葉を聞いて、俺のやったことは間違いなかったと確信する。


「よかったな……ルミス……」



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「はよ更新しろ!!」


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