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6. 日常

ファーヴニルの三つの門は、日が暮れると閉じるようになっている。夜目の効かない兵士の代わりに、門がモンスターの進行から街を守ってくれているのだ。

 おかげで今、俺たちはこうして宿で休むことが出来ている。


「はい、お待たせ」


 宿の共有スペースで座っていた俺とアデルートの元に、リナが料理を持ってやって来る。

 今朝狩った魔猪の肉で、ステーキを焼いてくれたらしい。


「「いただきます」」


「はい、召し上がれ」


 ちょうどいいサイズに等分された肉を一切れ、ソースとともに口へ運ぶ。


「う、美味い……!!」


「そう? 素材がいいからじゃない?」


「いや、この焼き加減といい…………このソースはどこで……?」


「ああ、普通に買った材料で作っただけだけど」


「す、すげぇ……」


「そんなに褒めてくれる? ありがと」


 滅多に笑わない彼女が、この時だけは満面の笑みを俺に向けてくれた。


「……イチャイチャしてるとこ悪いけど」


「「はぁ!?」」


 急に何言ってるんだアデルートは、そもそも俺とリナは出会ってから二日も経ってない訳で今のは素直に飯が美味しくて褒めてあげたら彼女が喜んでくれたただそれだけのことじゃないか、それをイチャイチャだなんてまるでーーー


「今日の偵察、お前らはなんか収穫あったか……?」


 その言葉を聞いて我に返る。


「全然、アタシは西側の水門をずっと見てたけど、怪しい物どころか、魚一匹見なかった」

 

 リナは溜息をつきながらかぶりを振る。


「俺も同じ感じだ……同じ感じなんだが……」


「なんだ? なんか手がかりがあったのか?」


「……奴隷の……女の子に会った……」


 俺がそう言った瞬間、二人は口をポカンと開けて黙ってしまう。


「それと……ヴァリアントになんの関係が……?」


「いや……関係はないんだけれど…………うちのパーティに引き入れようと思って……」


 それを聞いた瞬間、また二人は沈黙する。


「いや待てよクロム……お前言ったよな……? 俺たちの目的はヴァリアントの殲滅、人助けじゃないだろ……?」


「そう、それに……その子を巻き込んだら、どんな危険な目にあうかわからないよ……」


「わかってる……! わかってるよ……!! ただ……俺が奴らを消し去りたいのは……誰かの大切な人を奪わせたくないからで……彼女には……大切にしたい人も、大切にしてくれる人も元からいないんだ……そんな子を……俺は放っておけない……!!」


「「………」」


「……まっ……そんなに言うならいいんじゃない……?」


「リナ……」


「まぁ……よく考えてみりゃあ奴らを倒すのも人助けみたいなもんだしな……俺の家族も……みんな死んじまったし……お前の言いたいことはわかるよ」


「……アデルート……」


「はぁ〜正直、男ばっかでむさ苦しかったし! 女子が来てくれた方が気がラクだわ〜」


「え……俺たちそんな窮屈感与えてた……?」


「……プッ……冗談に決まってんじゃん……! クロムは色々考えすぎ!」


「そ、そっか……」


 リナも自分の街が無くなるまでは、こうして笑っていたんだろうか。家族を失っても、新しい仲間のおかげで、俺はある程度平穏を保っていられている。


二人が部屋に戻った後も、俺はルミスのことが気がかりで仕方なかった。やっぱり、あの目は夕方出会った男に付けられたのだろうか? だとしたら、彼女は今どうしているんだろう。もしかしたら、物乞いをサボった罰を受けさせられているかもしれない。

 俺が出会ってなければ、そんなことも無かっただろうかーーー 

 だが、一度出会ってしまった以上、俺には彼女を助ける義務がある。


 自然と、拳に力がこもっていた。

 これ以上無駄に考えるのはよそう。確か、各部屋に“水浴び機”があったはずだ。それで、一度頭をスッキリさせよう。


 廊下に出てからも、頭は別のことでいっぱいだった。


 自分の部屋のドアノブに手をかける。しかしーーー


 目に飛び込んできたのは、月明かりに照らされた、艶やかなで真っ白のリナの裸体だった。


 「………失礼しました〜……」


 俺は即座に扉を閉める。

 ……やれやれ、俺としたことが、部屋を間違えてしまうとは。 やはりぼーっと歩くのはいけないな。以後気をつけよう、うんうんーーー


「……クロム……」


 背後から、異常な殺気を感じる。


「ハハッ……リナ……着替えるの早いな〜……」


「ええそりゃもう爆速で……アンタを殺すためにね……!!!」


「グァッ!!! イダダダダダダダダ!!!!!!!」


 後ろから、物凄い力で首を絞められる。


「悪かったってホント!!! ゴメン!!! わざとじゃないんだよ!!!!」


「問答無用!!!!!」


「グアアアアアアアアーーー!!!」






「ルミス、今日は幾ら稼いだ?」


 お義父様の、冷徹な声が玄関で響く。


「は……はい……これです……」


 私は小銭が数枚入ったお椀を差し出す。それを見た瞬間、お義父様の表情は一変してーー

 

 バシッ!!!!


 私の顔を躊躇なく殴った。


「全然稼いでねえじゃねぇか!! お前……今日一日何してた……!!」


「父さん、こいつ昼間、知らない男と一緒に仕事サボってたよ?」


 シルバ様がそう言った後、今度は髪の毛を引っ張られる。


「お前……! 誰のおかげで暮らしてると思ってるんだ……!?」


「お義父様の……おかげです……」


「そうだ!!! わかってるんなら、俺たちのために身を粉にして働け!!!!」


「はい……」


「しかもお前、掃除もサボってたよな……」


「い、いえ……掃除は……ちゃんとやりました……」


「じゃあこれはなんだ!!!!」


 お義父様の指差した先にはーーー何か、血痕のようなものが廊下の床についていた。


「“アレ”じゃないか父さん? ルミス、これでも一応女の子だからさ」


「……自分の経血くらい、自分で処理しろ!!!!」


 今度は思いっきり蹴られて、体を吹っ飛ばされる。


「父さん、その辺にしときなよ……後はオレに任して」


 その言葉を聞いて、お義父様は自分の部屋に戻っていく。


「さっ、じゃあ行こうかルミス。オレは父さんみたいに乱暴しないからさ」


 シルバ様の手が私の肩に触れる。その瞬間、体がビクッと震えてしまった。まるで、この先の展開に怯えるように。


 私はそのまま、シルバ様の寝室に連れていかれる。


「ああぁ……大丈夫……怖がる事なんて無いさ……」


 私はベッドに寝かされ、気色悪い笑みを浮かべた彼に覆い被される。

 

大丈夫……いつもされてる事……目を瞑って、少しの間我慢するだけ……


 ボロ切れのような衣服を脱がされ、彼の手が直に肌に触れる。身の毛もよだつ様な不快感に、声をあげそうになるが、唇を噛んでぎゅっと耐える。その時―――


「……!! キッ……」


「あれ、驚かせちゃったかなぁ〜……」


 目を守っていた包帯を外され、目玉をなくした左目を舐められた。


「はぁ〜……君は最高だよルミス……最初こそ抵抗してたけど、今ではオレの言うことをちゃ〜んと聞いてくれる……じゃ、もう入れるからね……」


 そう、これが私の日常。いつも誰かの道具として生きる、私のーーー



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「はよ更新しろ!!」


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